ご対面
なんかグダグダですね、すいません。
「こちらにいたのですね南條先生。」
そこまで大きくない、でもよく耳に残る声の持ち主は、私の隣の人物を見てホッとしている。
教師サイドヒロイン、西野希望。今年赴任してきた、前作の香織先生と似た雰囲気を持つ女性。
その中にいるのは果たしてどんな人間なのか。
「おや西野先生。どうしました?」
「体調が悪そうな子がいたので保健室まで連れていったらいなかったので。もしかしたらこちらかと。」
「それは申し訳ありません。定例会が終わってそのまま彼女に資料を渡しに来ていまして。」
資料を手に申し訳なく謝罪する姿は例に漏れずイケメンである。西野先生の視線がこちらに向いたので、とりあえず会釈しておく。
「カフェテリアの責任者さん?」
「初めまして、大澤紫帆と申します。」
彼女が赴任してもうすぐ1年だが、こうして顔を合わせたのは初めてだ。学園内での私の移動範囲が狭いのが主な理由だと思うが、彼女が攻略対象者達に近付くのに夢中で此処に訪れなかったのもあるだろう。
纏う空気に違和感はない。でも私を見て驚いているのは、
「は、初めまして。南條先生と仲がよろしかったのですね。こちらに来ないから知りませんでした。」
ゲームに登場することのない人物だと認識しているからだ。結花ちゃんの方を然り気無く見ればある一点を確認した後西野先生を睨んでいる。生徒ヒロインの東雲さん達の様子を見たのは分かるけど、仮にも先生を睨むのは良くないよ?
「最近生徒の間で結構話題になってるんですよー?」
「あら?町田さんもいたのね。」
「従姉妹ですからー。南條先生は姉さんの婚約者ですしー?」
ざわり、と空気が変わった気がする。
喧嘩腰で結花ちゃんが先生に言えば(実は西野先生のクラスだったらしい)、目の前の顔は驚愕、周りの女子生徒からは黄色い声、そしてその向こう側で東雲さんが般若のような顔をしているのを確認。
「やっと認めてくれたんですね。ありがとうございます。」
暢気にヘラヘラしている貴史さんに舌打ちしたくなったのは私だけじゃないはず。結花ちゃんも「馬鹿か?」なんて溜め息ついてるし。ぐっちーは「修羅場か?」なんて楽しそうにしているけども。
「アウトだね。」
「今から胃が痛い。」
保健室に生徒の容態を見に行く為に戻った貴史さんと西野先生の背中を見ながら項垂れる。
あのやり取りで分かったのは、東雲さんが貴史さんを狙ってる可能性が高いことだ。西野先生の方は驚いただけだったので現状グレー。
ぐっちーが自販機で買ってきてくれた紅茶を片手に結花ちゃんが慰めてくれるが、正直かなりしんどい。
「ってか、俺も帰りたい。」
「やだ、駄目。この混沌とした中に私達を置き去りにするのか。」
「大澤怖い!顔死んでるから!」
「ねぇ。」
ほらきた!