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生命の神様  作者: 仁藤世音
0章 スタート・ユア・ソウル
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神人さんいらっしゃい

 会話の相手もいなくなり、手に持ったマニュアルだけが僕の友人だ。下手に散策に出て迷子になったら目も当てられないし、情報こそ力だと賢い僕は断言する。


ペラリンニョ

・絶対にしてはいけないこと

神人にはルールがあります。例えば、人間と会話することが許されていません。他の神人に危害を加えることも許されていません。賢い判断での行動を要求します。

生命の神人であるあなたたちのルールとして、運命のパーツに組み込まれた人間の生死には関与してはなりません。これは絶対に守ってください。


……。これはトトンクロムが書いたものじゃないと見た。じゃなきゃ、生命の神人であるあなたたち、という文面には違和感がある。


・神人

人間の進化系。魂だけの存在であり、脳の機能を魂に移植した存在と言える。莫大なニューロンの獲得と、肉体からの解放によって、様々な物質を操る機能を獲得している。また、生物ではあるが食事睡眠は必要としないため、それらは娯楽として扱われる。


わからないな。それっぽく言ってみてるだけだろこれ。だけどまぁ、実際空腹にもならんし眠くもならんし、この娯楽になったという情報は信じられる。経験は知識を裏付けるのだ。とすれば、この話し終えたとたんにソファで寝たコヤツは……。


・ものづくり

1、イメージ 2、強くイメージ 3、すごく強くイメージ 4、錯覚するくらいにイメージ


舐めてるなぁ、これ。でもあれか?想像するだけで物は作れるみたいなこと言ってたしな。それのやりかたがこれかもしれない。ならば、もっと座り心地のいいフカフカな椅子でもあつらえたい。


1、2、3、4..うわぁ……。思ったよりはるかに簡単に出来てしまったぁ。なぜだろう自分でも少し引いた。

 そして理想以上にいい椅子が爆誕している。この椅子、原料はなんなのだ?化学繊維的なあれの知識はないから判断できない。しかし、ぁぁ~いい心地の椅子だこと!

 人類がいつの間に、何の必要があってこんな進化を遂げていたのか、この件はいずれ解いてやろうじゃないか。

1、2、3、4↑カップofティー! あ、香りがすごすぎるこれ。あ、しかもうまいわこれ。温度もちょうどいいな~。


続いて僕は小さなテーブルを作りそこにマニュアルを置いた。手には紅茶とマドレーヌ。

 情報は向こうからやってくることもある。それよりも、優雅に心のゆとりを持つことが何より大事なことであると、賢い僕は断言しよう。



 それにしてもいかにも貴族様の部屋だよ、と言う感じだ。でかいフカフカベット、赤い絨毯、よさげな暖炉、大きな宗教画、きらびやかなシャンデリア。オーソドックスすぎて、むしろつまらないというか、そう! 飽きる。これがトトンクロムのセンスなら、それは何を意味するだろう?


1.生前がそもそも貴族でこれが普通だった。そういえば僕をなんちゃって監禁した塔もいかにも中世って感じだったな。なら人間としてはその時代を生きていたということかもしれない。まぁ、生前の人間だった時代がトトンクロムにあったとは限らないが。


2.普通に好みがこういうものだってこと。うーん。あのどこか冷めた態度と、言うなれば色味がやかましいこの部屋はなんかかみ合わない気がしないでもない。


 思考力が貧困だからな、3が出てこない。だが紅茶は三杯目だ。さて、ベットがあるのにソファで眠りこけてるこの赤毛はいつ起きるんだろう。自分の立ち振る舞いとか、その辺の指示をしてから寝てほしかった。あ、三杯目の紅茶がもう…。

 お、コーヒーもうまいな。さすがだ、神人すごい。飲みまくってるのにお腹がタプタプになるという概念がない。ほんと神、いや神人。


「……匂う」


お~、突然起きよった。起きたってよりは、閉じてた目を開けた感じだ。

「お目覚めですか? 赤毛のお姫様。マドレーヌなど、いかがでしょうか?」

……睨むなよ。すぐに睨むの良くないよ!


「気色悪い。それに何偉そうに腰かけてんの」

トトンクロムがむくっと起き上がった。所作の1つ1つに品がある。やはり1番:貴族説は有力だ。

「あ~マニュアルやっと読んだのか。簡単に出来たでしょ。まぁ、手足を使うのと同じレベルだから当然だけど」

「そうですね。あ、これ読んでて思ったんですけども、このマニュアル書いたのってトトンクロムじゃないですよね?」

トトンクロムはハッとして目を逸らした。

「………そう。それは先代の生命の神人が書いたもの」


「先代、ですか。僕にとってのトトンクロム、トトンクロムにとっての…師匠ってとこですか」


「違う!!!!!」

熱風が吹いた。ガバっと起き上がり僕の手から強引にマニュアルを奪い取った。トトンクロムはそれを掴み床に叩きつけ、炎を作り出しそれを燃やした。

「あんなやつ師ではない!私はあんな外道ではない!!あんな…あんな……」

トトンクロムは目に涙を溜めながらも、恐ろしい、怒りで歪んだ表情で震えていた。


 思わず怯んでしまった。よく分からないが、触れてはいけない部分だったようだ。


 僕はトトンクロムの震える拳を握り呼びかけた。

「落ち着いてください!僕はあなたのこと、正直まだよくわかりませんが外道だとは思いません!さっきの仕事でも、驚きましたけど、トトンクロムからは何というかうまく言えないんですけど信用できるものを感じました。だから……」

段々とトトンクロムは我を取り戻し、「ごめんなさい」とポツリと謝った。

「僕こそごめんなさい。軽率でした」


僕は手を離し、トトンクロムは指で涙をぬぐった。

「いいえ、普通の会話だった。私が悪い。本当にごめんなさい。でも…今後は触れないでくれるとありがたいかな……。あのマニュアルはちょっとした思い出の品でもあったからとっといたんだけど。あ~あ、白河に借りが出来ちゃったかな」

トトンクロムは疲れたような笑顔を見せた。


 メルセデスは僕に、トトンクロムを助けてあげてと頼んだ。何をどう助けるのか?それはもしかしたら、トトンクロムが過去とうまく付き合えるようサポートすることなのかもしれない。感情の起伏が小さい者が、一瞬にして取り乱すほどの過去。こっそりと調べる必要があるかもしれない。踏み込むのは失礼かもしれないが、望まれる行動が正しいとは限らないではないか。


 落ち着きを取り戻したトトンクロムは銀色で所々に傷がついた懐中時計を出し、時間を見た。

「切り替え切り替え。白河、これからある神人にあなたを会わせるわ。メルセデスの上司にあたる神人で、まぁ、いい人」

「わかりました」

別の神人。一体どんな事柄が神人に干渉されているのか、好奇心が渦を巻く。あの変な神人メルセデスの上司、輪をかけて変なヤツじゃないことを祈る。


 お? 待てよ? 何に祈るんだろう? 

 僕は今や神に近しい存在らしいのに、同業者に祈るなんておかしいだろう。そう……自分に期待!ってことで良いか。祈る→自分に期待! この件はこれで解決。


 トトンクロムの長く赤いさらさらヘアを追いかけて、これまたおとぎ話のようなゲームのような、宇宙の中に階段のように連なっている段々石を登っていく。


 登りながら考えた。誰にも過去はあり、それは悲しいものだったり楽しいものだったり、色々ある。トトンクロムにも過去があり、あの猟師や青年の処遇も過去がもたらした。僕らの仕事、魂を奪い魂を与える仕事は過去を見定めることがキーポイントだろう。

    そこでだ、僕の過去は?

 過去が今を作るなら、この宇宙のような空間の石段を登る『今』を作り出した僕の過去は? 僕はまず、自分を知りたい。


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