023. 大切な旧友との再会(2)
「ワガハイは、同期の中でも特に優秀だった」
「そんなことないって。アスティニの方が目立っていたよ。剣の腕は、最初から一流だった」
「また謙遜か? 模擬戦で私を負かしたくせに、よく言う」
「たまたまだよ、たまたま」
「いや。全力だった私を、あなたは冷静かつ完璧に――」
「へぇーっ、そうですかっ!! へぇーっ!!」
吾輩とアスティニが話していたところに、クーリアが仰々しく声を荒らげた。
「いいですねぇ、ワガハイくん。こぉーんなに美人な女性のお友だちがいて、いいですねぇーっ!!」
「……どうしたの、クーリア?」
となりに座っていた彼女が、ぐわっと吾輩に近づいてくる。
「食堂で男性に言い寄られちゃうくらいのお顔立ちですもんねぇ? 装備している胸当てがキツキツな感じのグラマーさんですもんねぇ? しかも、剣術がお得意の国境なき騎士団員――それはそれは、ご自慢のお友だちでしょうねぇ?」
明らかに、クーリアの態度がおかしい。
「キュ、キュイ……」
「あ、あはははは……」
同席しているキューイと、状況を見守ってくれていたミロートさんも、少し引き気味だ。
確かに吾輩は、アスティニとの会話に集中してしまっていた。
クーリアにしてみれば、気分はよくなかっただろう。
再び反省。
そんな空気を読んでくれたのか、大切な旧友が口を開く。
「あらためて、私はアスティニ。国境なき騎士団に所属しているダークエルフだ。ワガハイとは、出会って間もない頃から親しくさせてもらっている」
「……どうも」
どことなく警戒しながら、
「私はクーリア、ハーフエルフ」
旅の相棒は事務的に伝えていた。
この流れに乗って、アスティニに紹介することにしよう。
「彼はキューイ。吾輩の仲間だよ」
「キュイ、キュイ」
キューイが、元気にあいさつ。
「そして、こちらは――」
「ミロートと申します。同じエルフとして、仲良くしていただけるとうれしいです」
吾輩がうながすと、ミロートさんが自己紹介。
「クーリア、キューイ、ミロートだな――よろしく頼む」
「彼女はね、風まかせな旅をしている吾輩とは違って、国境なき騎士団本部の騎士――銀の騎士なんだよ」
アスティニが名前を確認したところで、吾輩が補足した。
「ということは、今回派遣された騎士団本部の騎士が、アスティニさんということなんですね」
ここまでの会話から理解してくれたんだろう。
ミロートさんが言った。
正解。
つまり、吾輩を探しに出たという銀の騎士は、偶然にも、同期で友人のアスティニだったんだ。
彼女の方も、入国した旅人ゴーストを吾輩だと予想して、だから自分から町へ。
結局、城の侍従官であるエルマーさんが、先に吾輩を見つけることになったけどね。
「その口振り……もしかして、あなたも大公から依頼を?」
「アスティニさんを前にして恐縮なんですが、いろいろな経緯がありまして……及ばすながら僕も、今回の件で協力させてもらうことになっているんです」
「彼の実力は、吾輩が保証するよ、アスティニ」
「そうか。ワガハイが言うなら安心だ。あらためて、よろしく頼む」
「よろしくお願いします、アスティニさん」
と、ミロートさんは和やかに接してくれているけど、
「…………」
クーリアは、ムスッと沈黙。
彼女は社交的で、初対面の相手に対しても、いい意味で物怖じしない。
だけどめずらしく、今回は控えめだな。
「あなたも、ワガハイが認めた実力者――ということでいいのか、クーリア?」
「……さぁ、どうですかね」
尋ねてきたアスティニに、クーリアはそっけなく返すだけだった。




