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第一話 撃退部隊、初めてのお仕事。

魔王に召喚されたマモル達。

彼らの初仕事、それは魔王の城に攻めて来た勇者の撃退。

だが戦いのさなかで、彼が恐れていた事態が起ってしまう。

 さてと…魔王からの仕事の依頼は、勇者を追い払う。

 突然、異世界に連れてこられたわけだが。

 武器は持ってきていない、最悪なパターン。


「状況は圧倒的に不利、かつ武装は絶望的…つかなんだよ竹槍って!?魔王軍ならもう少しマシなの無いのか!?魔剣とかよぉ!?」

「我慢してちょうだい。あの魔王、争い事が嫌いで武器なんて置いていないらしいんだから」


 だったら今まで、どうやって追い払ってたんだよ。


「それに火薬があっただけマシよ、おかげでメアリーお手製のダイナマイトが出来上がったんだから…矢にくくりつければ、多少はマシになるでしょ」


 隊長は良いよな…色々な武術に精通していて。

 俺が使えるのは、せいぜい銃器ぐらい。

 それも、扱い易いハンドガンやサブマシンガン程度。

 肝心のそれすらも全部を、元の世界に置いて来ちまった。

 今こうして手に握られている武器も、急遽間に合わせで作られた竹槍一本。

 あとはメアリーが得意の簡易爆弾だ、ハズレを引くとその場で爆発を起こす。

 その代り、しっかりしたヤツだと、相手を一気に吹き飛ばせる。

 まさしくこれぞ、ハイリスク・ハイリターンだ。


「来たわよ。全員、いい顔をしてるわね…幾たびの歴戦を勝ち抜いてきた者達の顔よ」


 本当だ…全員が歴戦の勇者顔でこちらに向かってくる。

 全部で四名、男二人に、女が二人か。

 …美男美女揃いかよ…むかつく。

 よりにもよって、剣士とパラディン、魔法使いに…なんだあれ?

 若干一名おかしい女が混じってますけど?

 明らかに野生から来ました的な女がいますけど?


「よく聞け魔王軍!我ら勇者が!貴様を倒して、この世界に平和を取り戻す!」


 はいはい、簡単に言うと魔王死ねってことでいいんだな。

 それにしても、本当に美女揃いだな…魔法使いに関しては巨乳かよ。


 ああいうカッコいい連中は、色々な所で有名人なんだろうな。

 街に行けば優遇溶かされて、チヤホヤされてるんだろなぁ。


「連中…爆発とかしねぇかな」


 あ…今メアリーが爆弾もって突撃した。


「よく聞いて、作戦としては、まず私がこの弓で相手を攪乱させるから、マモルはあの魔法使いをお願い、そしてメアリーはあの鎧を着た…メアリー?」

「アイツなら今突撃したけど…やっべ!止めるの忘れてた!」


 敵に対しての苛立ちで完全に忘れてた、アイツ興奮すると見境なく爆弾投げ飛ばすんだ。

 一度それでこっちも死にかけたし、アイツも自爆しかけた。


「何してるの!?早くあの子を止めて!」


 言われなくても止めますよ!

 もしこんな所で自爆でもされてみろ、被害は爆弾をもったこちらにも来るんだ。

 とりあえずは追いつ…かないよな、妨害入るよな。

 相手は魔法使いか、隊長から指示された相手だから構わないが。

 乳揺れすぎだろ、気が散って仕方ない。


「この聖光の魔術師、ライム・ガルッシュがお相手します」


 あれって…重くないのか?

 もしかして、重たいから魔法使いになったのか?

 俺の勝手なイメージだが、武道家とかだと邪魔になりそうな気がする。

 ストレートとか出した時、揺れた反動でズレたりしないのか?

 …ああ、また悪い癖が出た。

 俺、深く考え込む癖があるんだよな。

 そのせいで、何度も危ない目に遭った。

 相手も何か唱え始めてるし…とりあえず、俺も突撃するか。

 適当に、突く!


「ちょ!?魔術師が詠唱してるときに普通に突き入れる!?馬鹿じゃないの!?常識的に考えなさいよ!」


 なんか攻撃したら、ボロクソに言われたんだけど。

 え?これって俺が悪いの?

 戦いだよね?命がけの戦いで間違いないよね?

 俺、何か間違ったことしたのか?


「どうしたんだライム?」

「いや、私が詠唱をしてたら、いきなり竹槍で突いてきたの、見てよこれ、せっかくのマントが台無し」


 おいおいおい、剣士まで来ちゃったよ。

 二対一とか最悪だぞ、てか相手明らかに強そうなんですけど。


「ここは俺達二人で戦おう。俺が相手をしている間に、詠唱を終わらせるんだ…絶対に勝てる」

「ジーク…分った、貴方を信じる」


 何勝手に恋愛劇広げてんだ、いい加減にしろ。

 こっちが非常に惨めな気分になるだろうが、爆弾投げ込んでやろうかな。

 よし、爆弾投げ込んでやろう、リア充死すべし。


「仲の良いお二人に、俺からの些細なプレゼントをやるよ…リア充爆発しろぉ!」


 俺は全力で爆弾を投げつけた。

 もちろん導火線に火も付けた…でないと爆発しないからだ。

 だがここまで運が悪いというのも酷い話だ。

 爆弾馬鹿(メアリー)から渡された爆弾は、見事にハズレ枠だったわけか。

 コイツはブチ切れたぜ…メアリー。


「何も起らないが…馬鹿なのか?」

「…少し失礼。メアリィィィ!テメェ不慮品寄越しやがったな!?しっかりと爆発するヤツ寄越せやボケェ!」


 どうしてくれんだよ!?思いっきり赤っ恥掻いたじゃねぇか!?

 あのクソアマ!絶対に許すまじ!


「マモル、マモル、はいこれ」


 め…メアリー、いつから俺の後ろに…。

 この時、俺は気が抜けていた。

 突如背後に現れた彼女に対して、予想だにもしていないことだからだ。

 そして…この状況で一番注意しないといけない事が、一つだけある。

 彼女の手に、制御装置が解除された爆弾が握られているか、いないか。

 今の現状…思いっきり爆発寸前の爆弾が目の前に突き出されている。

 そこへまるで追い打ちでも掛けるかのような、メアリー渾身の笑顔である。


「皆で楽しく地獄旅行!」

「馬鹿かお前!?自爆してどうするんだ!?俺を巻き込むんじゃねぇよ!」


 逃げるには遅すぎた、遅すぎたんだ。

 メアリー(こいつ)は最初から、こうする事を選択していたのだろうか?

 天才と馬鹿は紙一重、昔の人は良く言った物だ。

 俺の仲間のメアリーは、天才であり狂人。

 彼女が天才であることは認める、俺には絶対に理解出来ない方程式を簡単に解いちまうんだからな。

 ただ単に、俺自身が頭悪いだけかもしれないが。

 だが天才だからと言って…全てが優秀と言う訳じゃない。

 彼女は天才ではあるが、同時にとんでもない狂人である。

 自分に対しての被害なんて考えていない、むしろ爆発すればなんでもOKという考えでだろう。


「なんだそれは!?まさか爆弾か!?ライム逃げろ!ここで倒される訳には行かない!」

「いやよジーク!死ぬなら一緒に…私、実は前から」


 やめろよ!フラグ立てんな!

 もしかしたらこの爆弾もハズレかもしれないんだぞ!

 そんなフラグを立てられたら…爆発しちまうだろ…。

 …まぁ良いか、どうせ死ぬなら。


「言わせるか!メアリー!死ぬならもう一発ドカーンと決めちまえ!」

「アイアイサー!オッパイ爆弾機動!」


 妙に胸が膨らんでると思ってたが…やっぱり爆弾詰めてやがったか。

 だとしてもだ…爆弾の数は合計四つ。

 俺が投げたヤツ一つに…メアリーの手と乳に三つがある。

 お前等リア充爆破成功だな。


「マモル!沢山の悔いあり!」

「メアリー!一片の破片無し!」


 俺達は四人は、その場で爆発した。

 これが俺でなければ一つ言いたいセリフがある。

 そう…汚ぇ花火だ。



 人は死ぬと何処へ行くのだろうか?

 天国?それとも地獄?行けるととしたら天国がいいな。


「イヒヒ、顔はありだけど、胸が残念だな」


 …なんだ?ここは天国じゃないのか?


「さぁて、生き返らせてあげたんだから…これぐらいの事はゆるされるよね?」

「許されるわけねぇだろ?この変態がぁ!」


 ゲスい声が聞こえたから目を覚ましてみたが、正解だったな。

 危うくメアリーに、魔の手が掛かるとこだった。

 とりあえず、ここは天国じゃないのは確かなようだ。

 この変態の恰好からして、神父みたいなんだが。

 思わず回し蹴りを入れちまった…俺の蹴りって意外と強いんだな。

 試した事がなかったらしらなかった。


「今、この状況的に考えると…俺はかなりヤバい状況にあるかもしれないな」


 だって神父を、思いっきり蹴飛ばしたら。

 教会のベンチも壊しちゃったし、誰かこない間にずらがらないと。


「神父様?どうかなされましたか?」


 やべぇ…他に人が居たよ。

 神父を蹴り飛ばした男、犯罪者以外の何者にも見えない状況。

 急いで言い訳を考えないと、だが神父のゲス行動を信じて貰えるのか?

 ここで大声でも出されでもしたら、誰かが来て一発アウトだ。


「さては神父様、また迷える子羊に手を出されたのですか?ん?おやおや、これは珍しい子羊が来たものです」


 なんかピエロが出てきたんだけど。

 ピエロだよな?いや、どうみてもピエロだ。

 てかこの世界の女は皆、胸を強調する風習でもあるのか?

 あの魔法使いと言い、このピエロ女と言い…胸を強調するのは家のところの隊長で十分だ!


「火薬の香りに、お二人の周りを漂う魔力のオーラ…間違いなくこれは魔王軍所属の証…ですが見たところ、戦力的にはかなりの力不足に思えますが…」

「なんでそこまでハッキリと分るんだ?占い師とかといいうわけでもなさそうだが」


 俺の言葉に対して、彼女(ピエロ)は不適な笑みを浮かべ始めた。


「そうですね、ではまず、遅れた自己紹介から。私はこの教会に取り憑いている悪魔、ヘレン・C・パリアッチョ、ちなみにCの部分は人によってクルーンだとか、クラウンと呼ぶ方もいます」


 クラウンって、結局ピエロかよ!

 だが今この女、自分の事を悪魔と言ったか?

 もし本当に悪魔だとしたら、どうして教会に取り憑いているんだ。

 あと悪魔なら魔王について何か知ってるかもしれない。


「アンタが悪魔と言う事なら、俺達は死んだって事なのか?さっきそこの神父(変態)が蘇らせたとか言ってたが」

「そうですね、貴方達は確かに一度死という物に囚われてしまいました…というのは、一般人に対しての言葉で、基本的に勇者や魔王軍兵は死んだらこうして蘇生されます、パチパチパチ」


 一般人は普通に死んで?勇者とかは蘇生される?

 いやいやいや、そんな馬鹿な話があるわけがない。

 普通に死は死だ、簡単に蘇生…ありえるかも。

 考えたら俺達召喚されたじゃん!?もう既におかしな事になってるじゃん!?

 ああ、段々頭が痛くなってきた。

 死んだら教会で蘇生、もう有名なゲームと同じだろ!

 異世界丸パクリか!?そんなんで異世界は成立してていいのか!?


「いいんですよ、異世界と元の世界に関わりなんてないんですから」


 おいコラ、鼻をほじりながら言うなぁ、お前一応女だろ。

 ピエロの鼻だからか、思いっきり鼻が広がってるぞ。

 あと地味に人の心を読むなぁ!


「心の中でも叫ばないでくださいよ、こっちは相手の心の声が聞きたくなくても聞こえてくる種族なんですよ、おかげで夜も寝るのに苦労してるのに」


 心の声が聞こえる悪魔…何も考えられねぇ!

 てことは何?俺が少しでもいやらしい事を考えたら、全部筒抜けって事?

 そんな事あんまりだ、酷すぎる。

 俺のプライベートから、何も考える事も許されないなんて。

 じゃあ、俺が隊長のおっぱいとか考える事も出来ない。

 唯一の…俺の唯一の楽しみを返せぇ!


「と叫ばれましても、私の耳には全部聞こえて居るわけで、貴方が私の胸が気になっているのも知っていますよ、まぁそれは置いといて、迎えをお呼びしますね」


 あ…迎え呼んでくれるんだ、意外と優しい。

 迎えが来ることも分った事だ、次にやるべき事は。

 メアリーをたたき起こすわけなんだが、起きてくれるだろうか。

 コイツの事だ、死ぬ事がないと知ったら、自爆人生を堪能するだろうな。

 あと死んでない事が分ったから、隊長からの説教も来そうだ。

 つかこういう大事な事は先に説明しろよ、馬鹿魔王。


「確かに、あの魔王が馬鹿だと言う事は同感です。ここだけの話ですが、裏ではお馬鹿大魔王で通ってますから」

「あの魔王、それだけ言われるって事は、相当馬鹿なんだな」

「ダイナマイト覚醒ィ!アインシュタインの頭には!キャンディーと夢で一杯なのさ!」


 びっくりした!いきなり覚醒するな!


「ここどこ?…マモルの頭が爆発してない!?私の頭も爆発してない!?アフロ失敗!?」

「お前…まさかそれが目的で…俺事自爆したのか?たかがアフロになりたいが為にか!?」


 なんでそこまで目を輝かせてるんだよ。

 アフロにそこまで魅力を感じるのか!?お前のサラサラした金髪は気に入らないってか!?

 そのツインテール毟り取るぞ!?


「本人はアフロ以外に、勇者達を倒す事も計算に入れていたみたいですよ、ただ…うっ、すみません、気持ち悪くなってしまいました」


 メアリーの心の声か…聞くのも恐ろしいな。

 コイツの思考回路は一切読めない、むしろ読む事が出来るのかすら危うい。


「二人共!無事だったのね!怪我は!?体に異常はない!?マモルはお○ん○んはあるわね!?メアリーの胸が減ってるわ!?」


 メアリーの胸は元々無い、まさか爆弾詰め込んでたのに気づいてないのか?

 ないだろうな…隊長だからな、ありえる。

 あと俺の息子は問題無いはずだ。

 もし無かったとしたら、既に焦って冷静差を保ってない。

 …無事だよな?なんだか心配になってきた。

 ちょっと確認してこよう…大丈夫、きっと大丈夫。


「マモル?一体どこに行くの?せっかく無事だったのだから、一緒にお祝いをしましょ?」

「お祝い!お祝い!クラッカーでドガガガ!ズドドーン!」


 察して!お願いだから察して!

 今凄く心配なの!確認がしたいの!怖いのぉ!

 離してくれぇ!

 せめて、せめて確認だけでも!

 結局、俺は確認する事も出来ずに城へと連れ戻された。



 酷い目にあった…いや、本当に酷い目にだ。

 結局しろで確認したら…一つたりなかったわけだが…あんまりだ。

 唯一の救いと言えるのは、ヘレンがしっかりと保管してくれていたことだろう。

 ただピンポンの球代わりにされたのは許せないが、無事に戻ったことが大事だ。


「アハハハハハ!まさかマモルの○玉を残して行っちゃうなんてね、本当にごめんなさいね」

「笑い事じゃねぇよ!あのピエロ!人の体の一部をなんだと思ってんだよ!?普通ピンポンするか!?悪魔だからか!?悪魔はみんなそんな下品な遊びするのか!?」

「金○爆弾制作開始!とりあえず寄越せ!」


 お前ぇ!俺の苦労を聞いてなかったのか!?

 自分の体の一部が無くなったんだよ!酷い扱いを受けたりもしてたんだよ!

 分らないだろうな!ないもんな!


「うがぁ!離せ玉なし!代わりに爆弾詰めてろ!」

「うるせぇぞ!CDケースみたいな胸してるくせによ!お前こそ胸に爆弾でも詰めてろ!んで敵の前で自爆しろ!」

「ちょっと二人共、食事の場で喧嘩をしないの、マモルもチョーキングを解きなさい」


 くそ…いつか決着を付けてやるからな。

 とりあえずは、魔王による豪華な食事を…。


「テメェ!いい加減にしろ!俺の分を食いやがって!俺まだ一口も食ってねぇんだぞ!しかも俺に爆弾を喰えってか!?お前の頭の中では爆弾はご馳走か何かか!?」

「美味であった!」


 何が美味であっただ!俺の分何もねぇじゃねぇか。

 特に腹が立つのが、爆弾に火薬をちゃんと添えてるところだ!

 高級料理の代りの爆弾、俺が何をしたんだよ。

 美味かったのか?そんなに美味かったのか?

 超幸せそうな顔してる…俺の分も食ってるもんな。

 隊長なんて、恋した乙女みたいな顔してる。


「これは全て、私の城で育てた物を使用しているんだ」

「とても良い物ばかりね、食材全てが濃厚で、美味しい以外の言葉が見つからないわ」


 確かにそうかもしれないな。

 あのトマト嫌いのメアリーですら、進んでトマトらしき物を食るんだからな。

 俺、食べてないから味が分らないが。

 ただでさえ見るだけで発狂するメアリーだ、もしかするとトマトとして認識すらしていないのかもしれない。


「このレベルなら、お店に出す事だって出来るわ」

「実は既にやっているんだ。使いの者を街へ行かせて、出荷させている、ある意味それで生計を立てているんだ」


 魔王が農家をするか、イメージ湧かねぇ。


「魔王というのは、名前から悪いイメージを持つかもしれない、だが私は違う!私は…私はこの世界を平和にしたい!争い事のない、人々の笑顔溢れる世界に」


 人々の…笑顔溢れる世界か。

 そんな時が本当に、訪れるのだろうか。

 正直、この世界の事なんてさっぱりだ。

 状況とか、どういう風に荒れているだとか、全く知らない。

 唯一言えることは、この魔王は本気で言っているだろうと、信じられる事。

 これがカリスマと言う物なのだろうか、あるいは彼の魔力なのかもしれない。

 なんたって魔王らしいからな。


「世界平和を願う魔王なんて、なんだか矛盾してるわね」

「確かに…その事は私自身も、理解はしている…だとしてもだ、私は争い事が嫌いなんだ…争い事がは、悲劇しか生まない」


 魔王の顔が徐々に暗くなってきたな。

 何か嫌な事を思い出したか。

 確かに、魔王の言う事には一理ある。

 争い事は悲劇しか生まない、まさにその通り。

 俺だってガキの頃の記憶が無い、理由は争いによるものだと隊長から教えられた。

 メアリーだってそうだ、彼女は争いで親を失った挙げ句に、色々な地獄を見てきた。

 隊長だって、かつては本当の争いの場で仕事をしていた。

 今の俺達と出会う前に、生死を賭けた戦いの場に、狩り出される。


「世界を征服するのが魔王だという常識が、いつの間にか、逆になっていたってか…別に悪いことじゃない、魔王(アンタ)がそれで良いなら、貫くしかないわけだ」

「その通りよマモル…自分の意思を貫く事はとても大切な事であり、己を一番強くするためのスパイスになる…でも時には、それすらも捨てる覚悟を持ち合わせるのも大切な事よ」


 ここまで真面目な顔をした隊長、見るのはいつ以来だ。

 昔、隊長は一時期ずっとあの顔をしていた、

 ただ俺達の前では、笑顔を作るようにしていたのは確かだった。

 未だにハッキリと覚えてる、あの頃に感じた物は、恐怖だったと。


「捨てる覚悟…私には到底出来そうにないことだ…だからこそ、君たちを雇う事にしたんだ…たとえ魔王でも、私は落ちこぼれだ」

「落ちこぼれなら落ちこぼれなりに、全力を尽くしなさい…私が聞きたいのは、貴方自身の覚悟なの、私達傭兵は、貴方の為に命を賭けるのと同じなの!」


 俺は急いで、興奮する隊長を止めに入った。

 このままだと、隊長が魔王を殺しそうな勢いだからだ。

 魔王既に涙目だし、豆腐メンタル過ぎるだろ。

 いまこの状況での救いと言えば、腹が膨れたメアリーが寝てるところだ。

 さてと…隊長の怒りはどれくらいで沈んでくれるだろうか。

 正直言うと、俺このままでも良いかもしれない。


「離しなさいマモル!このヘタレ男の根性を叩き直してやるわ!」


 逃げろ魔王!ここは俺が引き受ける。


「落ち着け隊長!少しは冷静になったらどうだ!?いつもと様子が変だぞ!?」

「当たり前でしょ!危うく貴方達を失いかけたのよ!私の大切な家族を…それを…それを…」


 俺達の事を、家族と思ってくれていたのか。

 嬉しいのか…目から涙が流れてきた。

 隊長は、俺達の事を…ちゃんと家族と思ってくれていた。

 やばい…あまりの嬉しさに、手の力が緩んで。

 あれ?なんで俺、宙を浮いてるんだ?

 なんかスゲぇ、スローモーションに見える。

 もしかして俺…このままバク転とか出来るんじゃね?

 バク転を上手く決めたら、超カッコいいじゃん、

 おっし、決めよ、バク転決め…ダメだ!魔王が目の前に居る!

 今一応は回転してるが、理由が判明した。

 隊長が俺を投げ飛ばしたからだ…なんで投げ飛ばした!?


「おっと…凄い勢いで飛んで来たが、怪我とかはしてないかい?」

「してねぇけどよぉ…」


 気まずい!この状況は気まずい!

 ここは普通に避けろよ、どうして抱き上げてるんだよ。

 恥ずかしいだろうが!勘違いされるような状況を作るな!

 あとイケメンだから余計に腹立つんだよ!なんだそのさわやかスマイル!

 顔面にストレート叩き込んで良いか?いやむしろ叩き込ませろ。


「退きなさいマモル。怪我をしたくないならね」

「了解です!それじゃ、幸運を祈ってるぜ、魔王」

「ちょっと待ってくれ!私は戦う気なんて無いぞ!?分った!報酬を倍額にする!それで許してくれ!」


 あ…隊長の顔が落ち着き始めた。


「報酬を倍額にする…なら今回は許してあげる、でも次はないわよ、あと明日は武器を仕入れに行くから、軍資金を用意しておいてね」


 なんとか隊長の怒りが収まったか、これで一件落着と行ったところだな。

 だが、まさか初日から死ぬ羽目になるなんて。

 原因はあの馬鹿だけどよ、武器も全然用意してないのには困ったな。

 隊長は明日仕入れに行くと言っていたが、この世界に銃なんてものは存在しないだろうし。

 あるとしても、大抵は剣とかだろうな。

 仕入れた後にでも、隊長から指導して貰う必要がありそうだ。


「お帰りなさ~い!お風呂になさいます?それともご飯にします?それとも、玉取ります?」


 俺の部屋にピエロがいる…ああ、こいつヘレンか。

 つか最後の玉取るって正気か!?

 人の体をなんだと思ってんだ!?

 着脱可能みたいな便利アイテムじゃねぇんだぞ!

 俺の玉が取り外し可能なら、お前のデカい乳も着脱可能なんだろな!?


「まぁ冗談はここまでにしておいて、本題に入りますが…近いうちにあの勇者達がまた攻めてくるお話です」

「あの勇者って、今日爆破した連中の事か?」


 ヘレンの話によると、あの勇者達はそこまで遠くない教会で復活をしたらしい。

 問題はここからで、勇者達はやはり名を上げた者達であること。

 腕も立つ上に、装備もかなり良い物を使っている。

 何より厄介なのが、更に強力な装備でここへ向かっている事実。

 今回の戦いによるメアリー特製爆弾の破壊力。

 そこへプラスしての、隊長の射撃術を知られてしまった。

 つまりは、対策を練られていると言う事。


「たったそれだけのお話でした。ではでは、またのご利用をお待ちしておりますね、あとこれ、私の姉妹が経営をしているお店の地図です、良い出会いを」


 彼女はそう言うと、窓から飛び降りて行った。

 いきなり窓から飛び降りるからびっくりしたが、悪魔だから問題無いか。

 さぁ、明日は忙しくなるぞ。

 ただでさえ、あの勇者達に勝てなかった。

 ならば…もっと良い武器を用意しないと。

死んでも教会にて復活が出来る事を知った三人。

次回、マモル達が武器を仕入れに行くが、ここで思わぬ出来事が。


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