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生命の神様  作者: 仁藤世音
0章 スタート・ユア・ソウル
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アローハ!

 石段を無心でひょこひょこ登ってきた。無心で無心で。そしたら終点だった。もう上に行くエネルギーは使わなくていいんだな。ゴール地点に存在していた格子状の引き戸をギぃ~っと開いて、その中の小さな個室に僕ら2人が入った。


「これは何なんですか?」

「俗にいう、油圧エレベーター」

いやいや。そんなわけ。

「上にも下にも何も付いてなかったですよ」

「だから、これは側だけの代物なの。さっさとそれ閉めて。そうしないと動かないんだから」

へいへい。


 ギィ~っと閉まると同時に猛スピードでエレベーターは上昇し、一瞬静止したと思ったら今度は急降下して行った。そして急ブレーキがかかりそっと着地し、戸がスーッと開いた。


 この過程で!まず床にのめりこんだ!上昇から静止した段階で天井に叩きつけられ、、、、。とにかく、痛いような気分になるだけで痛くはないのだ。でもそういう問題じゃなくて、意味わかんなすぎて怖いんだ。ついでにあの浮遊感が気持ち悪かった。

 トトンクロムのやつめ、体を固定するための椅子みたいなものをこさえていた。僕が戸を閉めてる間に椅子を作って、それに座って固定バーを下ろして、叩きつけられないようにしていたんだ。それってこれを知ってたってことだ。解せぬ。仁義は死んだのか。


「やぁ、初めまして。あの意地悪ちゃんにも困ったもんだ」

 仰向けに転がる僕に皺のある手が伸ばされた。小顔にサングラスの白髪おじいさん、水色ベースにヤシの木が大量に書かれたアロハ。

「あ、ありがとうございます。」

 この人がメルセデスの師、なんだろうな。起き上がると、そこはバー兼遊技場のようなところだった。ダーツボードにビリヤード台、ポーカーテーブル エトセトラ。まぁこの場にその恰好なら許せないことはない。トトンクロムはメルセデスとダーツに興じていた。まさに今着いたところなのに、なんだあいつら。メルセデスは僕に気づいて笑顔で手を振ったが、何かが悔しかったので気づかないふりをした。


 そんな前置きもありながら、僕はバーカウンターの席に座らされた。ご老人はカウンターに立っている。

「はいよ、水の水割り」

それはただの水では。

「俺の名前はテューラ。神人の使う全図書館の管理をする神人だ。君の名は?」

ほう。支援型の役割を持った神人ってことか。図書館の管理って、具体的に何をしてるんだろうかなぁ。


「名前聞いてないんですか?メルセデスから」

「敢えて聞かなかった。楽しみは取っておくものかとね」

何が楽しいことがあるというのか。

「白河夜船です」

「あ? クク、ハッハッハ! そいつは傑作だ! いい自虐だな。こんなにお似合いな名前もそうそうあるまい。やっぱメルセデスからネタ晴らし聞かなくて正解だったわ」


なぁにがおかしい。


「お、何がおかしい?って顔だなぁ。それが余計におかしいよ! まま、それはこの辺で終わりだ。おい! メルセデス、トトンクロム! クリケットやってねぇでこっち来い。何のために来たんだ」

2人は文句は言わず、速やかに僕の両隣に座った。


「さて、トトンクロム。どの程度話した?」

答えようとしたらメルセデスが先に答えた。

「何にも。決まってるじゃない。1からどうぞ師匠」

トトンクロムがばつが悪そうに目を逸らしたので、テューラはそれが事実だとわかりため息をついた。

「白河、今日は図書館へのアクセスキーを受け取りに来てもらった。図書館ってのはお前も行ったあの本だらけの球体図書館だ。覚えあるだろ」

初めてメルセデスにあった場所だろうか。あれの管理人がこの2人だなんて、そのアロハな見た目は普通に考えて海の家の管理人だろうに。


「ありますよ」

「まぁキーなんざ実際要らないものなんだが、昔からあるし気持ち的に悪くないって理由で存在している。これがあればオタクの人間資料だけじゃなく、海洋、森林とかの他の神人が管理するエリアの情報にもアクセス出来る。ほれ」

手渡されたのは鍵、というよりもパソコン?のような画面と、何もついていない金属板がくっついたものだった。


「これが鍵なんですか?」

「そうだ。それを起動してみろ。念力で!」

念力…………。いざ言葉にされると馬鹿っぽい言葉だ。あ~でも、それで起動できちゃうから余計に馬鹿っぽい。メルセデスが手をパンと叩いて喜んだ。

「はい、登録完了です! これでどこでもいつでもアクセスできますよ。それは他界と一方的な交信を可能にする神人のちょっとしたおもちゃになるので差し上げます」

これは鍵って呼ばないだろ。しかし、僕は紳士。話の腰は折らない。

「それは嬉しい。具体的に何が可能なのですか?」

「そこに打ち込んだ文字が他界に流れていくんですよ。試しになにか入力してください。念で。」

…………。


『堪えがたき喧騒の中を眠ってやり過ごせたら、それはどんなにか素晴らしいだろうか。』


「ハハハ!なんじゃそりゃ! 喧騒何てこの神人界にはそうそうないわ。まぁだが、それでそのメッセージは他界に流れた。業務以外で外に干渉する方法の1つだ、覚えておけよ」

目の前に喧騒ありしも……。


 その後はよもやま話だった。どの学者が最も優れているかというトークテーマで、テューラはトーマス・ヤング、メルセデスはミゲル・ニコレリス、トトンクロムはアイザック・ニュートンの名前を挙げた。僕はその議題には入れそうもなかったのに参加させられたので仕方なく知ってる名前を答えた。それを聞いて3人とも一瞬妙な顔をしたが、どうでも良かった。僕は、ハイテンションな、性格じゃ、ないんだ。


 しかし予言しよう。この先は少しはゆっくり出来ると。振り子のように状況は動いていくものだ、今が喧騒なら次は閑静が待っているはずだ! ……あんまり静かなのも嫌だけど。でもトトンクロムがいるからな、良い感じの静けさになるだろう。


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