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2、不法侵入!

2、



ある日朝のゴミ捨て場で幽霊に出会った。おじさん?お兄さん?そこはこの際どっちでもいいや。


今、明らかに地面から出て来たよね?この人、絶対にこの世のものじゃない。絶対幽霊!


ゴミ捨て場に資源ゴミを捨てようとしたら、薄汚れた本を捨てるなと怒られた。


「悪いが真白と同じく、主従関係に敬語は無しだ」

「はぁ……」


どうやら母の知人みたいだけど……お母さんの友達?さっき地面から出て来たのは私の勘違いかな?


幽霊かと思ったけど、近くで見ると本物の人間みたい。全然普通の人っぽい。


私がジロジロその姿を見ていたら……


「なんだ?悪魔がそんなに珍しいか?」


その真顔にドン引いた。このおじさん、マジで自分の事を真面目に悪魔だとか言っちゃってる。ヤバい……かなり痛い……。


いや、かなり変なおじさん。


変なおじさん?


変なおじさんだから♪変なおじさん♪


「だっふんだ!!」

「だっふんだ!?」


やだ!だっふんだ!とか言ってる場合じゃない!幽霊じゃないなら変質者!?これは警察に通報!


私がすぐにエプロンのポケットから携帯を出すと、携帯を持つ手を捕まれた。


嘘!ちゃんと感触がある!


「待て。警察は呼ぶな!まず葵に連絡を取れ」


今度はお父さん!?


言われるままお父さんに電話をしたら「ああ、イリスだね。大丈夫だよ」と言われた。


何が大丈夫なの!?


「あ、今から会議だから電話切るね~」

「え?ちょ、まっ!お父さん!」


この人とどういった関係かは一切教えてはくれず、お父さんには一方的に電話を切られた。


友達?友達なの?両親の友達だとしても、今はもてなす余裕なんかない。


「じゃ、私はこれで。失礼します」


そう言ってその場から逃げようとすると、自称悪魔は私の家までついて来た。私は玄関の前で立ち止まり、振り返りハッキリと言った。


「桃を病院へ連れて行くので、今日は帰ってもらっていいですか?」


ここはちゃんとお断りしよう。今はお客をかまっていられるほど時間も気力も無い。


「桃花が?熱か?私が連れて行く。お前は学校へ行け」

「はぁ!?結構です!」


知らない人に妹を任せられる訳が無いでしょ!?


「いや、私が連れて行く」

「いえいえ、私が連れて行きます」


それでも自称悪魔は一歩も引かなくて、勝手に家に入ると寝ている桃を半ば強引に抱えて外に出た。


「はぁ!?ちょっと!」


どうしよう!桃が連れて行かれる!!


私は慌てて自称悪魔の後を追いかけて叫んだ。


「待って!待ってってば!」

「なんだ?」


『待て』と言ったら、意外にもちゃんと足を止めてくれた。


「あの、じゃあ私も一緒に!一緒に行きますから……荷物!荷物持って来るからここで待ってて!絶対!絶対にここにいてください!」


私は慌てて家の中に戻って荷物の準備をした。


この間に桃が連れて行かれたらどうしよう……不安になりながら必死に支度をした。


保険証と、財布と携帯、後は……不安だからお裾分けとかいう理由つけておばあ様の家に寄ってみよう。


支度を終えて外に出ると、桃花を抱えた黒い背中がそこにはあった。


良かった……。ちゃんといてくれた。


正直ホッとした。


「遅い!いつまで待たせるつもりだ!」


そう安心していたら自称悪魔に罵倒されたけど、桃花がそこにいた安心感でそんなのどうでも良かった。


自称悪魔はこっちを少し見ると、すぐに私を置いて歩き始めた。私もすぐにその後を追いかけた。


このまま連れ去る気配は無いし、ちゃんと病院の方に向かってる。本当に大丈夫なのかな?


すると、自称悪魔さんは振り返り私のもっていたバスケットに気がついた。


「何だ?そのかごは?」

「お弁当のサンドイッチとお土産のワイン」

「お前は赤ずきんか!」


は?別に赤い頭巾とか被ってないけど?


「赤いずきんはまだまだ早いですよ」

「は?早い?」

「私まだ還暦じゃないし」


私は何年か前、お爺ちゃんが赤い頭巾とちゃんちゃんこで還暦のお祝いをした事を思い出した。


「何の話だ?」


自称悪魔には還暦の衣装がピンと来てないみたい。すぐに前を向いて、歩き始めた。


その背中を見ていると、至って普通の背中だった。


この得体の知れない自称悪魔は、態度は悪いし顔色も目付きも悪い。ひょろっとした体に真っ黒な燕尾服がまるで本物の悪魔みたいだった。


「え?病院そっち……」


気がつくと、病院とは別の方へ進んでいた。さっき病院へ行くって言ったのに……やっぱりこの人、桃を誘拐するつもり!?


「病院よりも、椿様に見せた方が早い」

「おばあ様?」


おばあ様に見せても何もならないでしょ?だっておばあ様はお医者さんじゃないし。


「心配無い。椿様ならちゃんと見てくださる」


おばあ様って一体何者なの?おばあ様は、お父さんのおばあちゃん。一度も顔を見た事の無い祖父の母。私達にとってはひいおばあちゃんだった。


おばあ様はひいおばあちゃんなのに、昔から全然歳を取らない不思議な人。その外見から私達姉弟は、本物の魔女なんじゃないかって密かに思っている。


すると自称悪魔は、桃の傾いた体を整えながら言った。


「この子供は魔力が強い。しかし器の体がまだしっかりできていない。そのせいで熱を出すのだろう。椿様にその魔力を少し抜いてもらえばすぐによくなる」


そういえば……私も小さい頃よく熱を出して、おばあ様の所へ行った記憶がある。


おばあ様の家はお城みたいで、宝石みたいなお菓子をたくさんもらった。そして、おばあ様と少しお話をすると、すぐに熱が下がる。そうしていつもご機嫌で帰った幼い頃の記憶を思い出した。


あの頃は……お母さんと一緒だった。


桃を抱える悪魔の姿が、あの時のお母さんの姿と重なって見えた。


「どうした?」

「え?あ、いえ。桃を抱えるの大変ですよね。すみません……」

「何故謝る?私が連れて行くと抱えた。お前に頼まれた訳ではない」


そりゃそうだけど……


「お母さんの代わりに桃花の事を世話するって言ったのは私だし……」

「だから何だ?自分の仕事だから誰かに手を出されるのは迷惑という話か?」

「いえ、迷惑とかそうゆう訳じゃなくて……」


だったら素直に『ありがとう』が正解かも……


「あの、ありがとうございます 」

「礼などいらない。これも契約の一部だ。契約を守らない悪魔などゴミクズ同然だからな」


契約……?


「本来なら召喚されて出るものだが……今回はいたしかなかった。召喚の書がなくなってしまえば、それは一大事だ。決して私は契約を守らないゴミクズではない」


自称悪魔は自分はゴミクズじゃない事を説明していた。ゴミ捨て場に捨てられた事をまだ根に持ってるみたい。


「契約って……何?」


そう訊くと、答えを聞く前におばあ様の家についてしまった。


おばあ様の家は……今も昔も不気味。レンガの外壁にタイルの色がわからないほど蔦が絡み付いていた。向かいに大きなマンションが立ってからは、すっかり日陰になってしまった。カラスが飛び立つ音が聞こえて、より一層不気味な雰囲気をかもし出していた。


「こんにちわ~!」


あれ?返事が無い。留守……?


すると自称悪魔は、勝手に家の中にどんどん入って行った。


「ちょっと!」


それ、不法侵入!!


リビングに入ると、自称悪魔はすぐに桃花をソファーに寝かせた。



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