年の差ツインソウル8
【居酒屋】
「5年よ、5年。5年もかかったのよ」
「まあさ、離婚成立して良かったじゃないか」
これであの夫と縁が切れる。
(これで、サッパリしたわよ。ああ、長かった)
「あんた、ちゃんと考えて決めた?後悔しない?」
5年もの間、考えて考えた末の離婚だ。
これ以上何を考えろと言うのだ。
誰が後悔なんかするもんか、と双葉は思った。
「とにかく今日は呑もう。離婚成立のお祝いだ」
「何がお祝いよ。若葉ちゃんはどうするのよ」
どうするもこうするも、若葉はちゃんと育ってる。
もう、今年21才になる。
大きなお世話だ、と思った。
若葉が21才になるという事は、双葉は46才になる。
宏二は28才だ。
2人の関係は、相変わらず続いていた。
彼は今も、ひどくヤキモチを妬いて、有る事無い事想像してキレて崩壊する。
【宏二の部屋】
「私、もう行かなきゃ」
「行くなよ」
「そうはいかないわよ」
「店なんか辞めちゃえよ」
「辞められないでしょう」
「オーナーの事好きなのか!?」
(また始まった。ただの同級生だ、って何度言ったらわかるのよ。あーもー面倒くさい男)
双葉は宏二を振り切って仕事に出かけた。
宏二は、あの彼女と別れていなかった。
そして、他にも女性の影が…
(まるで盛りのついた猫だわね、いや、万年繁殖期の獣)
(暴力的な男と離婚して、女癖の悪い男と結婚する?)
いやいやごめんだ。
と、双葉は思った。
(宏二君も28才。そろそろ結婚しないとね…)
ツインソウルだけれど、その時が来たら彼女に譲る気だった。
(譲る?割り込んだのは私なのに…)
そんな事より、最近若葉が母の双葉に恋人が居る事に気付いているのでは?
時々ドキッとするような事を言う。
【双葉のアパート】
「お母さん、あんまりオバサンみたいなカッコしないでよ。もう離婚したんだから、誰と付き合っても自由なんだからね」
気付いているのだろうか?
宏二との事…
(女の勘?)
ツインソウルは、魂の学びが進み中年になってから出会う事が多い。
年の差ツインソウルも多い。
それにしても、宏二の魂は…
あれでちゃんと学べているのだろうか?
と思った。
ちゃんと学べていなければ、同じ学びを繰り返す。
もう同じ事はたくさんだ。
(私だけでもしっかり学ぼう。次の転生でまたこんなの嫌だし…また会うの?まあ、いつかは会うんでしょうね、ツインソウルなんだから)
それでも最近の双葉は、ツインソウルだのソウルメイトだのに興味が薄れて来ていた。
(もう、これ以上彼と学ぶ必要無いのかもね)
それに、それほど縁の深い魂ではないけれど、同じソウルグループの夫の魂。
(ああ嫌だ。あの魂とは2度と会いたくないわね)
春になった。
宏二の彼女が妊娠した。
相談した相手が、なんと双葉。
「えー?大変。今どこに居るの?」
「駅です」
「すぐ行くから待ってて」
【ファミレス】
「栄養のバランスの良い物を食べなさいね」
「はい」
まだ産むとは決まっていないようだけど…
それでも1人の体ではない彼女の事を気遣う双葉だった。
彼女は妊娠した事を、まだ誰にも言えないでいた。
「結婚してくれるかわからないし、赤ちゃんの事喜んでくれなかったら悲しいから…」
子供が出来たら逃げる男なんて、いくらでも居る。
彼女は子供を産みたいようだ。
それならまず宏二に話さなければ…
「言って逃げ出すような男の子供なら、産んだらかわいそうよ。絶対逃がさないんだから」
自分の立場をすっかり忘れて。人の良い双葉オバサンである。
この2人が何故か仲良くなっていた事は、宏二も知っていた。
【宏二のアパート】
「え?それで俺にどうしろって言うんだよ?」
「何よ、その言い草は」
「双葉は、俺がこいつと結婚して平気なのかよ?」
(平気かと聞かれれば、それは平気ではないけど…今はね)
それでも、いつかは来ると思っていたその時が、今なのかも知れない。
と思った。
双葉の横で彼女が泣いている。
「ほらほら、お母さんが泣くと、赤ちゃんはわかるのよ。胎教に良くないから、笑顔でね」
「はい」
「ママを不安にさせるパパは、悪いパパですねー」
「何がパパだよ」
「ああもう!貴方の子供でしょう?いい加減腹くくりなさいよ!」
ゴチャゴチャと言っては、のらりくらり逃げる宏二に、双葉はブチ切れた。
そう言えば双葉のお腹に若葉が出来た時の夫の態度も、喜ぶと言うより戸惑いだった。
(子供が出来たって言ったら、喜んでくれる男が良いわよね)
本当にどいつもこいつも、男って奴は、どうしてこうなのだろう?
(する事だけして子供が出来たらこのいい加減な態度は許せないわよ。ペンギンのオスだって、飲まず食わずで子育て手伝うのよ。それなのに人間のオスときたら、全く!)
と、双葉は腹が立った。
そして、宏二にたっぷりとお説教した。
もう、お母さんみたいでも、うるさいオバサンでも結構と思った。
それから彼女は親に妊娠を告げて、親同士の話し合いで2人は結婚する事になった。
【ファミレス】
「双葉さんにも出席してもらいたいのに…」
「さすがにそれは…遠慮した方が良いでしょう」
いくら仲良くしているとは言え、三角関係の当事者だ。
いや、多角関係か…
そんなわけで、結婚式の出席は遠慮した。
「式には出なくても、幸せ祈ってるわよ」
(私が言うのも変か…でも本当に幸せになってほしい。この子と赤ちゃん、そして彼にも)
【双葉のアパート】
(今頃2人の結婚式始まってるわね。これで良かったのよ。良いお父さんになってよね)
何だか吹っ切れた感じの双葉。
「お母さん、良かったんじゃない?」
「何が?」
「彼と巡り会ったおかげで、お父さんと離婚出来たんだし」
そう、若葉は宏二との事を知っていた。
それにしてもいつから知っていたのだろう?
「年下の彼のおかげで、お母さん若々しくなって、綺麗になったもん、それだけで良いじゃない」
「それもそうね」
このツインソウルの今生の学びはこれで終わったようだ。
(もう、ツインソウルだとか何とかって、どうでも良いわ)
「ねえ、若葉。引っ越ししよう」
「良いよ」
もう元夫や宏二の住む沿線に居るのは嫌だと思った。
思い立ったが吉日、すぐにアパートを探して引っ越しを決めた。
【双葉の新居】
引っ越しのトラックから荷物が運ばれて行く。
ここで今日から若葉と2人で暮らすのだ。
(若葉もいつかはここを出て行っちゃうんだろうけど、まあ、その時はその時だね)
三津谷の店も辞めて、他で働き始めた。
そして、あの上辺だけの親友の友美ともお別れだ。
もう嫌味を言われるのもたくさんだ。
「あー、スッキリしたー」
何もかもスッキリして清々しい気分の双葉だった。
ーLa Finー
あとがき
最後までお読みくださってありがとうございました。
本当に感謝の気持ちで一杯です。
この作品は僕にとって無謀な挑戦でした。
僕が描く物語は、いつも鈍感で恋に奥手な主人公ばかりです。
優しいだけが取り柄の男の子。
みんな同じようになってしまうので、違う物を書いてみようと思ったのがこれ。
主人公が僕の分身ではないので、キャラ作りに苦労しました。
育った環境から言葉使いまで、変えなければいけません。
今迄「僕ならこう言うな」で書いていた所を「僕じゃないから…」
僕の作品は、出来上がったら悪役が1人も居なかった(^◇^;)なんて事が良く有ります。
周りにそういう人が居なかったから良くわからなくて…
悪役を作るのはとても難しいです。
しかし!
この作品には、ちょっと意地悪な同級生の女性を登場させてみました。
はあ…どのキャラも作るのが大変でした。
楽に書けたのは、同級生で居酒屋のマスターの三津谷君ぐらい。
そんなわけで、展開が早く、完結してしまいましたが、お読みくださってありがとうございました。
もう無謀な挑戦はやめます…たぶん(^^;;
僕の作品は、みんなジレジレの純愛になってしまうけれど、それならそれでも良いかな。
と思うようになりました。
お付き合いくださってありがとうごさいました。
感謝を込めて。
(この作品は、他のサイトで発表した物です)
2016.1.9. 大輝




