朝の散歩とマインクラフト
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皆様が面白い、この先気になる、ワクワクするなど、ありきたりな小説の中で、誰も書けないような作品を作れたら良いなと思って頑張っていきます!今後とも【Fantasy of Dreams 〜夢と幻想の世界〜】をよろしくお願いします。
この世界に来て初めの朝を迎える。
起きて早々にこの世界が、現実を目の当たりにする事になった。
この村は水が貴重なので、顔を洗う事すらできず、昨日の身体を拭いた布を使い顔を拭くだけ……今日の目標が決まった瞬間だった。
「ネアさん、おはよう。村長さんは?」
「まいさん、おはようございます。父なら日課の散歩に行きました。昨日はゆっくり寝れましたか?」
「うん。部屋の用意してくれて、ありがとうね。お陰で気がついたら、朝だったよ」
嘘だ。
薄い布を引いてるだけだから、直接床で寝てるのと変わらなかった。
床の硬さに何回も目が覚めてたから、寝不足で身体中がバキバキ。
布団が恋しい、今まで恵まれた環境にいたことを実感する。
ゲーム時代のステータスは全然意味をなさないし、毎夜これが続くとなると、わたし死んじゃうかもしれない。
魔物じゃなく、床に殺されるのは勘弁していただきたい。
「それなら良かった。もうすぐ父も帰って来ると思いますので、ご飯にしましょう」
テーブルの上には、昨日と変わらない料理があった。
お腹をさすってみると、お腹は減ってる。だが、食欲が湧かない。
「お嬢さん起きてたんじゃな。おはよう」
「あっ、村長さん、おかえり」
それから3人でご飯を食べて一息つく。
「村長さん、昔に井戸があったって聞いたんだけど、村のどこにあるの?」
「わしも見たことがないのじゃが、昔に危ないからと取り壊されての。今は、井戸らしき跡なら丁度、村の中央にあるのじゃ。して、お嬢さんは何故そんなことを知りたいのじゃ?」
「まだ皆が集まるまで少し時間がありそうだから、村を観光するついでに行ってみようかと思ってね」
本当に井戸があるのなら、どうにかできるかもしれない。
それに試したいこともあるし。
「特に何も無い村じゃが、ネアに案内してもらうとええ」
「1人は寂しいから、ありがとう。じゃあ、ネアさんよろしくね」
今日やろうとしてる事は、遅かれ早かれ分かることだから一緒に行く事にする。
「はい。案内は任してくださいね」
2人は特に用意することもないので、そのまま行くことになった。
「じゃあ、村長さん行ってきます。みんなが来る頃には戻るからね」
2人で外に出る。
まずは、井戸のあった所を見てみたい。
「ネアさん、とりあえず先に井戸があった場所に連れていって欲しい。それからは、村の全体を周れると嬉しいかな」
今日の目標は、村のマッピングと井戸だ!
「わかりました。そんなに遠くないので、行きましょうか」
ネアさんの後をついて行く。
朝が早いせいか、すれ違う人は少ないが、色々な種族がいる。
昨日も歩いてて思ったが、村の不自然な状況をネアさんに聞いてみた。
「ネアさん、エルフとドワーフって基本中が悪いんじゃないの?」
ゲームや小説ではエルフとドワーフは、仲が悪い事が多い。ありきたりなテンプレだね。
わたしのやっていた【Fantasy of Dreams】も、それを忠実に再現していた。
だが、昨日もそうだが今も、目の前にはエルフとドワーフが仲良く話しをしている。
「そうですね。わたしは村を出た事がないので詳しくは知らないのですが、基本的に仲が悪いと聞いていますよ。でも、この村の彼等はそんな事ありませんね。みんな仲良くされてます」
「そうなんだ。昨日も思ったけど、こんなに他種族が集まって種族の違いにトラブルはないの?」
「特に大きなトラブルはありませんね。この村の皆様は、昔に先祖返りで他の街では、生きにくくなった者や奴隷商の密猟者などから逃げて、この村にたどり着いた者達の子孫なのです。ですので、多くはこの村で生まれ育った者なので、みなさん仲良くされてます」
この村は森と魔物で囲まれた天然の要塞になってて、徒歩や乗り物があっても、攻める事が難しい。
ただ、それはこの村を目指して逃げて来る者達にも言えることで、逃げるのも命懸け、この村に来るのも命懸けってことだ。
「まいさん着きましたよ。ここが井戸があった場所です」
着いた場所は、幅5メートル、5段の降りる階段が四方にあり、その階段を降りると大きな井戸があったであろう跡が真ん中にあった。
「結構大きかったんだね」
「聞いた話しでは、この村に井戸はこの場所にしかなく、村全体で使っても枯れることのない大きな井戸だったと。それと、毎日ここは憩い場所だったみたいです」
こんな大きな井戸があったのなら、地下に水脈も流れるはずだ。
【Fantasy of Dreams】と言うゲームは、ある所は無駄に凝っていて、井戸を建てるには、地下に水脈がある所にしか建てれない。
わたしはキョロキョロと周りを確認する。
よし!周りには誰もいない。
「ネアさんごめんね。少し確認したいことがあるから、驚かないで見てて。それから、人が来たら教えて欲しい」
「はい。それは大丈夫ですが、まいさんは何をされるのですか?」
「まあ、それは見てからのお楽しみってことで。ドローパッド」
わたしの手に、この世界に不釣り合いの大きさ8インチ、タップ式タブレットが現れた。
「まいさん!何も無い所から現れましたが、なんですかそれ!」
「これは、色々な物を作る為の魔法?みたいなものかな」
わたしはマイクラパッドと呼んでいる。
この世界で使えるのかどうか半信半疑だったか、使えて良かった。
この場所に来たかった理由は……これで井戸が建てれるから!井戸があると水もある!するとお風呂に入れるようになる!
急に現れた井戸に、村の人々は驚くだろう……しかし!わたしはお風呂に入りたいし、朝は水で顔を洗いたい!後のことは後で考えれば良いって、誰か偉い人が言ってたような言ってなかったような。
「早速これで井戸を……なっ!なんで!」
わたしはタブレットの画面をタップすると、作れる物の項目が全て赤く表示されていた。
「……そんな……ひどいよ」
更にタップして進めていくと画面には、物作りレベル1、素材ボックスの欄は個数0個、解放項目0になっている。
わたしは、膝から崩れ落ちた。
「まいさん顔が真っ青ですよ!いったいどうしたんですか」
わたしの長年の苦労と………わたしのお風呂。
「ネアさん……目眩と絶望がいっきに襲ってきたので」
わたしは立ち上がるとネアさんに、村を周りたいと告げると、それをネアさんが了承し、2人でこの場所を離れた。
「まいさん本当に大丈夫ですか?まだ顔色が優れないように見えますが」
「ありがとう。大丈夫じゃないけど、大丈夫だよ」
「1度家に戻った方が……」
「本当に大丈夫だから気にしないで。今日中にできる限り村を周りたいからさ」
井戸はまだ建てれないが、村の外には木が沢山あるので、それを使って、村の周辺に木の塀を建てる事はできる。
その為に、村のマッピングが重要なのだ。
いつ魔物が襲ってくるか分からないので、早めにやれる事はやっといた方がいいと思う。
「ネアさん、あれは?」
道の先に人が集まってる場所があった。
「なんでしょうか。私達も行ってみましょう」
その場に行ってみると、昨日見た4人組のチンピラが獣人族の犬人親子に絡んでいた。
集まってる人に聞いたところ、犬人の子供がチンピラにぶつかったらしくて、それで絡んでいるみたいだ。
「アニキは、お前のガキにぶつかられて怪我までしてるんだぜ。どう責任取ってくれるんだ!」
「うちの息子が、本当に申し訳ございません!」
「おいおい。謝って済むなら、警備隊はいらねぇーよなー!怪我して仕事もできないんだ。それなりの誠意を見せてくれねぇと、納得できねぇぜ」
少し違うけど、そんなセリフ本当に言う奴いるんだね。
「ネアさん。ネアさんは村長の娘なんだから、止めたほうがいいんじゃない?」
「その……私は暴力は苦手でして……まいさん、申し訳ないのですが、急いで警備隊呼んできますので、少し待っててください」
そう言うとネアさんは走って行った。
待ってる間、暇なので野次馬しておこう。
「このガキは俺達で面倒見といてやるから、お前は金を用意して持ってこい」
チンピラが子供の手を掴んで連れていこうとする。
「いやだ!行きたくないよ父ちゃん!助けて!誰かー!助けてー!」
今の状況で、あまり目立つのは良くないと思い野次馬だけのつもりだったけど、子供が泣いて助けを呼んでるのに、それを無視はできない。
ネアさんが警備隊を呼んでくるまで時間を稼ごうかな。
「謝ってるんだから、許してあげなよ」
わたしは前に出てチンピラに向けて言った。
「なんだお前は!関係ない奴は、すっこんでろ!」
「関係ないけど、子供が泣いて助けを求めてるんだから、無視できないでしょ」
「うるせぇー!お前この村じゃ見ない顔だな。よそ者が村の事に、しゃしゃり出てくるな!それともお前が変わりに金を払ってくれるってか!」
「困ってる人を助けるのに、よそ者もなにも関係ないでしょ。それに、チンピラなんかに渡すお金は持ってないよ」
チンピラじゃなくても渡せるお金がないんだけどね。
わたしビンボーなんです。
「黙って聞いてたら舐めやがって!小娘だからって容赦しねぇぞ!」
チンピラAが子供の手を離して、わたしに向かって殴りかかってくる。
殴ってきた腕をサイドステップで避け、腕を掴み相手の勢いを利用して投げ飛ばす。
「グハッ!」
それを見てチンピラBとチンピラCが驚いた表情をするが、目を合わすと腰に付けてあったナイフを手に持って向かってくる。
チンピラのリーダーは、立って腕を組み立ったままだ。
「ちょっと痛いかもしれないけど、あなた達が向かってくるんだから、我慢してよね」
チンピラBとチンピラCが左右から向かってきた。
チンピラBがナイフを横に振ってきたので、それをバックステップで避ける。
バックステップした時にチンピラCが後ろからナイフを突いてきたので、後ろ宙返りをしてそれを躱す。躱した後チンピラCの背後に着地すると、チンピラCの背中に掌底を放つ。
チンピラCが倒れるのを見てチンピラBが、なりふり構わずナイフを持った腕を大きく振りかざして向かってくる。
「ナイフなんだから、振りかざしちゃダメじゃない。隙だらけだよ?」
チンピラBの懐に入り隙だらけの身体に掌底を放って終わらせた。
「まだやる?」
リーダーに言う。丁度そのタイミングでネアさんがラッシュさんを連れて戻ってきた。
ネアさんはこの状況を見て目を丸くしている。逆にラッシュさんは頭を抱えていた。
わたしは悪くないので、見なかったことにしよう。
「ネアさんおかえり!意外と早かったね」
「まいちゃん!そんなことより、この状況はなんですか!まいちゃん1人でやったん……だよね?」
ネアさんの口調がちょっとおかしい。
「ネアさんネアさん。あのー、ラッシュさんも来た事だし、この場所から離れよう?わたしが目立つのはダメだと思うからさ」
なんか人の視線が痛くなってきた。
あと、ここに居ると面倒くさそうなので、早くこの場から逃げたい。
「こんな事しておいて、どの口が言ってるんですか!」
「まあまあ、これはこれ、それはそれ。後はラッシュさんが何とかしてくれるよ。それに見てた人も沢山いるし、みんなが説明してくれるって。ね。だから、早くここから逃げ……離れよう」
「ちょ、ちょっとまいちゃん!今、逃げようって言おうとしたよね!」
ネアさんの手を握り、家の方角に走り始めた。
後ろからラッシュさんの呼び止める声が聞こえて来たけど、多分気のせいだ。
それから、ネアさんには少し怒られたけど、何事もなく村長さんの家が見えた。
ただ、わたし達が出てきた時とは状況が変わっている。村長さんが家の外にいて、大勢の人達に囲まれていた。
何事かと思い、急いでネアさんと共に集団の中に飛び込んでいった。
まい「わたし……お腹減った…………」