村長達との話し合い
「警備隊隊長ラッシュです。2人をここまで連れてきました。入ります」
中に入ると、真ん中に老人が座っていて、隣には綺麗な女の人、あと3人のおじさん達が座っていた。
「ご苦労様じゃ。隊長自ら連れて来てくれたのじゃな。感謝するのじゃ」
おじさん達の真ん中に座っている老人が村長さんみたいだね。
「いえ!これも仕事の範囲内ですので。自分の役目も終わりましたので仕事に戻ります」
「今後の動きにも関係するかもしれぬし、仕事に差し障りがなければラッシュ君も話しを聞いていくがええ」
「仕事の方は部下に任せとけば大丈夫かと。他の皆さんが良ければ同席いたします」
「村長が許可するのなら、我々は問題ない」
でっぷりと太ったガマガエル似のおじさんが答える。
「院長先生……」
ミミの目線の先には綺麗な女の人が座っている場所。
この人が院長先生らしい。ガマガエルじゃなくて良かった。
「おい小娘!なぜ村に戻ってきた!」
「ログス君落ち着くのじゃ。あの場所から1人で戻って来るのは難しいじゃろう。戻って来たと思うたら見知らぬ、お嬢さんと一緒なのじゃから、なにか理由があるのじゃろう」
「しかし村長!」
ログスと言うガマガエルが急に怒鳴り散らかしてきた。
「ラッシュ君、今朝の報告書には無事に聖地まで送り届けられたと書いてあったが、間違いではないんだね」
青白い顔をした体調の悪そうなおじさんが発言する。
「はい。ダルガ氏と部下達で、聖地まで送り届けたと報告を受けております」
「ふむ。川辺から村までは魔物が少ないので運が良ければ戻ってこれるだろうね。でも聖地から村までの距離を魔物が徘徊している森の中、子供1人で戻ってくるのは運だけでは説明できないよね。だが戻ってこれた理由が隣に座ってる君って訳だ」
「そんな事はどうでもいい!村長!今すぐにでも出発さすべきだ!」
「ログス君、さすがに今から聖地に行くと日が暮れるからの。暗くなっては送る者も送られる者も双方ともが危険じゃ。聖地に行くなら明日の朝になってからが良いじゃろう」
このまま話しが終わってしまいそうなので、横から口を挟む。
「村長さんに聞いて欲しい話があるんですけど、少しいいですか?」
「黙れ!小娘が!大人の話に口出しをするな!それに、お前も1ヶ月前に来た奴らの仲間だろ!人柱を連れて戻って、お前達はなにを企んでるんだ!」
ガマガエルがグワグワうるさい。
「なにも企んでないし、そもそも仲間じゃないよ。わたしは森で迷子になって歩いてたらミミの所に偶然出たの」
「嘘をつくな!小娘1人で森を抜けれる訳がないだろうが!」
ガマガエルも隊長さんと同じ反応だ。
「まあまあ、ログスさん器が小さいですよ。話ぐらい聞いてあげましょうよ」
病的なおじさんが、なぜか援護してくれる。
「よいじゃろう。それでお嬢さんの聞きたいこととはなにかの?」
「とりあえず、初めまして、冒険者の苺です。皆さんに集まっていただきありがとうございます」
「皆が集まってたのは、丁度会合をしてた所じゃからの。気にしなくても大丈夫じゃ。しかし、お嬢さんはその歳で冒険者か、凄いのー。聞いて知ってると思うが、わしは村長のグレッグじゃ」
その後、村長さんがみんなの名前を教えてくれる。
院長先生は、モレルさん。
ガマガエルは、ログスさん。
驚いたのは病的なおじさん、隊長さんの上司で警備隊責任者らしい。警備隊大丈夫なのかな……まあ関係ないからいいけど。名前はパリッシュさん。
最後の1人は、今までずっと目を瞑って話を聞いていた身体が大きいおじさんは冒険者だった。
この村に来てから村人達の警護が主な仕事で、昔は有名だったらしい。名前がダルガさん。
今日は集まっていたのは、魔物の襲撃に備えて話し合いが行なわれていたみたいだ。
「それでお嬢さん、聞いて欲しい話とはなんじゃ??」
「信じてもらえないとは思いますが、その話されていた魔物の群れを、わたしが討伐します。なのでミミの生け贄の話は無かったことにしてもらいたい」
「ふ、ふざけるな!小娘のお前になにができるって言うんだ!そもそも、」
ガマガエルが赤い顔をして叫ぶ。
まあ、予想していた結果だから気にしない。
「お嬢さん、さすがにそれは無理な相談じゃのー。お嬢さんも冒険者なら知ってると思うが、1年に1回襲ってくる魔物共は、その辺にいる魔物も群れとは比べようが無いほど多いし強いのじゃ。それにな、この村にはダルガ、そして数人の冒険者がいておるが、それでも対処できぬ。お嬢さんが優しいのは理解した。しかし、これも村の為じゃ、先人様達が残してきた風習に習い、わしらも村を存続していかないとだめなのじゃ」
「そもそも、その風習がおかしいのではないのですか?ダルガさんも冒険者でしたよね?わたしは、あまり街などには行かないので詳しい事は、分かりませんが他の村や街などにはこの様な風習があるのですか?」
このゲームを長くプレイしてきたが、生け贄が必要なイベントなんて聞いた事がない。
「ある……が、ない所もある。ただ、ないと言っても必要がないと言う意味だ。俺は村に来て30年以上の月日が流れている。他の場所が今どうなっているかは、分からない。だが、30年前の状況なら、その街お抱えの冒険者、滞在している野良冒険者、国に要請が必要だが傭兵もいるからな」
「では、国にお願いして傭兵を呼んでもらえばいいじゃないですか!」
「それは無理だ」
「なんで……」
「わしが説明しようかの。お嬢さんはこの村の事は知らないみたいじゃな」
村長さんが教えてくれた終わりの村。
この村を中心に周りが森や崖に囲まれていて、村から離れるほど魔物が強くなっていく。
この村には、入ってくるのも難しいが入ったら最後この村から出ることは、かなり絶望的でその名の通り終わりの村。
だから無理だったのね。国に傭兵を頼んだとしても、この村に派遣される事はない。
「理解出来たかの?お嬢さんが1人で森を抜けてきたと皆が信じれない訳じゃよ」
「1人で森を抜けれたのは、わたしの運が良かっただけだよ。村の周りがどうなってるかはわかったし、村に助けが来ないのもわかったよ。あと重要な事を1つ教えて欲しいんだけど。襲ってくる魔物の強さは?」
この世界にはモンスターの強さを表す等級がある。
弱い順に、水級、金級、地級、火級、木級、土級、天王級、海王級、冥王級。
これは、冒険者のランクにも同様に使われている。
「例年襲ってくるのは、火級までの魔物だ。だが、数が多いので危険度の等級で言えば木級まである」
火級なら大型(小さい順に、キロートル級、メガートル級、ギガートル級、テラートル級)は、まず現れないと思っていい。
稀に現れたとしてもキロートル級だろうね。
それぐらいなら、私一人で討伐できる。
「数だけの魔物なら、わたしでなんとかなるかな。ダンデさん達は、わたしが撃ち漏らした数体の魔物を討伐してくれれば、なんとかなるよ」
「なにを勝手に話しを進めている!小娘を送り戻せば問題はない!何も知らんお前は終わるまで大人しくしていろ!」
「ミミを守ると約束したんだから、何があってもミミの事はわたしは絶対に守るよ!」
ミミを連れて村を出ると言いたくなるが、それをミミは望んでいないので言えない。
「そんな事はわしらには関係ない!警備隊長!こいつが何も出来ないように全てが終わるまで牢に突っ込んどけ!」
わたしとガマガエルが睨み合っていると。
「ログスさんもまいさんで合ってるかな?2人とも落ち着いて」
「パリッシュは黙っとれ!」
「ログスさんそう言わずに。わたしは、まいさんの言葉を信じますよ」
パリッシュさんがわたしを援護してくれる。
なぜかわからないが、味方は多い方がいい。
「パリッシュ気でも狂ったか!こんな小娘になにができるって言うんだ!」
「できるできないかは見てみればいいじゃないですか。出発は明日でしょ?なら時間もまだありますし」
「なにを見たとしても、わしの考えは変わることはない!」
ガマガエルが顔を真っ赤にして、茹でガエルになってる。
「わしも村の事を考えると賛成はしかねるのー。パリッシュ君、見てみるとは一体なにを見るのじゃ?」
「村長、ここには名の馳せた冒険者ダルガさんがいるではないですか。1つ余興ではありますが、まいさんとダルガさんが手合わせして、まいさんが言ったように、本当に魔物の群れを討伐できる実力をもっているのか見てはどうですか?」
それでミミを助けれるなら、願ったり叶ったりだよ。
頭を使って説得するより、戦う方がわたし的には簡単だ。
「時間の無駄だ!見るまでもない!」
「まあまあ、ログスさん。余興ですよ余興。わたしの勝手な提案なのですが、お2人はどうですか?」
「わたしは、それで信じてくれるなら全然大丈夫だよ」
「俺は、そんな小さな嬢ちゃんと戦うのは遠慮したいところだが、嬢ちゃんがヤル気なら仕方ないか」
小さくないし!日本人としては平均だし!
「まいお姉ちゃん……」
ミミが不安な表情で言う。
「大丈夫だよミミ。わたしが強いのは知ってるでしょ?」
「でも……」
「言ったでしょ。ミミの事はわたしが守るって」
「うん!信じてる。まいお姉ちゃんありがとう」
対人戦もかなりの数経験してきた。ダルガさんがどれほど強いかわたからないが、わたしはミミの為にやる事をやるだけだ。
「2人が良いのなら、わしから言うことはないの。丁度家の裏に空き地があるので、そこでどうじゃ?」
「決まったなら早速行きましょう。暗くなってしまう前に。ほらログスさんも行きますよ」
「チッ、余興と言うなら見てはやるが、それで考えが変わると思うなよ」
「さて、わしらも行くとするとかの。そうじゃパリッシュ君、お主なぜお嬢さんを信じたんじゃ?」
「村長それはですね……」
なにか気になる話しをしているが、ダルガさんが先に行ったので、わたしもミミと一緒に背中追って空き地に向かった。
まい「戦いって心躍るよね」