会場と黒いドレスの彼女
「みんな……盛り上がって行くよッ!」
――――――。
――――。
――。
無音と言って良い真っ暗やみの中いっぱいに大きく響いたその声は、闇に光を灯す道しるべのように文字通り暗闇に満ちていた会場に照明と後ひとつの大きなひかりを灯した。
そのヒカリとは瞬く間に広がり、
辺りを埋め尽くすサイリウムという人工的な、人工的であるにも関わらずたくさんの想いや感情を乗せたひかり。
やがてたくさんのひかりが重なり合い
――ツヨク強く会場全体に歓声と熱が発せられた。
【ウワアアアアアアアッ!!!!】
会場の一番前方にあるステージに立つ黒いドレスの女の子は大きな歓声と光を浴びて満足そうに、イジワルそうにニヤリと笑みを含んだ。
けれどもステージ近くを浮遊する記録用のカメラを見付けた彼女は直ぐ様肩に掛けてあった赤い色のギターをがむしゃらに鳴らして、
「全ッ然!足りないよォ!!」と叫ぶ。
彼女の言葉が引き金となって観客は更に声を上げそれに従ってライトの光も多くなって行った。
気がつくと――。
会場に在るのは、下から降りてくる熱とステージに立つ一人の小さな息遣いだけだった。
流れる汗を気にも留めず、
一人だけになった大きな会場の中で、
星を探すようにくまなく辺りを見渡す彼女の眼はルビーのように綺麗な赤色をしているようで……
会場を見渡す彼女にとって会場で起こった事は、
カメの歩く速度のように長く感じた出来事だったのか、
はたまた流れ星が人の視界から消え去るように短く感じた出来事だったのか。
それは彼女の表情を見ると伝わって来るのかもしれない。
少し前まで楽しんで観客と戦うような表情を見せていたのに対して、
今はただ、何かを確かめるように頷きながらとても穏やかな笑み浮かべていたのだから。
その後……
しばらくして会場を観終えた彼女が、
ほほに伝うしずくをゆっくりと指で拭いながら会場に向かって頭を深く下げた時、
キイッと扉が開く音がして、
女の子と眼があったのはまた別の話。
いやあライブって良いものですね。
どうもこんばんは。
実は数時間前に私の人生で初めて、
スタジオで行われるライブというモノを観戦に行きました。(ロック系ではありません)
その迫力も去ることながら自然と胸に染み込んでくる感動の強さに驚いてしまいましてね……
なんの構成もなくいつのまにか一気にタイプしてしまっていたモノがこの作品になります。
まだまだ表現したいことはたくさんあったと思いますが、気が付くと胸の中に大きな空間が出来るような間隔を持ったのはかなり久々の事でしたので、
色々と腑抜けて要るかもしれませんがこれはこれで多目に、はたまたステージを観るように遠目で観ていただければ幸いです。
最後にあとがきを読んでいただきましてありがとうございました。
RYUITI




