年の差ツインソウル
あの日から宏二とは会っていない。
メールも来ない。
会えない時間が、途轍もなく長い時のように感じていた。
カレンダーを見る双葉。
(この前会ったのは、11月の27日…今日は、12月10日…)
(こっちからメールしてみる?それとも電話?)
いやいや、と激しく首を横に振った。
(そうだ、ゲーム。ゲームの中でなら、宏二君と会える)
(でも、若い女の子だと思われてるけど…)
それでも彼とチャット出来るなら、それだけで良かった。
パソコンで「ドラゴン王国」にアクセスした。
グラフィックがロードされる時間ももどかしかった。
(早く早く。本当、遅いんだから)
彼がインしているかわからないけど、とにかくプレーした。
ゲームの進行そっちのけで宏二のキャラ、マックスを探した。
「あ、でも…」
そのキャラが本当にあの宏二なのか、確かめていなかった。
(バカみたい…何やってんだろ?私…)
カレンダーに目をやる。
(そろそろ若葉のクリスマスプレゼントを買いに行かなきゃ)
駅から電車に乗って、3つ目で降りた。
宏二が住んでいると思われるあの駅だ。
(また、来ちゃった…だって、ここまで来ないとデパート無いんだもん)
【デパート】
店内は、クリスマスの飾り付けがされていて、各店舗では、クリスマスコーナーが有ったり、華やいでいた。
(ウキウキするわね。やっぱり娘の事を考えてる時が一番幸せだわ)
若葉の事を考えている時だけは、一瞬でも宏二の事は忘れていた。
(小学生までは、私の買って来た服を素直に着てくれてたけど…)
若葉も15才だ。
ファッションにもうるさくなって来て、親が選んだ物を喜んで着なくなっている。
それでも、プレゼントなら双葉が選べる。
それが嬉しかった。
つい、子供服を見てしまう。
(わー可愛い。若葉もこんな小ちゃいの着てたのよねー)
婦人服売り場に行った。
冬物のコートを買った。
(「ダサい」とか言って着てくれなかったらどうしよう…?)
(まっ、その時は私が着れば良いだけよ。…ちょっと派手だけど)
紳士服売り場を通りかかった。
夫の物は最初から買うつもりは無かった。
でも、何と無くエスカレーターを降りてみた。
若い男性に似合いそうなダウン。
買ってしまった。
(会えるかわからないけど…宏二君のクリスマスプレゼント)
(でも、どこにしまっとこう?まあ、見つかったら「お父さんの」って言えば良いか…)
夫の物にしては、若い感じだった。
(あの人には似合わないわね…宏二君に会えなかったら、三津谷にでもあげれば良いっか)
駅から電車に乗った。
(今日は合わなかったな…)
でも、あんな事になって、どんな顔して会えば良いのだろう?
と、思ったりもした。
【三枝家】
家に帰ると、プレゼントの隠し場所を探した。
見つかった時の言い訳は考えていたけど、それでもドキドキした。
(考えても仕方ないわよ。買っちゃったんだもん)
ケーキも予約して有るし、当日は料理を作るだけだ。
若葉が喜んでくれれば、それで良い。
双葉は、そう思った。
(高校生になったら、友達とパーティーとか言って、家でやらなくなるだろうな…今年が最後かも?)
若葉の事を考えながらも、宏二へのプレゼントが気になっていた。
(どうやって渡そう…?)
プレゼントは買ってしまったけれど、あんな事になってしまって、こちらから連絡するわけにもいかない。
(だいたい、私…もう一度会う気?すっかり忘れてたけど、不倫したのよね?しちゃったのよ、この私が)
あの日の事が、まだ現実だと思えないでいた。
まるで、どこか別の世界の出来事のように思えた。
(友美には言えない。また何て言われるかわかんないもん)
ただ縁の深い魂が、肉体を持って地上で巡り会い愛し合っただけ。
たまたま今回の転生では、男性が18才年下だっただけ。
同じ時代に一緒に転生しているツインソウルは、それまですれ違っていても、時期が来れば巡り会う。
でも2人は、まだお互いがツインソウルだとは思っていない。
双葉は、もしかしたらと思いながらも「まさか」という気持ちの方が強かった。
まだこの時点では…
(巡り会うのが難しい魂なんでしょう?一緒に転生してない時の方が多いって言うし…だいたい本当に転生ってするの?魂なんて有るの?)
ただの偶然が重なって、よく会うだけ。
世の中不思議な事はいくらでも有る、と思った。
(ソウルメイトとか何とかって、そりゃロマンチックな話しで、女はそういうの好きだけど、ツインソウル?宏二君と私が?)
「まさか」
そんな風に思ってみたり…
もしかしたらそうなのかも知れないと思ってみたり…
宏二と出会ってから、そんな毎日が続いていた。
(彼女居るんだし、クリスマスは彼女と過ごすんでしょう)
そう思うと、何故か涙が浮かんで来る。
(え?何で?何で涙よ?年のせいで涙もろくなってる?それにしても涙腺緩み過ぎでしょ。勝手に出て来ないでよ、私の涙)
【宏二の部屋】
引っ越しの車が来て荷物を運び込んでいる。
全て運び終えると、宏二は箱を開けて片付け始めた。
「ねえ宏ちゃん。これ、どこ置く?」と、彼女が聞いた。
「その中に入れといてくれれば良いよ」
「私もここで一緒に住もうかな?」
「ウザいからやめろ」
「何でそういう事言うのよ」
一人暮らしは気楽で良いと思っていた。
犬の好きな宏二は、マックスと離れて暮らす事だけが嫌だった。
「ここ犬飼えないの?」
「わかんない。不動産屋に聞いて無かった」
(たまに帰って散歩に連れて行けば良いや、実家はすぐ近くだし)
父親から生活費を振り込まれるけど、足りそうにない。
バイトを探さなければ、と思った。
宏二は、適当に荷物を片付けて町に出た。
【駅前】
買い物を済ませた双葉は、花屋に寄った。
クリスマスらしい鉢植えの花が欲しかった。
「いらっしゃいませ」
店から出て来た店員を見て、目を疑った。
「何で、ここに居るの?!」
「おばさん」
宏二だった。
「俺、バイト終わる時間だから待ってて」
「うえっ?え?ちょっと、勝手に」
「良いじゃん」
成り行き上仕方ない。
双葉は、宏二が帰りの支度を済ませるのを待った。
【ファミレス】
「ちゃんと噛んでる?もっとゆっくり食べなさいよ」
つい、いつも娘に言うように、そう言った。
宏二の手が止まった。
「何か…お母さんみたいだな」
「そりゃ、お母さんと変わらない年でしょうよ」
それから宏二は、自分の事を話し始めた。
両親が離婚して、母親が家を出て行った事…
時々家に来る父親の若い愛人と関係を持って、家を出された事…
(ハハア、女癖悪いんだ。それであの日私とあんな事に?誰でも良いワケ?)
「それで、この駅の近くに引っ越して来たんだ」
「へー、そうなのーって、えーっ??この駅ー?」
双葉がこの駅に住んでいる事を話すと、宏二は少し驚いたけれど、こう言った。
「もう、おばさんとの偶然は、これだけ重なると驚かないな。やっぱ縁が有るんだよ、俺達」
「またそんな事言ってー、彼女居るくせに」
「居るけど」
「あ、そうだ。クリスマスは彼女と一緒でしょう?」と、聞いてみた。
「そうだよ」
わかってはいたけど、ショックだった。
気を取り直して…
「じゃあ、プレゼント。そうだ、明日お店に持って行く」
早く家からあのプレゼントを持ち出したかった。
「何で俺にプレゼント?」
「何でって…」
双葉は、答えに困っていた。
「さては、惚れたな」
「何言ってるのよ、子供が。自惚れないでよ」
(それにしても、同じ駅に引っ越して来るなんて…)
やっぱり普通じゃない。
宏二は軽い感じで言うけど、本当に縁が有るのではないか、と思えてきた。
(本当に、ソウルメイト?まさかツインソウルじゃないと思うけど…)
そうは思っても、もしかしたらそうかも知れないと思う双葉。
(そうだ、爪!ツインソウルは、手や爪がそっくりだ、って)
「え?!」
食べている宏二の手を見て驚いた。
(似てる…気がする…)
「何だよ、急に…?」
「手、良く見せて」
2人の手を並べて比べてみると…
(やっぱり似てる…爪の形までそっくり…)
(でも本当?うーん…何とか確かめる方法は無いかしらね…)




