表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/14

壊れていく少女



 僕は倒しかけた体をばっと起こした。その画像を開いて、拡大して見る。


 鮮血を浸して書いたような真っ赤な文字が、凶暴にのたうっていた。次の獲物を見つけた喜びに、体をくねらせるみたいに。


 雪谷を……く、喰っただって? 嘘だろ……しかも名指しで、アイの事が書いてあるぞ!


 次の狙いがアイで、確実に『喰う』事を予告してるって事だ


――――――


(あい)  『え、え? 嘘……イヤだ! 私……ゴメン。雪谷くんと繋がってたの……それで《だいじょぶ?》て聞いただけなんだよ? そしたらこれ送られてきた……怖いよ、怖いよ、みんな!!』


(マリア) 『落ち着いて! なんにもないよ! ただのイタズラとかに決まってるから』


(トシカズ)『そうだよ、そうだよ。アイ、僕たちがいるからね!』


(一夜)  『でもさ、なんかすげえリアルだよな……』


(マリア・トシカズ)『イチヤ!!』


(あい) 『ねえ、どうしたらいい? どうしたらいい!? 怖い怖い怖い!!』


――――――


 パニックになったアイは、もう感情に溺れている。誰の問いかけにも反応せず、怖いを連投するしか出来ていなかった。


 だがそれが、パタリと止む。


 不気味な静寂に、僕は唾を呑み込んだ。たぶん他のやつらもそうだろう。


 その中で、最も勇気のあるマリアがアイに呼び掛ける。


――――――


(マリア) 『アイ……ねえ?』


(あい)  『……わ……』


(マリア) 『わ?』


(あい)  『わ……わ……わ……』


――――――


 奇妙な繰り返しの「わ」。まさか恐怖のあまり、壊れてしまったわけじゃないよな……アイのやつ。


――――――


(マリア) 『わからないよ? 何が言いたいの?』


(あい)  『……わ……た……』


(マリア) 『わ・た? わたって何?』


(あい)  『……わ……た……し……の……こ……と……』


――――――


 何かの文を伝えたいのか。その奇妙なつぶやきに、マリアすら沈黙してしまう。


――――――


(あい)  『わたしのこと……きにかけてくれるの だあれ?』


――――――


 童謡のような言葉。普段から子供っぽいアイなら書きかねないけれど、今は不気味でしか無い。


――――――


(あい)  『わたしのこと……きにかけてくれるの だあれだ? ねえ、はなしかけてくれないの?』


――――――


 全文ひらがなの誘い。怖い。そう言われると、逆に誰も指を動かそうとしない。


 アイを本気で心配しているトシカズが、恐怖に打ち勝って、メッセージを送ってきた。


――――――


(トシカズ)『アイ……どうしたんだよ。みんな気にかけてるじゃないか』


――――――


 その言葉が契機となった。


 予告なしに、スタンプがひとつ送られてきた。


 それはドクロだった。口から血を流している不気味な骸骨。


 そんな物は百パーセント、アイが持っていないはずの絵柄だった。アイコンの横に「アイ」の名前があるのが信じられない。


 ひとつ、ひとつと繰り返し送信されるスタンプのドクロ。それは速度と数を増していく。


 やがて下から上に流れる洪水のようになった。誰もメッセージを挟むことが出来ない。


 スマホが壊れる! 皆がそう思った。その刹那、ピタッとスタンプの連打が止まった。


――――――


(あい)  『は、は、は、はなしかけてくれて、ありがとう。みーつけた。つぎは、ア・ナ・タ♪』


――――――


 そのメッセージに覆いかぶさるように、送られてきた写真が――。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ