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6、迷惑!

6、



腹立つ~!マジであいつ腹が立つ!


「誰が腹立つって?」

「はぁ?」


私が腹を立てながら登校していると、同じ中学出身の同じクラスの男子、江藤が後ろからやって来た。


「すっげーガニ股で歩いてる女子がいると思ったら木原かよ」


は?ガニ股?そんな、ガニ股なワケない…………


言われてみると、本当にガニ股だった。私は咳払いをして、何も無かったかのようにスッと足を閉じた。


「おはよう、江藤君。今日は佐藤君と伊藤君と一緒じゃないの?3頭の三藤が揃わないなんて珍しいね」

「やめろ。あいつらとひとくくりにするな」

「えーなんで?仲いいじゃん」


私と江藤君は話をしながら駅から学校までの道を歩き始めた。


「俺、三藤の中の頭だって言われて、江藤なのに江頭って呼ばれてんだけど……それってどうよ?」

「じゃあ、黒いタイツ履けばいいんじゃない?私持ってるよ?今度貸してあげよっか?」

「いらねーよ!」


江頭……江藤君と話始めると、すっかり腹を立てていた事を忘れていた。


「で、何に腹を立ててたんだ?」

「ああ、悪魔……みたいなシッターさんがうちに来てて、とにかくそいつが最低なの」


私はあいつの事を思い出して、またムカムカしてきた。


「へぇ……シッターなんて来てんだ。でもシッターって年じゃねーだろ」

「違うよ!下の弟と妹のシッターだよ」

「あ~下に姉弟いたっけ」


下駄箱に着くと友達に会って、江藤とはそこで別れた。


「朱莉、おはよー!」

「おはよー!」


毎日一緒にお昼を食べるのは、小学生からの友達二人。陸上部に入った香澄は、スレンダーな体型にショートヘアがよく似合うアスリート美少女。もう1人は奈緒。奈緒は甘え上手な一人っ子で、タヌキ顔の童顔。ふわふわの髪をゆるい三つ編みにしていて可愛い。


お昼休みになると、机をつけて二人とお弁当を広げて食べた。


「朱莉、今朝は何に怒ってたの?」


香澄にそう訊かれて、私は香澄と奈緒にイリスの事を話した。「なんだ、恋バナじゃないんだ」と落胆されつつも、今朝あった事を詳しく話した。


「私全然不良じゃないのに!デリカシーないと思わない?」


イリスの事は、さすがに悪魔だなんて言えないから、新しく来たシッターさんという事にした。


「でも早弁は正解だよね?」

「えぇっ!してないよ!今日の音楽はクラッシック観賞で暇だからおにぎり食べただけでしょ?」

「朱莉、それ立派な早弁」


えぇえええええ!!おにぎりは許容範囲かと思ってた!


「でも、どうして面談の事お父さんに言えないの?」

「だって……普通にパパ忙しいし。もしパパに毎日遅刻してたって知られたら、桃花の保育園変えるって言い出すかもしれないし……」

「最近遅刻してないじゃん」


それは……イリスがいるから。イリスが桃花を送って行くから、私は遅刻せずに登校できる。でも、いつまでイリスがいるのかは確認していない。


「妹ちゃんの保育園は変えられないの?」

「簡単には変えられないよ~桃花にも人間関係があるだろうし」

「そりゃ簡単には変えられないよね」


新しい環境になれば桃花は必ずまた『自分にはお母さんがいない事』を思い知らされる。それだけは何としても避けたい。


「うん……」


すると、香澄と奈緒は二人で顔を見合わせていた。


「え?何?私、変な事言った?」

「え?あ、うんん、別に?ただ、今日は昔みたいに珍しくよく喋るなぁって……ねぇ?」

「うん、朱莉、今日は元気だね。あ、元気なら放課後野球部見に行かない?」


奈緒は野球のエース目当てに、連日野球部の部活動に見学に行っていた。


「今日は元気って……いつも元気だけど?」

「行く?行くよね?」

「ごめん、早く帰って夕飯の買い物行かなきゃ」


今日のメニューは緑の大好物のカレーにするつもり。でもそれにはカレールーが足りない。


「買い物?そんなの家政婦さんにお願いすれば?家政婦さん来たんだよね?」

「家政婦って言うか……シッターだけど……」


イリスって……買い物できるのかな……?でもお金持ってないだろうし……


「お願い!少しだけ!帰る前にちょっとだけ付き合って~!」


私は奈緒のこのお願いに弱い。どうやら今日は香澄が部活の日で、奈緒には一緒に野球部を見に行く人がいないらしい。奈緒には1人で行くという選択肢は存在しない。こう見えてかなり奥手。


「そういえば朱莉、江頭と今朝話してたよね?あいつも野球部だよ?」

「へぇ……そーなんだ」

「興味無~っ!」


正直、私は男子に興味が無い。今はそんな余裕がない。そんな事より、みんなの夕飯の献立の方が知りたい。さすがにレパートリーが少なくて最近マンネリ化してる。


その日の放課後、どうしてもと頼まれて奈緒と野球部を見に行った。見学と言ってもネット裏から練習風景を見るだけだった。


「ねぇ、もっと近くに行かない?」


そう言ったのは私の方。正直、遠すぎて誰が誰だかわからない。


「近くに行ったら、誰だかバレちゃうでしょ?」

「でも、これじゃ誰が誰だか……」

「あれ!あれが山本先輩」

「え?どれ?」


ここからじゃ正直全員棒人間かサルに見える。しばらくすると、私の携帯に電話がかかって来た。それは、お姉ちゃんからだった。


「どうしたの?え?イリス?知らないけど?桃花のお迎えは?はぁ?行って無い?すぐ帰る!」


イリスが突然消えた。今日はイリスがお迎えに行く約束なのに……。


私はすぐに電話を切って、桃花の保育園へ向かう事にした。


「ごめん、私先に帰るね!」

「え?イリスって誰?」

「えーと、犬!」


奈緒と別れて先に帰ろうとすると、途中で男子に話しかけられた。


「木原!急ぎか?」

「江頭!」

「江頭言うな!」


話しかけてきたのは、部活中の江藤君だった。


「ここ通れば?駅近くなる」

「いいの?」


江藤君はフェンスを開けて、部活中のグラウンドの隅を通してくれた。


「えが……江藤君ありがとう!」

「今言いかけたよな?江頭浸透してんじゃねーか!」

「お疲れ~!」


駅に向かって走っていると、また電話がかかって来た。


またお姉ちゃんからだ!


「イリス見つかったの?桃花のお迎えは?」

「私早く帰れたから、桃花のお迎えは私が行けるんだけど……」

「良かった~!」


お姉ちゃんが行ってくれるなら一安心。


な~んだ。もっと奈緒に付き合っていても平気だったのかも。なんて安心していると……お姉ちゃんが信じられない言葉を発した。


「それより、イリスを迎えに行って欲しいの」

「イリス?どうして?」

「イリス、万引きしてつかまったみたい」


はぁあああああ!?捕まった!?しかも万引き!?あいつ、シッターとして手伝うどころか迷惑かかってんじゃん!


私は憂鬱な気持ちでお姉ちゃんから聞いたスーパーへ向かった。


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