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ゴブリン退治2話

逃走ルートの確保は容易ではなかった。村人が協力的ではないのだ。数日前からゴブリンたちを簡単に撃破している勇者アルスたちのこと様がいるのになぜ逃げなくてはいけないのか?その疑問に答えることはできなかった。自分自身ゴブリンロードやゴブリンジュネラルと実際にあったことはない、全部知識だ。しかしあの臆病なゴブリンが命を捨てて街を襲っているのだ、可能性は高いと思う。しかしそれを口にして違っていた時のリスクを考えればそれを言うことはできなかった。


逃走ルートだけ確保し、村人の誘導は後回しにする。本当にゴブリンロードなどが出て逃げ遅れて死傷者が出ても仕方がないとギルドからは判断されるだろう。最善を尽くそう、本当は逃走ルートだけでなく罠なんかも作りたかったが村人は農業で大忙しで、にらまれて終わるだけだった。木の札に簡易な地図と逃走ルートを書き、一軒一軒配ることにした。あまりの手間に立ち眩みし、先ほど短い時間だが意識がなくなった。疲労で腹の虫は完全に収まり、何も言わなくなった。ただ寝たかった。


「おい、おっさん。ゴブリンの死体知らねえか?」

先ほどもめた件で態度が冷たくなったアルスの仲間が言う。

「知らないがなにかあったのか?」

「ああ、めんどくせえな。死体が一匹足らないんだよ。報告あるのに、たぶん町のやつらが持って行って死体を傷つけて遊んでいるんだと思うんだが、報酬減るし寄生虫だっているからめんどくせえんだよ」

どうやらゴブリンの死体が消えたらしい。よくある話だ、それだけゴブリンは人間から恨まれている。森のゴブリンと違い町を襲うゴブリンは女を襲うか、食糧を大量に持っていくか、子供を食べるか、凶暴性がすさまじい。

生きているゴブリンは危険だからゴブリンの死体を痛めつけているのだろう。しかし血から寄生虫が人間に感染するかもしれないし、腐ったら異臭はすさまじい。寄生虫に感染すれば都会に行き回復術者に診療してもらわなければならないだろう。寄生虫など人間の目には見えないのだから魔法で調べなければならない。そして薬草を選別し処方される。伝説の僧侶などいれば回復魔法で一発なんだろうがそんなもの伝説の中の伝説だ。


異常が起きたのは夜だった。いつも通り少数のゴブリンが町を襲いだす。

実際にゴブリンが町を襲うのを見たのは初めてだったが、アルスたちはこの異常さに気づかなかったのだろうか?ゴブリンはまず建物に投石したりする。だからこの町に来て見た時、建物が傷ついていたのだ。

人間に気づいてくださいといっているようなものだ。通常、ゴブリンはこんな行動を少数でとらない。臆病なんだぞ?


アルスたちはそれを簡単に撃破する。近づいていき、ゴブリンが人間を襲い人間の剣を奪ったのだろう錆びた剣をふるうがアルスは簡単にはじき、殺す。いつも通りの行動に村人は祝福の声を上げる。ゴブリンがあんなに簡単に殺せるなんて! 臆病なゴブリンが逃げ出さず殺されるという事実がラインハルトに衝撃を与えた。アルスたちは村人の声に酔いしれている。その異常さに全く気付いていない。

2波が来る。やはり少数で別の角度から襲ってくる。アルスたちは走って行ってそれを簡単に撃破する。

くる!ラインハルトは身構えた。

今、ゴブリンは最終確認をした。どこか遠くから見ているのだろう。

別の角度から狙ったのにアルスたちたちが走ってそれを撃破した。つまりアルスたち以外戦力がいないことが分かったのだ。アルスたちがいるにもかかわらず、ほかに戦力がないかを調べる。つまり隠し玉さえなければアルスたちだけならば倒せるとゴブリンは判断しているのだ。

けたたましい悲鳴のような雄叫びが町から音を奪った。


ゴブリンを撃退した祝福の声も、疑問の声も、すべて奪い、そいつは姿を見せた。ゴブリンロード。絶対の死の象徴と言われるそれが姿を見せたのだ。

「おいやべえぞ!」

仲間の声にアルスは全力で逃げ出した。村人を顧みることなく、全速力で逃げ出したのだ。それにあわせてアルスの仲間たちも同じように逃げ出した。先ほどの雄叫びに家から村人が出てくる。

「逃げろ!」

ラインハルトはそう叫ぶしかなかった。

おそらくこれは罠だ、でなければこんな目立つ行動をやつがとるはずがない。逃走ルートにはゴブリンが何体もいるのだろう。ゴブリンロードを気にしながら逃げる村人を物陰から襲い、その死体を食う。女子供を襲う。簡単に想像がついた。一番いいのは村人全員がゴブリンロードに向かっていくことだ、おそらくやつの後ろにはなにもいない。ゴブリンロードの横を通り過ぎるときに何人か殺されるだろうが、うまくアルスたちのほうをゴブリンロードが襲えばその横を通り逃げることができる。


しかし、遅いだろう、いくらなんでも。ゴブリンロードがまさに来ようとするその時、家から女の子が出てきた。それまで家の中で震えてでもしてたのだろう。そして物陰から見ていて近づいてくるそいつに恐怖し飛び出したのだ、最悪だ。

ラインハルトは思わず駆け出し、少女に振り下ろされたゴブリンロードの剣をはじく。もう何年も直しながら愛用してきた鉄の剣をゴブリンロードに構える。ああ、これだ。子供のころ俺はこれに憧れて冒険者になったんだ。

「逃げて!」

少女にかけるこの言葉が自分のこの世で最後の声になるのだろう。この女の子がゴブリンロードに殺され、食われている横を逃げ出せば助かったかもしれない。しかしそれはできなかった。体がそれを拒否したんだ、戦う!そう、しみついてきた冒険者魂がそれを許さなかったんだ。今日この日死んでも俺は後悔しない!

ラインハルトはゴブリンロードに切りかかった。

ゴブリンを食べました。ステータスが変わります。





状態・異常、寄生


HP65→70


MP20


力17


守10


スキル

火の息、自動回復低

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