〜第1章〜絶望からのプロローグ
作品に興味をもっていただいて、ありがとうございます。
ただこの先読み進める事で、誤字、脱字が多く存在し不快な思いをするかもしれませんが、作者と主人公共々成長していきますので、暖かい目で見守っていただけると幸いです。
「死にたい……」
奈落の底に落ちて這い上がるために掴んだのが、綿菓子だった時ぐらい絶望だ。
7年やってきたVRMMO「Fantasy of Dreams(略してドリファン」が本日付けで終わってしまう。
人生に絶望した時に出会ったゲームであり、わたしの全てだった。
それなりに人気があったと思うのだが、昨日突然サービス終了告知が届いた。
時計に目をやると、もうすぐ夜の10時になるところだ。
突然の終了にギルドのメンバーも大騒ぎだった。急だったので全員とはいかないが、集まれるメンバーは集まろうと連絡を取り合ったのだ。
もうすぐ集合の時間になる。前もって集合場所でログアウトしているのでインすればすぐに着く。
「そろそろインしようかな……」
わたしは、頭にVRヘッド装置を付けるとベットに横になって、最後になるだろう言葉を口にした。
「ドリームファンタジーダイブスタート!」
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目を開けると巨大な、わたし達の城が……
「ないじゃん!ここどこ?」
前もってギルド城でログアウトしたはずなのに、立っている場所は、どこを見ても木が生い茂っている森の中だった。
「バグ?」
まず、この場所に見覚えがない。
ログアウトしてる場所が知らない所って意味わからない。
「こんなとこで突っ立てても仕方ないし、とりあえず城に移転すればいいか」
あれ?
システムフィルターを開けて見ると、移転マークがあった場所が空白になっていた。
「なぜ?Why?」
落ち着けわたし。思った通りバグだっただけだ。
もしかしたら、なにか運営から連絡がきてるかもしれないしログアウトしよう。
ログアウトのボタンはーー
「えっ……嘘でしょ!?」
移転ボタンと同じくログアウトのマークも空白になってる。
運営に連絡するマークは同じく空白。
よし!とりあえず深呼吸して落ち着こう。まずは、なにができて、できないのか確認しないと。
「アイテムボックスはーーあるね。ボックスの中身も記憶通りなら無くなった物もなさそう」
チュ~
チュパッ
ふぅー、やっぱ落ち着くには、いちごミルクだね!
アイテムボックスの中のアイテムはいつも通りに使えるね。
あと、マップ画面は真っ黒になってて、どこにいるかわかんない。装備は前のままだし、特に変わった所はない感じでーーおっ!フレンド登録あったじゃーん!これで連絡を取ればーーポチッと
ポーン♪《フレンド登録人数ゼロです》
頭にこだまする悲しいアナウンス。
…………泣いてないよ?ほんとだよ。ちょっと目から汗が出ただけだよ。
よし!そろそろ現実を見よう。
さっき気になっていたが、少し確認するのが怖かった。
確かアイテムボックスの中にーーあったあった。
ボックスから鏡を取り出すと、勇気を振り絞って自分自身を確認してみる。
「やっぱり……」
わたしは自分の顔も女であることも嫌いだった。だからゲームの中で使うアバターは、男を使っていたので、見えてる範囲で骨格が全然違う。
目線がゲームの自分と現実の自分とは全然違う為、早い段階で違和感は感じていたが、考えないようにしていた。
わたしが、膝と両手を地面につけて落ち込んでいると。
ポーン♪《いちごミルク様宛にメールが届きました。再生します》
頭の中にさっき聞いた機械音とアナウンスが響く。
《こめんねー!突然の事で驚いたー?驚いたよねー?ねー?ねー?
とりあえずその驚きは心の奥の片隅に置いといてねー。それで、なにが起こってるか分からないキミに、すこーーしだけ説明するよー。
最初に、これまで【Fantasy of Dreams】をプレイしてもらってありがとねー!それで【Fantasy of Dreams】が終わっちゃうんだけど、悲しいよね~。泣いちゃうよねー?ね?ね?
それでね、このまま終わらすのもなんだと思ったからさ~、ドリームファンタジー終了とともに、NEW【Fantasy of Dreams】をここに開始しま~す!パチパチパチパチ♪♪
NEW【Fantasy of Dreams】はゲームという概念を切り離して、仮想空間ではないリアル、そう!現実にしてみました~!色々とワタシが厳選しちゃいまして~、キミもNEW【Fantasy of Dreams】のプレイヤーに決まったので~す。
ワタシの独断と偏見なので、異議申し立ては受け付けませ~ん。
最後に、前作プレイヤー特典として、前回のステータスやアイテム、装備はそのまま引き継いでま~す。ワタシ優しいでしょ~!
ただ、バージョンアップして変わった所が色々あるので、そこは自分で確認して物語を作っていってね~。
ては、引き続きNEW【Fantasy of Dreams】を楽しんでね~。バイバ~~~イ》
「……ウザッッ!」
訳が分からない。
もう説明が説明になっていない。
ちなみに、いちごミルクとは、わたしがゲームで使っているプレイヤーの名前。
現実での名前が【苺】だから、ちょっといじって【いちごミルク】に設定したが、最初の頃は少し後悔した。
まあ、現実でもいちごちゃんって呼ばれてたから慣れたけどね。
とりあえず、あのウザいメールで分かった事は、ここはゲームの中であり、現実でもあるらしい。
現実と言われても、実感がない。
そもそも、現実世界に絶望してから、毎日ゲームに潜っていたので、どっちの世界も現実であり、2つの世界が私の中での現実になっていた。
それが1つになっただけの話しで、帰れないなら帰れないで、この世界がわたしの現実になるだけ。
あっちの世界に友達も大事なものもない。
ただ、1つだけ悲しいことは、苦楽を共にして、こんなわたしでも仲良くしてくれたギルドのメンバーに別れの挨拶も出来なかったことかな。
とりあえず、目指す場所もやる事もないので、意味は無いかもしれないが、仲間たちと一緒に作った城に行ってみよう。
ただ、このゲームには転移系の魔法もアイテムもない。
この場所がわからないから、城まで何キロあるか、どこに行けばいいのか、近くに村や街があるのかすらわからない。
「うーん、とりあえず、このまま進んでみよう。運が良ければ村か街にたどり着くでしょ」
歩きながら時折マップを確認すると、自分が歩いた道が表示されていた。
ゲームの中と同じで1度通った所は記録されていた。
迷う事はなさそうなので、いちごミルクを飲みながら道無き道を進んでみる。
そろそろ森を燃やし尽くしてやろうかと持ったところで、開けた場所にでた。
「なんでこんな森の中に神社が……」
森を抜けると広い場所に出た。そして目を引いたのが中央にポツンと建ってある神社だ。
神社は、崩れそうなボロボロで、大人3人が入ると座る場所もないぐらいの小さいのに、太陽の光のせいなのか神々しく見えた。
「誰か中にいる?」
神社に近ずいてみると、人らしき物体が横たわってる。
「ホラー系は苦手なんだけどなぁ」
勇気を出して中を覗き込むと、ボロボロの服を着た少女が倒れている。
「生きてる……よね?」
少女に近ずいて確認すると、眠ってるだけみたいだ。
少し安心。
こんな森の中の神社で女の子が1人……事件の匂いがするね!
「キミ大丈夫?」
女の子の肩を揺らすと、目が徐々に開いていく。
「良かった。目が覚めたみたいだね。身体はなんともない?」
「は……はい……あのー、お姉ちゃんは天使様ですか?」
いきなり天使って!どうやらこの子は良い子みたいだ。
「期待外れでごめんね。天使ではないかな」
少女が複雑な顔をする。
もしかして、実は、わたしは死んでしまってて、この場所は天国ってオチなの!
一応、頭の上を見ても黄色い輪っかは存在していない。良かった。天国ではないらしい。
「そう……ですか……ミミまだ生きてるんだ……」
「こんな森の中じゃ生きた心地しなかったよね。お父さんやお母さんとは、はぐれちゃったの?」
「……お父さんもお母さんもいなくて、ここにはミミ1人です」
事件じゃなくて、ただの迷子だった。
「そっか。あなたの名前はミミって言うのね。わたしは、苺、よろしくね」
「まい…お姉ちゃん。はい。よろしくお願いします。まいお姉ちゃんは、どこから来たのですか?」
「わたし?わたしは、うーん、迷子みたいなものかな。ミミ、この近くに村や街はあるかな?」
「この森で迷子……?」
「どうしたの?」
「あっ、村ですよね。少し離れてますけどあります」
「ミミは、ここからその村までの道はわかる?」
「はい。わかりますが……ミミはこの場所から離れる事ができないので、村までの道を教えることぐらいしか………」
「どうして?誰か迎えに来てくるの?」
さすがに女の子を1人、森の中に残して行く訳にはいかない。
「多分……誰も来ないと思います。ミミは………この場所で大地の神アーノラス様への……」
大地の神アーノラス?
長年このゲームをプレイしてきたけど、初めて聞く名前だ……多分。
自信がないのは、人の名前を覚えるのは苦手だし、現実でもゲームでも歴史系は苦手だ。
「うーん。よくわからないから、説明してくれる?理由も分からないのに、ミミをこんな所に置いて行くこともできないしさ」
「……わかりました」
それから時間をかけて、ミミが色々話してくれた。
村の名前は【終わりの村】で、聞いた感じは大きくもなく小さくもない村のイメージだ。
それと、ミミの親は、この場所にいない訳じゃなく、魔物に襲われて死んでしまったらしく、ミミは村の孤児院で同じ境遇の子供達と暮らしているみたいだ。
ミミがこの場所から離れられない理由。
大地の神への生け贄。
こんな小さな女の子を許せない!
なんでも、100年以上前からの村の風習で、5年に1度、神に人柱を捧げないと村が滅びると言い伝えがあるらしい。
この世界では、1年に1度、村や街を魔物の大群が押し寄せてくる。
ミミの村も、初めて大群に襲われた時に甚大な被害が出た。
住民達が苦悩していた時、村に訪れた旅人の教えで、人柱を捧げた。
すると、次の年の魔物の脅威が減った事に住民達は喜び、生きる為にと悪習が始まった。
「でも、なんでミミが人柱なのよ?」
「それはミミの魔力が多いかららしいです」
100年以上無駄な事をしてたみたいだね。だってこれは、ゲームの1年に1度の確定イベントだ。
このイベントは家を1軒建てるぐらいでは発生しない。だが、村や街などに大きく発展さすと発生し、魔物の群れが襲ってくる。
プレイヤー達は、その魔物の群れから自分が建てた建物を守らないといけない。
難易度もあり、その村や街の発展の状況で、モンスターの強さ、数、大型モンスターの有り無しも変わってくる。
ミミの村は最初の時に壊滅していたため、次の年は魔物の脅威が減ったのだろうと思う。
ワオーーン
「ん?」
「ウルフ!まいお姉ちゃん早くここから逃げて!」
逃げろと言われても、女の子1人置いて行けるはずがない。
「多分ミミの魔力を感じ取って、この場所に向かって来るはずです。今ならまだ間に合いますから逃げて!」
「うーん、ウルフぐらいなら大丈夫かな」
ウルフの10匹や数100匹ぐらいなら、私1人でなんとかなる。
「逃げなくて大丈夫だけど、もし逃げる時はミミも一緒だよ」
「さっきも話したようにミミは……」
「大丈夫だから安心して、お姉ちゃんは強いからね」
「でも……」
不安な表情のミミを背にして入口に向かうと、同じタイミングでウルフの姿が現れる。
「たった5匹か。ミミはこの建物から出ちゃダメだよ」
ミミがなにか言おうとするが、ウインクして黙らして、腰にぶらさがっているミニチュアの弓を手に取る。
「リリーストクソウエポンフェニックス」
そう呟くと、ミニチュアの弓が光り輝いき、光が収まるとわたしの手に2メートルを超える弓が姿を現した。
なるほど、この辺もゲームと一緒だね。違ってたら困るところだったけど、同じみたいだしなんとなりそう。
ウルフに目をやると、こっちの様子を見ているのか、一定の距離から近ずかずに涎を垂らしながら唸っいる。
ゲームと同じで大丈夫なら……
魔力を右手に意識を集中させ、いつもの使い慣れた弓矢を想像する。
何も無かった右手に弓の矢が現れた。
「できた」
ウルフには悪いが少し実験に付き合ってもらおうか。
「空に輝に響き渡る蒼き雷鳴よ、神々に逆らう者を駆逐するものなり、神々の怒りは我のものなり、ブロンテン!」
詠唱を終えると弓の矢が青白く輝きだした。
それが合図となり、様子を見ていたウルフがわたしに向かって駆けてきた。
「この数ならタメは2秒ぐらいかな」
わたしは弓を構えて弦を力いっぱいに引き、狙いをつけながら2秒間魔力を弓にタメて、1匹のウルフ目掛けて矢を放つ。
放たれた矢は、青白い光を纏い空気を切り裂きウルフの元に。ウルフもそれに反応するが矢の方が早く、ウルフの頭に矢が吸い込まれた。ウルフの身体が一瞬ビクンと痙攣し、その場に倒れ込む。
わたしはそれに合わせて、もう一度詠唱をする。
「轟け!ケラヴノス!」
すると、倒れたウルフの身体が青白く光り輝くと電撃がウルフの身体を包み込む。発生した電撃は蛇のように地を這い他のウルフに襲いかかる。
電撃を受けた他のウルフ達は、身体をスパークさせ痺れてその場に立ち止まった瞬間、わたしが放った普通の矢が、1匹のウルフの頭に矢が吸い込まれ絶命した。
「残り3匹だね」
わたしは魔力で矢を生成し、普通の矢を残りの動かくなったウルフに向かって次々と矢を射る。
この距離なら、外すことはない。
そして、最後のウルフの頭に矢を当ててたところで、倒した順番にウルフが光に包まれる。
「ディスアーム」
弓をミニチュアサイズに戻すと、腰の留め具に吊るした。
モンスターを倒すとどうなるのか気になったけど、この辺もゲームと同じで、死んだウルフの場所に素材が落ちてある。
素材に手を触れると、素材が消えてアイテムボックスの中に入るが分かった。
「この世界は本当にわたしの知ってるゲームそのものなんだね」
何故か分からないけど、わたしはこの世界に連れてこられた。
今までは自分の中で2つの現実があり、どっち付かずで生きてきた。
帰れるかどうかはわからないし、ゲームの時死ねば、強制ログアウトされ1時間ログインできなくなり、デスペナルティが発生した。
ただ、今自らログアウトも出来ずに、もし死んでしまえばどうなるか分からないし、怖くて試すこともできない。
ゲームでは、よく知った世界だけど、今では状況がまるで違う。
でも、悩んでいてもどうしようもない。帰れないのだから、わたしはこの世界で生きていくしかない。
不幸中の幸いは、小説などでよくある、知らない異世界に転生されてなくて良かったと思う。
「この愛した世界で精一杯生きてこう!」
まず初めに、ミミの問題を片付けないとね。
神社の入口で顔を出してるミミに手を振りながら、わたしはこの現実を受け入れたのだった。
まい「これからも頑張るから、宜しくね」