年の差ツインソウル2
(あーバカみたい。何であんな子にときめいちゃったんだろう?18才も年下よ。私が高校3年の時に生まれてるのよ)
(友美の子供と2つしか違わないじゃない。「私がオムツ変えましたー」って言ってもおかしくない年だわ)
それでも何だか悔しかった。
家に帰って鏡の前に座った。
お化粧を直す。
いつもより念入りにした。
(モデルさんみたいに綺麗な子だった…どうせ私はオバサンよ。ああ、髪…切ろうかな?……良し!明日美容院に行く!)
【美容室】
「イメージチェンジですね。肩ぐらいまで切りましょうか」
髪が軽くなったら、少し気持ちも軽くなった。
帰りにデパートで服を買った。
いつもは着ないようなオシャレな服を、店員に勧められるまま買ってしまった。
秋らしい色の化粧品も買った。
(オバサンだって、オシャレしたいじゃない。絶対キレイになってやるんだから)
ドラッグストアで、コラーゲンを買い込んだ。
【三枝家】
「ただいま。あれ、お母さん髪切ったんだ」
「うん」
「若くなったね」
「そう?」
嬉しかった。
夫は何も言わなかった。
(こんなに切ったのに、気づいてないんだか、なんだか…まあ、良いっか。初めから期待もしてないし)
「酒」
「呑み過ぎないでよ」
「毎日これだけが楽しみで仕事してるんだ、ガタガタ言うな」
あんまり言うと、また暴れるので、それ以上言うのはやめた。
双葉は、今日も酔った夫に激しく求められるかと思うと嫌だった。
(もう、触らないで!って感じだわ)
【寝室】
双葉が寝ていると、やはり酔った夫が襲いかかって来た。
(ああ、嫌だ…本当に、まるでレイプ)
宏二と巡り会ってから、よけいに夫との夜が嫌になった。
「お前、まるで冷凍マグロだな」
終わると夫がそう言った。
(ああ、嫌だ、嫌だ。シャワー浴びて来よう)
シャワーを浴びながら考えていた。
なんとかこの辛い夜を逃れる方法は無いだろうかと…
寝室に戻ると、夫はイビキをかいて寝ていた。
双葉は、そんな夫の姿を見て、部屋の入り口で立ち尽くしていた。
同じベッドで寝るのが嫌だった。
(今日は、若葉の部屋で寝よう)
2階に上がり娘の部屋に行くと、明かりがついていた。
「若葉、まだ起きてたの?」
「今、パーティー入ってるから、このダンジョン終わるまで抜けられなくて」
「何のパーティー?」
「ゲームだよ。4人でパーティー組んで戦うの」
「わけがわからない」
「お母さんゲームしないもんね。友達のお母さんとかやってるよ。可愛いキャラ作って」
「ふーん」
この時はまだ興味が無かった。
オンラインゲームなんて、やった事も無かった。
翌日娘の部屋を掃除していて、パソコンを見てふと思った。
(ゲームって、チャットしながらしてたわよね、危なくないのかしら?)
ドラゴン王国。
双葉は、娘が心配になり、ゲームを開いた。
「何これ?」
何とかマイキャラを作った。
(名前どうしよう?受け狙いにしようかしら?それともカワイイのが良いかな?)
(オバサンパワー?焼酎大好き?そんな名前の馬が居たっけ?あれは「サケダイスキ」だったか。うーん…)
「プルメリア」
好きな花の名前にした。
グラフィックが読み込まれて行く。
ゲームが始まった。
「え?何?」
(とりあえずナビゲーターの言う通りにやれば良いのか)
チュートリアルが終わった。
(ミッション?魚釣りか)
「あ、誰か話しかけて来た」
(フレンド登録?いきなりは嫌よ。拒否)
(沢山人が居る…)
吹き出しにチャットの文字。
(皆んな何言ってるかサッパリわかんない…まるで宇宙人)
また誰かに話しかけられた。
意味がわからないので聞いてみた。
(ああ、なるほど。文字数が限られてるから、略してるのね)
(あ、マックスだって、宏二君の犬と同じ名前。あ、行っちゃった)
マックスを追いかけたけど、マップ移動で見失った。
「あーあもう居ない…あ、こんな時間」
(さて、そろそろ出かけますか)
【神緒美貴のサロン】
「また来ちゃいました。もう一度カードを引いてもらいたくて」
「どれにしましょうか?」
「じゃあ、今日は、これ」
「では、石のカードで」
リーディングが始まった。
現在過去未来で、流れを読む。
「現在のカードは、インカローズ。ロマンスのカードです。衝撃的な出会いの暗示」
「え?」
「心当たり有りますか?」
(あれは、衝撃的と言えば衝撃的?ひったくりから助けてくれたんだから…「犬が」だけど)
(この前は、カップの2で「運命的な出会いの暗示」今日は、インカローズで「ロマンス」)
(やっぱりこの人のは当たる?聖霊に引かされるから、占いとは少し違うかも、って言ってたけど…)
「未来のカードは、モルガナイト。真実の愛です」
「真実の愛…」
「愛は形を変える物。時が流れて形が変わっても存在する愛って有りますよね。恋人から夫婦になって、子供が出来たりすると、家族愛になったり」
(この人は、きっと、結婚して幸せなのね。私は、夫を愛していない。愛しているのは娘だけ)
「カードの意味は、今わからなくても、後で「ああ、この事だったのか」と思う事が有りますよ」
(夫に対して愛は存在してない。娘が居るから我慢してるだけよ)
(この未来のカードって…)
「60枚のカードの中から、恋愛系のカードを2枚引くんですから、今のテーマは「愛」ですね」
やっぱり宏二の事が気になっていた。
まさか自分の事を好きになるはずが無いと思いながらも、身だしなみに気を使うようになった。
この町に来る時には、特に念入りにオシャレしていた。
駅から電車に乗った。
(今日は会わなかった…そうそう偶然会うはず無いわよね。ツインソウルじゃあるまいし)
数日後娘が食べたいと言う食材が近くのスーパーに無いので、またあの町のスーパーに行った。
買い物を終えてスーパーを出て歩いていると、後ろから声が聞こえる。
「そんなに、引っ張るなよ」
「ハアハアハア」
「待てよ、マックス」
振り返ると、マックスが宏二の手を離れて走って来た。
「マックス君久しぶり!あの時はありがとねー」
ちぎれそうなぐらい尻尾を振るマックス。
「あれ?おばさん…何か感じ変わった?」
(ほらきた、へへ、どうよ?)
双葉は、ドキドキする気持ちを必死に抑えて心の中でそう言った。
「髪切ったんだ…違う人みたいだな」
(何よそれ?)
「マックス君が気づかなかったら、通り過ぎてた?」
「わかるよ。人混みの中に居ても見つける自身有る」
「そういうセリフは、恋人に言いなさい」
「てか、偶然何度も会うなんて、俺達縁が有るのかもな」
「だから、そんなセリフ、オバサンに言ってどうすんのよ」
「今日は、そんなにオバサンぽくないし」
「若作りって事?」
オバサンぽくないと言われて嬉しかった。
(でも、無理して若作りしてるみたいに見えたら嫌だな。気をつけよう)
「ウチのお袋より若い」
「お母さんおいくつ?」
「45」
(やだ、あんまり変わんないじゃない)
ショックだった。
それでも彼に惹かれて行く気持ちを、自身でも止める事が出来ない。
「あ、そうだ。はい、マックス君。こないだのお礼」
もし会えたらと、バッグに入れていたビーフジャーキーを出した。
「俺も腹減った。又ね、おばさん」
「又ね…」
(って、又会うのかしら?)
又会えるのだろうか?
又会いたい、と双葉は思った。
でも、そうそう偶然が重なるとも思えなかった。
(ああ、でも、ここはマックス君の散歩コースみたい…だからって近くに住んでても全然会わない人も居るわよね)
電車に乗ると、メールが来た。
「オヤツありがとう、U^ェ^U ワン!」
「どういたしまして(=´∇`=)にゃん」
(何が「人混みの中に居ても見つける自身有る」よ…何が「縁が有るのかもな」よ…恋人が居るくせに)
その夜、いつものようにブログを読んだ。
気になる記事を見つけた。
(妹は37才なんだけど、自分の事「オバサン」て言うんだ。だから僕は「自分でオバサンて言っちゃダメだよ、本当にオバサンになっちゃうからね」って言ったんだ。だって、内面が美しければ、いくつになっても綺麗な人居るよね)
「ついオバサンて言っちゃうのよね」
(この人…神緒洸貴、40才独身。神緒?あれ?あのサロンの人…あの人も神緒さんだった)
「あっ、ツインソウルの事書いてる!」
(ツインソウルは、巡り会った瞬間から惹かれ合う。映画のように、喧嘩していた相手と恋人になったり、友達だと思っていた人を段々好きになったりしない)
(突然の恋の始まりに戸惑い、自分の気持ちを抑えたり、否定したりしても、魂が再会を喜んでいる「やっと会えたね」って)
「そうなんだ…」
(僕なんか、妹にヒプノで過去世を見せられるまで半信半疑だったけど、彼女の事は、偶然(妹に言わせると必然)初めて会った日から気になって仕方がなかった。そしてシンクロが始まったんだ)
「同じだわ…」
(ヒプノで過去世?妹?ヒプノって、ヒプノセラピー?神緒さんのサロンの看板に書いて有ったわよね)
SNSで宏二を見つけた。
タイムラインにゲームの事が書いて有った。
(皆んなこういうゲームするんだね…え?これって…あ…「ドラゴン王国」やってるんだ。へー…あ、写真…)
「え?!マックス?」
(やっぱり、あのマックスって宏二君?これって偶然?どうしてこんなに偶然が重なるの?)
ドラゴン王国を開いた。
「居た!」
マックスを見つけた。
(どうしよう……)
他のキャラのように、とにかくつぶやいてみた。
「始めたばりです。宜しく(^^)」
何人か応えてくれた。
「宜しくです( ´ ▽ ` )ノ」
「ガンバ(^ν^)」
宏二も応えた。
(あっ、応えてくれた)
「わからない事が有ったら、俺に聞いて(^_-)-☆」
(へー、優しいじゃない。若い女の子だと思ってるんでしょう。誰にでもそうなの?)
「あー、お母さんも始めたんだ」
「あー、ビックリした!いきなり後ろから話しかけないでよ」
本当は、宏二の事を考えていたから、過敏に反応した。
「これで仲良くなって、オフ会してる人も居るよ」
「危ないから、行くのやめなさいよ」
宏二に誘われたらどうしようかと思った。
ゲームの中では、可愛い女の子で居たかった。