002. 目的地は、ガレッツ城下町
青空の下を、吾輩とクーリアは進んでいく。
ちらほらと旅人らしき者とすれ違ったりもするけれど、それとなく頭を下げる程度で、騒がしくなるようなことはなかった。
「さて、ワガハイくん」
クーリアが口を開く。
「あてのない旅とはいえ、とりあえずの目的地くらいは、ここで決めておいてもいいんじゃないかな?」
「まぁ、そうだね」
当たり前だけど、野宿をするよりは宿屋で休んだ方がいい。
日が暮れる前に、どこかの集落へたどり着けたら最高だ。
「確か、おいしいものを食べたいんでしょ? だったらとりあえず、このまま都を目指してみようよ――この『ガレッツ公国』最大の都市である『ガレッツ城下町』へ」
相棒らしく、クーリアが吾輩に提案してくれた。
ガレッツ公国。
近隣国家の王族の親戚筋に当たる公爵家が元首として統治しているのが、吾輩たちがいるこの小国だ。
海を持たない内陸国家で、国土面積も広くはないが、比較的治安のいい地域だと聞いている。
オーヌの町はあんな感じだったけれど、吾輩は、この国に入ってから今日まで、賊や野獣からの襲撃を受けていない。
実感としても、風のうわさは本当だと言えるだろう。
だが、流れ者の旅人である吾輩には、その程度の知識しかない。
一方で、吾輩同様に他国からの旅人であるらしいクーリアだけど、社交的な性格と盗賊としてのスキル(?)のたまものか、それなりにはこの国に詳しいみたいだな。
「西へ西へ進んでいけば、数日中にはたどり着けるよ。この先の森を抜けないといけないみたいなんだけど、旅人が迷うような場所でもないみたいだし――どうかな?」
「うん。いいよ、それで」
元々、目的なんか何もない旅だ。
断る理由もない。
吾輩は、クーリアにうなずいた。
「よし、じゃあ決まり。ガレッツ城下町なら、おいしいものだってあるからね。ワガハイくんも、きっと満足するよ」
クーリアの言葉に、吾輩の期待もふくらむ。
高級レストランには入れなくとも、露店で売られているような軽食なら、食べ歩きだってできるかもしれない。
楽しみだ。
すると次第に、周囲の緑が濃くなっていく。
森だ、森が広がっているんだ。
そこでクーリアが、鼓舞するように声を上げる。
「この向こう側に、私たちの次の目的地がある――さぁ、いくよ、ワガハイくん」
よし。
心を躍らせながら、いざ、ガレッツ城下町へ。




