村までの道のり
「ミミ少しは落ち着いた?」
神社に戻ると興奮したミミが出迎えてくれる。
ウルフ退治より、ミミを落ち着かせる方が大変だった。
「はぁ、はぁ、ごめんなさい。落ち着きました」
「それで、話しを戻すね。確かに見てみないと、わたしにもわかんないけど、多分村の事はなんとかなると思うよ」
「まいお姉ちゃんが強いのは、わかりました。けど…村の大人達が信じてくれるかどうかが……」
わたしだって、簡単に信じてもらえるとは思っていない。
17歳の女が1人で村を襲うモンスターを『倒すから任して』と言われても、わたしなら信じない。
「まぁ、それは行って話してみないとわかんないし、ミミを1人でこの場所に残すのは、わたし的に論外だよ」
最悪、ミミと一緒に村を出ればいいしね。
「嬉しいです。……ありがとうございます」
「いいのいいの。じゃあ、早速村に連れてってよ」
「はい!」
村に行くには、1度水汲み場の川を経由して村に行くみたい。
わたしのペットで飛んで行ってもいいけど、村の人が驚くといけないので、歩いて行くことになった。
「綺麗だね」
少し歩くと目の前に川が広がっている。
「はい。暑い時は水汲みの間に、孤児院の皆で水遊びしたしりすんですよ」
「気持ちよさそうだね。今度孤児院のみんなと遊びにこうね」
子供達とBBQとかもいいね。
「ところで、村まではあとどれぐらい?」
「ここまで来たので、あと少しです」
「了解。じゃあ、パパっと行っちゃおう」
ミミが言うには、この辺りはモンスターもあまり出ないらしい。
ただ、たまにウルフやオークが襲ってくるみたい。
ミミのお父さんもお母さんも、悲しい事に水汲みをしてる時にモンスターに襲われてこの世を去ったみたいだ。
水汲みに命をかけるって……終わりの村だっけ?わたしには聞いた事のない村だ。
「ねーミミ、村には井戸とかないの?」
「あるにはあったみたいなのですが、最初の魔物の襲撃で、埋まってしまったみたいです」
「そんな前からなの!治したりはしないの?」
「村に直せる人がいないので……」
近くの街とから直せる人を呼べばいいのに。
まあ、詳しいことは村長に会って聞けばいいか。
「まいお姉ちゃん!あれがわたしの村です」
ミミが指さす方を見ると、村の周りをわたしと同じくらいの塀に囲まれた、小さくはないが、大きくもない村があった。
「やっと着いたね。とりあえず、村長さんの所に行こうか。ミミ案内してくれる?」
一応、最悪の時の事もミミに言っておかないといけないか。
「ミミ聞いて、もし村長さんがわたしの話しを聞いてくれなくて、またミミを生け贄にするって決まった場合は、わたしがミミを連れて村を出ようと思うの、ダメかな?」
「……1つ聞いていいですか?なんで、まいお姉ちゃんは、そこまでミミに優しくしてくれるんですか?」
「うーん、色々知っちゃったし、ミミと出会ったから……かな」
別に正義の味方の真似をするつもりもないけど、目の前の女の子が、意味の無い事で死んじゃうかもしれないのに、それを無視して通り過ぎる事は、わたしにはできない。
「でも、まいお姉ちゃんはミミと、さっき会ったばかりで村とも関係ないじゃないですか!」
「そうだなぁ………わたしが思うのはね、多分ミミと会うのは運命だったんだよ。わたしが迷子になったのも、そのお陰でミミに会ったのも、それで村の問題を解決できるか分からないけど、それも全部ね」
「運命ですか………」
わたしがログアウトした城じゃなくて、この森に来たのが、ただの偶然なのか運命なのかは、わからない。
もしかしたら、これはゲームのイベントなのかもしれないし、ミミはNPCの1人なのかもしれない。
でも、このままにしていい訳がない。わたしは、この世界で生きていこうと決めたんだ。目の前に救える命があるなら、わたしはやれる事をやるだけ。
「そうだよ。わたしにミミを見捨てる事はできないし、したくない!だから、わたしを信じてくれると嬉しいな」
「ミミは……信じるもなにも、まいお姉ちゃんが来てくれなかったら、ウルフに食べられてたと思います。だから、まいお姉ちゃんは、ミミの命の恩人です。でも………ミミのせいで村の人達が死んじゃうのは嫌なんです」
「うん。ミミの気持ちはわかったよ。ミミも守るし村も守る。村の人達には、どうにかして分かってもらえるように努力するよ」
ミミは凄いね。
わたしが逆の立場なら、ミミみたいな事は言えなかったと思う。逃げ出してただろう。
わたしは、ゲームのなかにもう1つの自分の世界作って、現実から目を背け、そこに逃げていたのだから。
「わがまま言って、ごめんなさい」
「気にしないで。わたしは自分勝手に、ミミを助けたいだけだから。あと、もう私たち友達でしょ?友達に敬語はいらないよ」
「はい!あっ……うん!まいお姉ちゃん、ありがとう」
「よし!じゃあ、村長さんの所に行こう」
まい「まだまだ物語は始まったばっかりだよ」