第2話
医学書を読んでいくミイナ。
ふとその手が止まる。
「モンスターから取れる万能薬......!」
弟が何の病気かは分からないミイナだったが、万能薬という言葉が彼女の心を惹きつけた。
その時、トントンとドアがノックされる。
このノックの音は父のターカだ。
「ミイナ、入るぞ」
「お父さん、どうしたの?」
「テトの病気、父さんの知り合いのお医者に頼んでみるから、王国にこれから行ってくる。薬のこととかは俺はさっぱりだから、お母さんにも行ってもらうことにした」
「そうなんだ、じゃあお留守番?」
「ごめんな、1日もかからないうちには戻ってくる、ご飯はお母さんが作ってあるからそれを食べてくれ。少しの間だけだけど、辛抱してくれ」
「分かった、そんな子供じゃないんだから、大丈夫だよ」
「そっかそっか、もうミイナもお姉さんか。じゃあ頼んだよ」
母のフェリィもドアの隙間から顔を覗かせた。
「ごめんなさいね、ミイナ。家のドアには簡単な魔法をかけておいたから、外からは簡単に入れないはずだから、大丈夫よ」
「ありがとう。お母さん、お父さん、早く行ってきて!テトが苦しそうだから」
ミイナはそう言って父と母を見送った。
父は良い馬車を持っていたので、王国まででもあっという間に着くだろう。
ミイナは、それよりも万能薬のことで頭がいっぱいだった。
「テトの病気が治ってたら、お父さんとお母さんびっくりするだろうなあ」
万能薬製作のレシピに目を通す。
大人しい魔物や、凶暴といわれる魔物の名前が多く並んでいる。
村の周りでも生息している魔物も多かったが、ミイナは戦闘経験も無い。
「私には無理なのかな……お父さんみたいに強かったらなあ……」
「うぅ、う……っ!!」
「テト!?だ、大丈夫!?」
テトが急に苦しそうに唸りだす。
肌に浮かびあがった紫の模様は、さっきより少し大きくなっているように見えた。
「……なんとかしなきゃ」
ミイナは覚悟を決めた。
大切な家族であり、小さい頃からの遊び相手でもあったテト。
目の前でいつ消えてしまうかも分からないその命に、ミイナはじっとしていられなかった。