人事異動なんてあるのね
「お、いらっしゃい。」
数日後。
結花ちゃんとの予定が上手く嚙み合って開催された女子会。場所は言わずもがな、マスターのカフェである。
「マスター、資料ありがとうございます。」
「約束だからね。結花ちゃんはもう来てるよ。僕からもいくつか補足したいことがあるから、後でお邪魔するね。」
案内された席には既に結花ちゃんが居て、私が持ってきた資料と同じものを広げて唸っていた。私に気付いてすぐに片付けてくれたので、マスターにコーヒーをお願いする。
「さて、何から確認しようか。」
「ヒロイン2人が転生もしくは転移しているのは確実だけど。東雲の方はだいぶ過激そうね。」
お客がいないのをいいことに、結花ちゃんはマスターにコーヒーのおかわりを叫んだ。
ほどなくしてテーブルに置かれたそれらと、椅子を持ってきて座るマスター。
「あれ?お店いいんですか?」
「うん。閉めちゃった。そんなに時間ないし。」
「時間?」
「そう。僕、人事異動で違う世界の担当に変わるんだ。」
サラリと、次の連休に旅行に行くんだ、みたいな軽いノリで言われた言葉にカップを落としそうになる。え?神様的な存在にも人事異動とかあるんですか?ちょっと笑えるんですけど。
「え!?じゃぁ、私の監視は誰がするんですか!?」
「有力なのは次の管理人か、もしくは監査部の13番君かな。」
「監査部…。」
ふと、以前助けてくれた2番さんを思い出す。管理人とは違い数の少ない彼等の業務は膨大なのに、更に増やしていいものなのか。社畜まっしぐらじゃないか。
「次の管理人って決まってるんですか?」
「いや、まだかな?恐らく近いうちに紹介があると思うよ。」
「因みにマスターの次の担当は?」
「君達がいた所。事故物件レベルで誰もやりたがらないからさ。だから、完全に縁が切れるわけではないよ。」
まぁ確かに自分が頼まれたらやりたくはないな。というか、向こうの世界で選出されてた管理人も消滅してしまっているし、新しい人を決めないとなのだろうか。もし知り合いが選ばれていたらいつか会うのだろうか。やだな、こんな時に『選ばれたのは…』なCM思い出してしまった。
「1番可能性として有り得るのは、13番君が新人と一緒に監視しつつ慣れたら新人だけになると思うよ。」
「マスター、さっきから監査部の人のこと軽く呼んでるけど、知り合いなんですか?」
「あれ?ちゃんと紹介されてないの?」
そんな話いっさい知らない。結花ちゃんも首を横に振っているので会ったことないようだ。
ちゃんと紹介?私達の知り合い?
「僕のことだよ。久しぶりだね。」




