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顔なしゴースト『ワガハイ』の、つれづれならない国境なき冒険  作者: 渋谷 恩弥斎
[第3章 第1節] ベンデノフ王国>南ベンデノフ城下町
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023. 大切な旧友との再会(2)

「ワガハイは、同期の中でも特に優秀だった」

「そんなことないって。アスティニの方が目立っていたよ。剣の腕は、最初から一流だった」


「また謙遜けんそんか? 模擬戦もぎせんで私を負かしたくせに、よく言う」

「たまたまだよ、たまたま」

「いや。全力だった私を、あなたは冷静かつ完璧に――」


「へぇーっ、そうですかっ!! へぇーっ!!」


 吾輩とアスティニが話していたところに、クーリアが仰々ぎょうぎょうしく声を荒らげた。


「いいですねぇ、ワガハイくん。こぉーんなに美人な女性のお友だちがいて、いいですねぇーっ!!」

「……どうしたの、クーリア?」


 となりに座っていた彼女が、ぐわっと吾輩に近づいてくる。


「食堂で男性に言い寄られちゃうくらいのお顔立ちですもんねぇ? 装備している胸当てがキツキツな感じのグラマーさんですもんねぇ? しかも、剣術がお得意の国境なき騎士団員――それはそれは、ご自慢のお友だちでしょうねぇ?」


 明らかに、クーリアの態度がおかしい。


「キュ、キュイ……」

「あ、あはははは……」


 同席しているキューイと、状況を見守ってくれていたミロートさんも、少し引き気味だ。


 確かに吾輩は、アスティニとの会話に集中してしまっていた。

 クーリアにしてみれば、気分はよくなかっただろう。

 再び反省。


 そんな空気を読んでくれたのか、大切な旧友が口を開く。


「あらためて、私はアスティニ。国境なき騎士団に所属しているダークエルフだ。ワガハイとは、出会って間もない頃から親しくさせてもらっている」

「……どうも」


 どことなく警戒しながら、


「私はクーリア、ハーフエルフ」


 旅の相棒は事務的に伝えていた。


 この流れに乗って、アスティニに紹介することにしよう。


「彼はキューイ。吾輩の仲間だよ」

「キュイ、キュイ」


 キューイが、元気にあいさつ。


「そして、こちらは――」

「ミロートと申します。同じエルフとして、仲良くしていただけるとうれしいです」


 吾輩がうながすと、ミロートさんが自己紹介。


「クーリア、キューイ、ミロートだな――よろしく頼む」

「彼女はね、風まかせな旅をしている吾輩とは違って、国境なき騎士団本部の騎士――銀の騎士シルバーナイトなんだよ」


 アスティニが名前を確認したところで、吾輩が補足した。


「ということは、今回派遣された騎士団本部の騎士が、アスティニさんということなんですね」


 ここまでの会話から理解してくれたんだろう。

 ミロートさんが言った。


 正解。

 つまり、吾輩を探しに出たという銀の騎士シルバーナイトは、偶然にも、同期で友人のアスティニだったんだ。


 彼女の方も、入国した旅人ゴーストを吾輩だと予想して、だから自分から町へ。


 結局、城の侍従官であるエルマーさんが、先に吾輩を見つけることになったけどね。


「その口振り……もしかして、あなたも大公から依頼を?」

「アスティニさんを前にして恐縮なんですが、いろいろな経緯がありまして……及ばすながら僕も、今回の件で協力させてもらうことになっているんです」


「彼の実力は、吾輩が保証するよ、アスティニ」

「そうか。ワガハイが言うなら安心だ。あらためて、よろしく頼む」

「よろしくお願いします、アスティニさん」


 と、ミロートさんはなごやかに接してくれているけど、


「…………」


 クーリアは、ムスッと沈黙。


 彼女は社交的で、初対面の相手に対しても、いい意味で物怖じしない。


 だけどめずらしく、今回は控えめだな。


「あなたも、ワガハイが認めた実力者――ということでいいのか、クーリア?」

「……さぁ、どうですかね」


 尋ねてきたアスティニに、クーリアはそっけなく返すだけだった。

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