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夏乃さんと魑魅魍魎の謎  作者: 巫 夏希
第二話 ネガヒ様の村
16/23

6/エピローグ


「ありがとうございました」


 木遊荘の入口で、僕と夏乃さんは秋菜さんから頭を下げられた。

 ……はて、僕はいったい何をしていたんだっけか?


「この度は、この村にある必ず願いが叶う人形のことを調査してくださって」

「いや、骨折り損の草臥れ儲けとはまさにこのことですね。なにせまったく見つからないんですから」


 そうだった。

 僕は夏乃さんが請け負った『依頼』とやらを手伝いに来たのだ。

 そしてそれが漸く終わり、僕たちはこの結目村を後にするのだった。


「……おい、何をぼうっとしている。行くぞ、少年」


 夏乃さんはそそくさと立ち去る。僕も秋菜さんに頭を下げて、その場を去った。



 ◇◇◇



 帰りの電車で、夏乃さんは電卓を操作していた。


「……どうしたんですか?」

「どうしたもこうしたもないわ。なんでか知らないけど予算が上手く合わないのよ。二人分往復のはずなのにまったく合わない。……まさか少年、ネコババなんて……するわけがないな」

「するわけないじゃないですか」


 僕はそう言って、紙パックのミルクティーを一口啜った。

 夏乃さんは何か考え事をしていた。


「なあ、少年」

「……どうしました?」

「『幸せ』ってどういう意味なんだろうな」


 夏乃さんはいったい何を言い出すんだ――という僕がそれを言う隙を与えずに話を続ける。


「幸せって人によってそれぞれ違うだろう? 例えば私だったら甘いものが食べられればそれで『幸せ』だと言えるし、人によっては本を読んでいる瞬間を『幸せ』と定義するかもしれない。それは人によってそれぞれだしそれをパラメータ化しようがない」

「……何を言いたいんですか?」


 夏乃さんはそこまで言ってすっきりしたのか、或いは続きが思いつかなかったのか、車窓に目線を向けた。


「幸せって、不運なことがあるから幸せだと言えるんじゃないですかね」

「ん?」

「だってそうじゃないですか。幸せなことが続けば人はそれを『幸せ』なんて定義しませんよ。だってずっと幸せが続いているのだから、それが普通だと思ってしまう。けれど、不運なことが起きてからの幸せは幸せだと認識出来ますよね。つまり、そういう事なんじゃないですかね」


 僕はそれに、ところでどうしてこんな話題を? と付け足した。

 夏乃さんは「少し気になっただけだ」と言った。

 車内は再びモータの駆動音に包まれた。




第二話

ネガヒ様の村 終


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