第3話
ミイナは、カバンに薬のレシピ本と材料を保管する瓶を入れ、家の外へ飛び出した。
無策で飛び出してしまったことは、問題ではなかった。
穏やかな日差しが照りつける中、ミイナの心は焦っている。
村の物知りなおじいさんの元へ、ミイナは走った。
村の生き字引と呼ばれるジルは、元冒険家。
知識は勿論、戦闘経験も豊富な、頭の回転の速い頼れる人だった。
「おじいさん、こんにちは」
「おや、ミイナちゃん」
「ねえ、ここに載ってるのって、どこでとれるの?」
「む、どれどれ……ふーむ、これはこの村付近だけでは完成できない薬のようじゃ」
「どうしても薬が欲しいのだけど……」
「誰に使うんじゃ、お母さんは今日はおらんのか?」
弟のテトが病気で、と答えようとしたミイナの頭に、母の一言が蘇る。
あの病気のことを言ってはいけない。
「お母さんがね、風邪みたいだから、その、元気になってほしくて内緒で……」
「そうか、ならばこの薬ではなく、近くの森の薬草を摘んできたら良い。この、ポポタラという薬草じゃな、真っ赤な色でわかりやすいじゃろう」
「それで、病気は治るの?」
「あぁ、大概のは1発じゃよ。探してみるといい」
「ありがとう、おじいさん!」
ミイナは森へ駆けて行った。
おじいさんの言うことなら間違いない、という安心感が少女の足取りを軽くした。
「変じゃな、簡単な病気なら魔法で治してしまえるじゃろうに」