最終話
木陰にいると、風がいつもより涼しく感じた。火照った体を心地よく癒してくれる。
のぼせたままでいたかった。興奮が冷めていくのを止めて欲しかった。
もっと早く、ダブルスの戦い方を知っていれば、
もっと早く、考え方を変えていれば、
もっと早く、彼女の存在の大きさに気付いていれば、
後悔が波のように押し寄せる。
まだもう少しだけ、ししょーとコートに立ちたかった。
歩いて帰ってきた彼女の目はやっぱり赤かった。
家に帰ると、ししょーに一通の手紙を書いた。
何を書こうとしても涙が止まらなかった。
「ありがとう」では浅すぎて、
「ごめんね」では足りなくて、
言葉が、うまく思い浮かばなかった。
「最強ペア」と書かれた彼女の文字を見てまた涙が溢れ、書き終わったのは結局明け方になってからだった。
試合結果を知った顧問の先生は、最初こそ失望したように見えたが、後にあたし達の敗れたペアが県大会で上位に組み込んでいると知って、その相手をギリギリまで追い詰めた事を喜んでいた。
* * * * * * * *
「過去を話すのは、現在がうまくいっていない証拠」というのは誰が言ったのだろう。
長々と思い出話にお付き合いいただき、ありがとうございます。
実際、今彼女に会っても「久しぶり〜」とお互い声を掛け合った後、若干気まずいのが分かります。だって元々そんなに仲が言い訳ではないのだから。
ある意味、会わない方がいい事ってあるのかもしれません(笑)
でも最後にもう一つだけ
高校の部活の試合が行われる時、あたしは決まってラケットを小脇に抱え、帽子と、タオルと、ミルクティーを持ってベンチに向かった。
それを見て、試合を終えた別のペアの一人が言った。
「リン、試合中にそんなの飲むの〜?」
前を歩いていたししょーが振り返って言う。
「リンは集中が切れるからって、試合中は飲み物飲まないんだよ〜」
たまらず笑顔がこぼれた。
「リン、風流れてるから」夢に出てきた彼女は、試合の合間にそう言いました。
あたしも今同じことを言おうと思っていた。
そんな些細な事に満たされるのは、本当に幸せなことなのだろうと思います。
読んでいただいてありがとうございました。




