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顔なしゴースト『ワガハイ』の、つれづれならない国境なき冒険  作者: 渋谷 恩弥斎
[第1章 第1節] ガレッツ公国>オーヌの町
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013. 旅の相棒

 ダニエさんたちに別れを告げた吾輩たちは、そのまま、オーヌの町の通りを歩いていた。


「ワガハイくんは、これからどこに?」


 となりのクーリアが、吾輩に尋ねてきた。


「あてのない旅だからね。とりあえず、おいしいものが食べられそうなところにでも足を運んでみるよ」


 クーリアも、吾輩と同じ旅人。

 彼女には彼女なりに、旅をしている理由があるのだろう。

 この町を出れば、それぞれがそれぞれの道を行く。

 だから、ここでお別れだ。


 見えてきたのは、オーヌの町から外へ抜ける簡素な門。

 旅人を飲み込み、また、旅人を吐き出す――宿場町らしい、何とも雑多な風景が広がっていた。


「ありがとう、クーリア」


 自然と、言葉が口をつく。


「短い間だったけど、君に出会えてよかったよ。名残惜しいけど、旅って、こういうものだよね。もしかしたら、またどこかでばったり出会えるかもしれない。だから、どうか元気で……あ、でも、盗賊だからって、盗みはほどほどにしないと、いろいろな――」

「何言ってるの、ワガハイくん?」


 別れのあいさつをしていた吾輩に、クーリアが首をかしげる。


「ここで、笑ってバイバイ――みたいな雰囲気を出しちゃってるけど、私、そんなつもりないよ」

「…………え?」

「私、ワガハイくんの相棒になることに決めたから――だから、よろしくね♪」

「…………」


 ものすごく一方的な宣言に、吾輩は沈黙。


「……勝手に決めないでもらえるかな? だいたい、これでも吾輩は国境なき騎士団の一員。いくら何でも、盗賊の女の子とパーティーを組むだなんて、そんなの――」

「わかったよ……残念だけど、あきらめるね、私」


 意外なほど、あっさり引いたクーリア。


 しかし、


「じゃあ仕方ないから、ワガハイくんを私の相棒にしてあげる♪」

「……同じだよね、結局」


 どうやら最初から、吾輩の意見なんて聞くつもりがなかったらしい。


「安心してよ、ワガハイくん。私、ワガハイくんのパーティーメンバーのうちは、ぜーったい、誰かから物を盗んだりしないから」

「……何か、ずるくない、それ」


 一種の脅迫だ。

 私と組まないと、盗賊活動を止めないぞ――っていう。


「はい、決まり――今日から私たち、ゴーストとハーフエルフのパーティーね♪ よろしく、よろしくぅ」

「ちょっと……」


 明確に拒否しなかった吾輩の態度を、クーリアは都合よく解釈しちゃったみたいだ。


「あ、そうそう――私、ちゃんと回収しといたよ、ワガハイくんが没収されてた剣」


 布袋からクーリアが取り出したのは、確かに、吾輩が憲兵に取り上げられた剣だった。

 何だか見覚えのある柄が飛び出していると思ったら、そういうことだったのか。


「そもそもワガハイくん、これを返してもらいたくて、あの砦に乗り込んだんだもんねぇ」


 含みのある笑顔で、クーリアが、鞘に入った剣を吾輩に差し出す。


「本当はラフマンに話をつけに行くつもりだったのに、あえて剣を返してもらう――だなんて、かっこいいよねぇ、ワガハイくんてば」

「……吾輩の剣がどこにあるのか、それがわからなかっただけだよ。ラフマンとのことは、あくまで成り行きさ」


 からかってきたクーリアから、ややばつ悪く、吾輩は剣を受け取った。


「だいたい、もう盗みはしないんじゃなかったの? 確かにこれは吾輩の持ち物だったけど、仮にも砦にある物を、こっそりと――」

「今のは、私を相棒にしてくれるってことが前提の発言だよね? わーい、やったぁ!!」

「…………」


 何だか、上手くはめられた気がする。


「ということで、二人の新たなる出発だよ、ワガハイくん」

「……わかったよ、もう」


 弾む足取りのクーリアに、力なく続いていく吾輩。


 何やかんやで強引ながら、こんな吾輩にも、どうやら旅の相棒ができたみたい。


 さぁ、次はどんな出来事が、吾輩を――いや、吾輩たちを待ち受けているのやら。

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