森のはるか奥で
どうもどうも、連載小説を書く気になれず1話完結に逃げました。すいません
今回は不思議な恋の物語
少年と少女の恋物語です
では、どうぞ
〜夢見の森〜
少年「わあ〜、こんなきれーな森があったんだ!ん?ここから奥に行けそう、行ってみよう」
奥に進めば進むほど濃くなる霧
次第に少年は怖くなり、足を止めてしまった
少年「うぅ…パパァ…ママァ…助けてよぉ」
そんな少年の前に突如として現れる白い小屋
少年「うん?さっきまでこんな小屋あったかな?人がいるかもしれない、行ってみよう」
コンコン コンコン
少年「誰か居ませんか?」
??「あら、ここに人が来るのはいつぶりかしら」
ガチャ
??「どうかしたの?坊や」
少年「わぁ…」
目の前に現れたのは純白の少女
今までに見てきたどの女性よりも可愛らしく美しく綺麗だった
少女「? 坊や、何か用があるんじゃなかったの?」
少年「あっ、そうだった」
少年「あの、僕、道に迷っちゃったんだけど、村への帰り方、教えてくれないかな?」
少女「村ね…ここをまっすぐ行って、3つめの十字路を左に行けば着くわよ」
少年「そうなんだ!ありがとう!」
少年「これ、お礼だよ!さっき拾ったんだけど、とっても綺麗な石!」
少女「あらあら、くれるの?ありがとうね」
少年「またねー!」
少女「ええ、またね」
少女 (またね…か)
〜村〜
少年「ねえねえ聞いて聞いて!パパ!ママ!」
父親「ん〜?どうした息子よ、そんな嬉しそうにして」
母親「ふふ、そうね、何かいい事でもあった?」
少年「うん!あのね、村の裏にある森の奥にね、すっごく綺麗な女の子が居たんだよ!」
父親「森?そんなの村の近くにあったか?」
母親「いえ、周りにあるのは森とは言えない林だけです。そんな深くはありません」
父親「ふむ…」
父親「息子よ、お前は夢を見てたんだ」
少年「夢?」
父親「そうだ、夢だ。だから今見てきたやつは全部本当じゃない。分かってくれるか?」
少年「んー、でも、僕本当に見たよ?」
父親「いいや、夢だ。次からその森があったとしても絶対に入ってはいけないぞ」
少年「……」
少年は沈黙を持って答えた
自分があの時出会った少女に一目惚れした事が、少年の中で確信となっていた
〜数年後〜
少年は青年になった
あの日以降、霧の濃い、深い森は見つからない
青年「やっぱり、夢だったのかな」
(・・・いで)
(おいで)
青年「!?」
青年は驚きを隠せなかった
周りを見渡しても自分以外に聞こえてる素振りは無い
頭に直接響く声
(貴方が信じるなら、入口は開かれる)
あの時の少女とあまりにも似ている声
それは青年にとって、あの時の少女と確信させるには充分だった
青年(信じる、信じるよ)
青年(だからあの人に、また会わせて)
青年は無意識にそう祈った
するとあの日見た時と全く変わらない
奥が深そうな、奥に行けば濃いであろう霧が舞う
そんないつか見た森が目の前に出現した
青年は考えるよりも先に体が動いていた
自分の初恋の人に出会えるかもしれないのだ
黙ってる訳にはいかないのだろう
青年(この森の奥には、あの日見た少女が…!)
青年は走った
今同世代の村の子供達とかけっこをしても簡単に勝てるだろう
そのくらい足が早く回っていた
青年「大分奥まで来たぞ、そろそろじゃないか?」
霧が濃くなってきた
そうなれば、あとは次第に
青年「あっ!あれは!」
そう、少女が居るであろう小屋だ
小屋がいつの間にかあったのだ
青年「だれかー!居ませんかーーー!」
青年は叫んだ
扉まで行くのも時間の無駄だというように
少女「ふふ、そんなに叫ばずとも、聞こえていますよ」
青年「ッ!!」
青年「はは、本当に居たじゃないか、父さんの嘘…つ……き…」
そこには数年前と容姿が少しも変わらない少女が居た
そして青年は呼吸も忘れ走って居たことで、意識を失った
〜数時間後〜
青年「ん…」
少女「あら、目が覚めた?」
知らない天井だ
だが、ここは彼女の小屋だと確信があった
青年「ああ、おはよう、そして久しぶり」
少女「ええ、そうね、まさかここに2回も来る人が居るなんて」
青年「え?それってどういう事?」
少女「気づいていなかったの?ここは信じる者しか入れない場所なのよ」
少女「ここに来る前に声が聞こえなかった?」
青年「ああ、そういえば聞こえてた」
青年「確かに僕は声が聞こえてから祈った」
青年「でも数年前の僕は祈ってなんかいなかったぞ?」
少女「子供は純粋だからね、たまに迷い込む子が居るのよ」
青年「そっか、でもまた会えて良かったよ」
少女「良かった?気持ち悪いではなく?」
青年「気持ち悪いって?」
少女「私は何年経っても姿が変わらないからね、それを気味悪がる人もいるのよ」
青年「ふーん」
青年「でも僕は綺麗だと思うな」
少女「変わってるのね」
少女はそっぽを向いた
だが、少女はそう言いながらも頬を赤らめて、耳がピクピク動いていた
青年はそれを見逃さなかった
〜数時間後〜
青年「さて、そろそろ僕は帰らなくちゃ」
少女「どうやって帰るつもり?」
青年「どうって…どうしよう」
少女「相変わらず、変わらないわね」
少女「でも、ここは2度入ったら帰れなくなるの」
青年「帰れなくなるって…本当に?」
少女「本当よ。出れるようになるには、貴方のように入口を開く人が居なきゃね」
青年「ふーん、そうなんだ」
少女「軽いわね…緊張感の欠片もないじゃない」
少女はクスッと笑った
青年「でもそれってさ、裏を返せば君と一緒に暮らせるって事だろ?」
少女「な、何言ってるの!?一緒に暮らすなんて!そんな…!そんな…」
青年「分かりやすいねー」
少女「貴方が変な事言うからでしょ!?そ、それに、異性と暮らすなんて何年ぶりかしら…」
少女「もー…一緒に暮らすからには、最低限の事はやってもらいますからね?」
青年「はーい!」
それから少女と青年の同棲が始まった
来る日も来る日も笑いあり喧嘩ありの幸せな日常
〜数年後〜
たちまち、青年と少女は結婚する
少女「私と結婚しても、子供は出来ないわよ?いいの?」
青年「いいさ、君を真に愛せるなら」
少女「もう、調子いいんだから」
そして新しく始まった生活を謳歌し、2人で幸せに暮らしていた
〜数十年後〜
青年は老人となった
少女は初めて会った頃と変わらぬ可愛らしく美しく綺麗なまま
老人「気づけば、こんなに一緒に居たんだね」
少女「そうね…」
少女「私にとっては一瞬だけれど」ボソッ
老人「ん?何か言ったかな?」
少女「いいえ、何も言ってないわ」
少女「それより、見てごらんなさいな」
少女「月が、綺麗ね」
老人「まるで、君のようにね」
老人はそう言い、微笑みながら息を引き取った
少女は泣き崩れた
自分が成長出来ないのが憎かった
何回目だろう、この思いは
何人目だろう、この人は
少女は彼を忘れないようにと、数十年前に貰ったとても綺麗で埃をかぶった石を磨いて、自分の部屋に飾ったのだった
そして、時は御伽噺のように、ゆっくりと時間をかけ、流れていく
〜数百年後〜
青年「すみません、そこのお嬢さん。迷ってしまったのだけれど、道を教えてくれないかな?」
また始まる
輪廻が、自分には縁のない輪廻が
また新しい物語が
今、また回り出す
読んでくださりありがとうございます
恋とは不思議なものですね
かくいう私はした事は無いのですけれど
今回の話はとても考察のしがいがあるかと思われます
青年が森に入ったあとの村の人たちや家族の様子
森とは一体何だったのか
そして、少女は何者だったのか
ご自分なりの考察を感想にお書きください
返信は出来ませんが、全て読ませていただきます
最後に、繰り返す事になりますが、ご拝読いただきありがとうございました