表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
華の街  作者: 花椿蘭
6/6

旅立ち

ー桂様。

 お察しのように、本日、仕事が出来ました。

 なんでも、倒幕側の重鎮が借りぐらしをしている宿屋を見つけたとか。

 昨日の今日ですし、

 きっと今頃身支度を整え、今夜、闇夜に紛れてネズミのように逃げ回るのでしょう。

 私はそのネズミを追いかけなければなりません。

 想像するだけでなんて骨が折れることでしょうか。

 いっその事、日がある時に鳥のように飛んでいってしまえばよろしいのに


ー白百合・・・まさか



ーしかし、ご注意くださいな。

 失敗は許されませんので、2,3人の犠牲は出ます。


ー白百合、もうこの仕事から足を洗うんだ!

 君は君が思っている以上にこの時代の渦の中心に踏み込んでいる!

 いいや。命が惜しくてそういっているのではない!

 君に殺されるなら喜んで受ける!だが、そうではないんだ!


ーこれは、私を慕ってくださった、感謝の気持ちです。





遊楽の大門を出ようとしたところだった。

「小五郎さん!」

小梅が声をかけてきた。手には小さな風呂敷を持っていた。

「おかえりです?」

「あぁ、昨日は世話になったな」

小梅は首を横に振った。

子犬のようだ。目は丸く、表情はころころと変わった。

淡い桃色の着物が彼女の年齢をさらに幼く映しだした。

「御団子、食べたいです」

小梅の申し出に思わず笑みがこぼれてしまった。

きっと、妹とはこういうものなんだなと思った。

ーお気に入りの御団子屋さんがあるんです。

小梅は嬉しそうに小走りでその店へと向かった。

そこは小さな店だった。席数も少ないが

繁盛しているようで、昼前だというにに満席だった。

小五郎と白梅は外のおかれた長椅子に座った。

「ここのあんこ、おいしんですよ」

小五郎は茶をすすった

「白百合は...」

「小五郎さん、白百合が好きなんですね。ここが吉原なら問題ですよ?」

と小五郎の言葉を遮るように小梅が話始めた

「確かに、吉原だったら私は仕置きされているな」

とカラカラと笑った

「笑いごとじゃないです。ここだから許される話です」

まったく。と頬を膨らませる小梅は愛らしかった

「白百合は誰にも心を開きませんよ。」

小梅は両手で湯呑を包み茶に視線を落としてつぶやいた。

「それは私や白梅にだってそうです、小五郎さんに限った事ではないんです」

ーおまたせしました

と娘が団子を持ってきた、小梅は目を輝かせながら

1本団子を手に持った。

「小五郎さんだけではないんですよ?振られたの」

そう笑いながら団子をほうばった

「言い寄っていた男がいたのか?」

「そりゃー。まぁ。あれだけきれいならね。

 身請けしたいって人もいたけど、それは無理な話でしょ?」

小五郎はまた茶をすすった

「今日、ここを立つことにしたんだ」

小梅はうなずいた

「白百合に依頼がきたようなんだ。私を殺せって」

「知ってます。その話私も聞いてましたから」

「小梅もこの仕事を手伝っているのか?」

小五郎は目を見開いた、知らなかった。白百合だけがやっていることだと思っていたから

「まぁ手伝ってはいますよ?だけど、殺しはしません。

 それは白百合が絶対許さないんです。そういう人なんです。白百合は

 …。

 この話が来たとき、白百合はこういったんです

 相手だって阿呆ではないだろうから、昨日のうちに逃げおうせているだろう

 だから、成し遂げることは難しいって」

「白百合が?」

「あっ。私のお茶。茶柱立ってます!

 どうぞ!このお茶あげますね

 大丈夫です。口つけてないから」

そして小梅は悲しそうな顔を小五郎へ向けた

「白百合が助けたこの命、大切に使ってくださいね」


宿舎へは遠回りをして向かった。

多分、襲撃はされないだろうけど念には念を入れての事だ。

知った道だが、伏見からここまでどの道を歩いてきたのかは

覚えていなかった。考え事をしていた。

大半は白百合の事だったが。ゆっくりと頭を切り替えなければならない。

「小五郎さん」

すけ傘をかすかに上へあげて澄高が近づいてきた、

「澄高…」

「宿舎は誰もいませんよ。

 すいません、私の指示でみんなには逃げてもらいまいした」

澄高が小五郎の手元に大小1枚づつの紙を差し出した、

「これには、宿屋の住所が書いてあります。

 そこへ行ってください、こっちは皆が身を寄せている宿屋です」

小五郎は紙を開いた

大きな紙の方には何件もの宿屋の名前とそこに身を置く同士たちの名前が書いてあった。

「何かあったら、連絡ください」

「お前、いつの間に」

1日で手配するには数が多すぎた

「俺は策士ですよ。こうなることはわかってましたから

 ずっと前から準備をしていたんです。」

「しかし、」

「早く行ってください。」

そう小五郎を促し、笑顔で小五郎を見送った。


「こんなことが、父上様の耳に入ったら」

と声が聞こえた。

澄高は小五郎から視線をそらさなかった

「何度も言っているだろ?俺は家を捨てたんだよ。

 あんな家のことなんて、どうでもいいんだ」





 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ