そういえば彼等はお馬鹿な設定だった。
「ちょ、国立君何言ってるのかな!?大丈夫!?」
「俺はいたって普通だ。昔感じたこの熱い気持ち…まさに運命。俺は彼女と出会う為に生まれてきたんだ。」
「おい、コイツこんなにアホだったのか?」
「高3の時まったく同じ台詞を俺達は聞かされた。残念なことに恋愛方面はすこぶる残念な奴らしい。」
絶叫したまま動かなくなってしまった結花ちゃんはとりあえず放置して国立君に詰め寄れば真顔で返され。
ひっそりと呟いたぐっちーに呆れたように同意する英司。彼の言ったことが本当なら、数年前の図書室での告白と同じだと。そんなアホな。
「今日はこの後予定を入れてしまっていてな。」
また会いに来る、と残して爽やかに去っていく彼。残された私達は言葉が出ず、まずは結花ちゃんが復活するのを待つ。
「信じらんない…。」
「あ、大丈夫…?」
「何あれ!?あんな残念な男なの!?あれがメインヒー「わー!ストップ!落ち着いて!!」」
私に詰め寄るのは構わないけど、他に人がいる所でゲーム設定の話はマズイ。忘れているかもしれないが、このカフェテリアにはまだ続編ヒロイン達が滞在しているのだ。3人組が登場した際、その顔を見て驚愕していたのは確認済み。こちらの会話を気にしているのは間違いないだろう。そんな状況でうっかりゲームの話をするのは危険過ぎる。
「従姉妹ちゃんはイケメン嫌い?」
「…アタシの理想はお兄ちゃんよ。」
「ブラコン?」
ぐっちーが結花ちゃんに尋ねれば、少し気まずそうに返される言葉。私を気遣ってくれてるのが分かるので微笑ましい。向かいの英司は苦笑いだけど。
「そっかー。お兄ちゃん大好きかー。お兄ちゃんの彼女さんは従姉妹ちゃんの合格を貰えないといけないから大変だなぁ。」
「お兄ちゃんの隣は姉さんだけよ。それ以外の女なんて認めないわ。」
「姉さんって大澤のことだろ?…え?大澤浮気?」
「ブラコンでシスコン?質悪っ。」
「少し黙ろうかぐっちー。そして英司、そんな目で見ないで。」
どこぞの似非紳士の真似をして微笑めばぐっちーの顔は真っ青になる。上手く出来ていたようで満足。英司は頼んでも憐れみの視線をやめてくれない。
結花ちゃんは更正したもののブラコンは健在、更に姉設定の私にシスコン発動。ここ最近では麗君の話題になればいつも今回と似たようなことを言われる。嬉しいけど素直に喜べないのはもう彼に二度と会えないからと、
「何度言えば分かるのですか。紫帆は僕の婚約者で、貴女の兄など今更お呼びでないのですよ。」
その度にタイミング良く現れる婚約者様に呆れてしまうからである。
今度こそゴングが鳴り響いた気がした。