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8、戻ってる!

8、


お父さんに相談できないまま、とうとう面談の日がやって来てしまった。


この前の事があってから、イリスとは何だか少し気まずい。今更イリスに頼む事もできないし……ダメダメ!イリスじゃ絶対ボロが出る!


ここは親が急に来られなくなった事にしよう!それが一番無難な気がする。


放課後に中庭のベンチで面談の時間まで時間を1人で潰していると、部活に向かう江頭に会った。江頭は一度私を通り過ぎると、戻って来て私に手紙を差し出した。


「あのさ、これ、お姉さんに渡してくれよ」

「何?……え?これ、もしかして……」

「いや、俺からじゃない!決して俺からではないから!」


江頭はあからさまに動揺していた。怪しい。普通に怪しい。この手紙は江頭からじゃない?そんな事が信じられると思う?


友達が~と言って自分の事を誤魔化すのは、男子の常套手段だと私は認識しております!


「こうゆうのは受け取らない約束なの」

「でも……とりあえず、これは木原に任せたから!」


そう言って、勝手に手紙を膝に置いて「じゃ!」と言って去って行ってしまった。


手紙を返そうと立ち上がるも、既にその姿は目視できなかった。


「何だ?ラブレターか」

「そうなの。あ、私にじゃないよ?お姉ちゃんにだよ?」

「それは知っている。さっき聞いた」


!?……ってイリス!?どうしてここに!?


気がつくと、後ろにイリスが立っていた。


「どうした?朱莉はあいつに気があるのか?」

「無いよ!全然無いよ!1ミリも無いよ!」


お姉ちゃん宛ての手紙や花束、プレゼント。こうゆうのはいい加減慣れた。


お姉ちゃんは昔から千人に1人の美少女と持て囃され、妹としては羨ましい限りだけど……その苦労も散々見てきた。変な奴につきまとわれたり、しつこく迫られたり、誘拐されて監禁されたり。


そのせいか常にガードが硬く、男に口説かれると無になる。それでも男が嫌いにならなかったのは、男同士の恋愛を知ったから。最近では、男に言い寄られると妄想の世界に入ってしまうらしい。


「フラれるってわかってて渡すのが同級生の手紙ってのがね……」

「フラれるとは決まっていないだろう?」

「決まってる。お姉ちゃんはかぐや姫なんだから」


そう、お姉ちゃんは毎月お給料日に本屋という月へ帰って行くお姫様。


「菫が羨ましいか?」

「美人だからね。まぁ今は少しだけ」

「人は簡単に見える外側しか見ないからな」


それって、江藤君はお姉ちゃんの外見しか見て無い。そう言いたいの?私は何だか少し腹が立った。


「中身が見れるチャンスが無きゃ外見を見るしかないでしょ?でも江藤はそんな奴じゃないと思うよ?」

「人の中身など容易に見えるものじゃない」


何?こいつ、喧嘩売ってんの?


そう思っていたら、イリスが校舎にかかっていた時計を指差した。


「あ!面談の時間!」


私は急いで教室へ向かった。その後をイリスがついて来たから、一瞬足を止めた。


「面談に遅れるぞ?」

「いや、だからどうしてイリスがついて来るの?」

「親の代理だ」


絶っ対に無理!!イリスが代理だなんて不安しかない!不安しかないのに……


イリスは顔だけパパに変化して、私の隣に座った。机を挟んで先生と向かい合って座った。


せめて変化してくれれば、パパが来た事になるはず。


「担任の黒崎です」

「木原です」


イリスは無愛想に挨拶した。


「ちょと……もう少しパパらしくしてよ」

「葵のようにナヨナヨしくできない」

「パパはナヨナヨしくないから!」


担任の黒崎先生はちょっぴりメタボなお腹の、比較的若い先生だった。


「えーと、ではまず入学から現在の学校生活の態度からお話させていただきます。最近は遅刻も無く……」


一瞬、先生が驚いた顔をした。すぐさま隣を見ると、イリスの顔が元に戻っていた。


ちょっと!10分もつって言ってなかった?


私はとっさに机の上にあった先生のファイルを先生の目の前につきだしてイリスに小声で言った。


「イリス!顔!顔戻ってる!」

「木原さん、前が見えない」

「あ、すみません!ファイルの下に虫が……」

「虫?どこだ?」


虫?どこだ?じゃない!!さっさと顔を戻せ!!


当然虫なんかいない。イリスの顔が戻ったのを確認してファイルを戻した。


「えーと、授業中……」


ひぃいいいいい!また!?ここでバレるわけにはいかない!何とかしなきゃ……なんとか……


「あー!先生!校庭に渡辺直美!」

「え?そんなのいるわけないよね?」


私は無理やり先生の頭を校庭に向けた。


「え?どこ?」

「あっち!もっとあっちです!」

「ちょ!待って!先生の首がもげる!」


私が先生の頭を持って校庭の方を向けるのに必死になっていると、突然イリスが立ち上がった。


「先生……朱莉の事、よろしくお願いします」


そう言って深々と頭を下げて教室を出て行ってしまった。私は慌てて先生に挨拶して、イリスを追いかけた。


「待ってよ!イリス!どうしちゃったの?」


まさかこれ以上、変化できないとか?


「葵が来た事が重要何だろう?なら長居は無用だ」


そう言ってイリスはどんどん先へ歩き進めた。


「あの、ちょと待ってよ」

「まったく……人は外見ばかりをやたらと気にする」

「何その言い訳!」


すると、イリスは立ち止まるとパパの顔で振り向いて言った。


「あの担任は中身を見ようとする。これ以上あの場にいれば、私の本質を見抜かれる事になる」


イリスがそう言ったのはきっと、パパが緑に話していた事のせいだと思う。


緑はイリスが万引きで捕まった事と私に責められた事に、責任を感じていた。珍しく自分の部屋で落ち込んでいた。


「きっと、イリスがやらなきゃ俺がやってた。でも……自分のせいでがお父さんやみんなが悪く思われるって事、全然わかって無かった」

「まぁ、それは、そうかもしれないね……」

「ねーちゃんが怒ったのは、そうゆう事で不良だとか可愛そうな子とか判断されるからだろ?」


私は緑にそう説教した。だいたいは見た目や肩書きで評価と分類される。するとパパはベッドにいた緑の隣に座って、優しく言った。


「それは、外身も大事だ。確かに人が最初に見るのは外身。でも実際はその人がどんな事を思っているのかは、外側だけではなかなかわからないよね?」

「最初から中身なんか見えないし」


そんな事を思い出していると、いつの間にかイリスはパパの顔に変化して、私に言った。


「でも、中身を見ようとしていれば、少なからず見えて来る。中身を見ようとしていれば、いつか必ず自分の中身を見てくれる人も現れるから」


イリスの中身……イリスは悪魔だけど、私が思う悪魔とは何かが違う気がする。


「よし、次は来週の緑の授業参観に行くぞ!」

「絶っ対やめて!」


家に帰る途中、公園で緑の姿が見えた。変わらず友達と遊んでいるように見えた。近くに寄ってみると……


「緑、友達?」

「ねーちゃん!友達のジヨンとムファサ!」


え?ナニ人!?お友達グローバル過ぎない!?


あ、そういえばイリスにお礼……結局言いそびれちゃった。




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