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夏乃さんと魑魅魍魎の謎  作者: 巫 夏希
第五話 ウラシマ村と竜宮城

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第6話

「夏乃さん」


 僕は夏乃さんを引き留める。

 夏乃さんは僕の言葉を聞いて、立ち止まる。


「……信じるんですか、あの話を?」

「信じるしかないだろう。今は、話を聞けるというのなら、ついていくしか方法はない。その先に何があろうとも、な。もし少年は怖いというのであれば、家に残っているといい。最悪、日数が経過すればカツが船を寄越してくる」

「そんなことを言っているわけじゃ……!」

「じゃあ、確定だな。行くぞ、少年。一緒に竜宮城の伝説を見に行こうじゃないか」


 夏乃さんは、きっと目を輝かせているのだろう。

 ずっと一緒に居たから——何となくそんなことも解ってしまう。

 そうなった夏乃さんは止めることなど出来ない。そう思って僕は夏乃さんの後を追いかけるのだった。



◇◇◇



 村長の家にある地下へと延びる階段を下りて、暫くすると金属製の扉が目の前に見えた。

 その扉は、どこか囚人を閉じ込めておく牢獄に似ていた。


「……これは」

「まあ、中を見てもらえれば解る。この村が、私たちが、何を隠しているのか」


 そう言って、村長は鍵束を構成している鍵の一つを取り出し、扉を開ける。

 扉の向こうに広がっていたのは、赤い柱が等間隔に建てられていた広間だった。


「……これは、いったい」

「竜宮城」


 村長は端的にたった一言で答えた。


「竜宮城、だと? 竜宮城は確か、海の中に……」

「ここも海の中だろう? ここには、竜宮城があった。正確に言えば、竜宮城を封印するために、我々が居るとでも言えばいいか」

「竜宮城を封印、か。どういうことか、教えてもらおうか」

「……ここで知ったことを、すべて外に出さないということを条件として提示させてもらおう。構わないね?」

「ええ。じゃあ、こちらも条件を出させてもらおうかしら。行方不明になった彼女——椎名秋穗をこちらに五体満足で戻すこと。それなら、その条件を飲んでも構わない」

「成立だ。……それじゃあ、先ずは椎名秋穗を返してもらおうか」


 村長は夏乃さんの言葉を聞いて頷く。

 そして横にそれて、また鍵のかかった扉を開けた。

 そこには、普通の部屋が広がっていた。床はフローリング、ベッド、テーブル、椅子、クローゼット、恐らく風呂にトイレも完備しているのだろう。こじんまりとしているものの、きちんと生活できそうな部屋が広がっていた。

 そうして、その部屋にある椅子に一人の少女が腰かけていた。


「君が、椎名秋穗か?」


 夏乃さんの質問に、小さく頷く。


「助けに来た。私は君の兄の友人だよ。船が戻ってくるのは数日後になるが……、それでも家に帰ることは出来る。だから安心したまえ」


 それを聞いた少女——秋穗さんは堰が壊れたのか、両の目から涙が溢れ出した。


「……さて、それでは簡単にこの島の役割についてお話ししましょうか。そして、浦島太郎伝説と交えながら——」


 そう言って、村長は話を始めた。

 浦島太郎伝説と、この島の役割を。



 ◇◇◇



 簡単に言ってしまえば、この島は竜宮城だった。

 しかしながら、竜宮城の上にあった無人島には竜神が住んでいて、人々は崇敬の念を抱きその竜神を崇めていた。もちろん、その時にはまだ竜宮城のことなど知らなかった。

 しかし、ある時この島に住む浦島太郎という男が竜宮城を見つけてしまう。竜宮城は竜神の家と言っても過言では無い場所だった。

 しかしながら、浦島太郎はそこで竜神の妻である乙姫に恋をしてしまう。

 そして浦島太郎は乙姫を自分のものにしてしまおうと、思った。乙姫を連れ出して、上に住む自分の島へ向かおうと乙姫に伝えた。

 乙姫は当然ながらそれを拒否した。しかしながら、それでも諦め切れなかった。だから、浦島太郎は強制的に乙姫を連れ出した。

 それに怒り狂ったのは竜神だった。竜神はその島に向かい、浦島太郎から乙姫を取り戻すと、浦島太郎に呪いをかけた。

 その呪いこそが、浦島太郎から『若さ』を奪う——ということだった。よく浦島太郎の物語で知られている『玉手箱』、それはその呪いをそういうニュアンスで表現したものだった。

 竜神の怒りはそれだけに留まらなかった。

 島の住民にも呪いをかけた。その呪いは子孫代々続くものだった。その呪いこそが——。


「島から出ることを禁じる、呪いだということだ」


 ここで、話し手は村長に戻る。


「つまり、この島で生まれ育った人間は、この島から出ることを許されていない、と? それも、何百年もの間」

「ああ。そういうことだよ。正確に言えば、長くは生きられないというだけだ。実際のところ、半年程度は生きられるだろう。なぜ半年程度かというと、その呪いを信じなかった若者が島を飛び出して、全員一年未満に謎の死を遂げているからな……」


 つまり、未だに竜神の呪いは健在ということか。


「……そして、何故彼女がこの島に攫われていたか、ということなのだが。これは簡単なことだ。この島に住む人間は、この島から出ることが出来ない。結果的に、この島に住む人間だけで結婚して子供を産む必要がある。この島に居る人間を、子孫を途絶えさせないためにはそうしなければならない。しかしながら、いずれその血筋は途絶えていく。いつかは外からその血筋を入れていかねばならない。……そう考える急進派も少なくない」


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