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アイズ  作者: はすぽて
2/2

証明

白い通路に点々と明りが灯された道を僕は歩いていた。

目の前に誰かがやってきた、見覚えのある顔だ。

なのに名前が出てこない、誰だこいつは?


「ずいぶんと変わったな」

そいつはシニカルに笑いながら言った。


変わった?

意味がわからない、何が変わったんだ?

僕は僕だ。


「なんだよ、不思議そうな顔しやがって。おっと、もうこんな時間か、今度会うときはもう少しましな顔見せろよ!」

そいつはそういって消えた


******


「お目覚めかい」

はっ!と我に返ると僕はベットで寝ていた。

目の前に白い髪をした老人が椅子に座っていた。

なんだ、ただの夢か。

何を言われたのかもよく覚えていないのだけど何か大切なことを言われていた気がする。


「おはようございます。」

僕はそう老人に言うと。

「今はこんばんわじゃぞ」

と笑われた。


老人は僕に鏡を見せて言った。

「どうじゃ、新しい顔は?」


新しい顔?

僕はア○パンマンに転職した覚えはないよと老人に言うと、

「バカにしとるんか!?」

と叱られた。


鏡を見るとそこには見覚えのない顔が映った。

青い髪に遠い眼をしている男だ。


これが僕か。

フッと笑った。


「その様子を見ると後遺症とかもなさそうじゃな、よかったよかった。」

老人は安心した表情を浮かべる。


よかったか。

それにしてもずいぶんとぼろっちい部屋だな。

名医と言われ連れてこられたが名医の割にずいぶんと貧相な場所に住んでいるんだな。


ガチャと、ドアが開く音がした。

ドアの方を見るとゴリラ顔の男が立っていた。

剛だ。


「どうだ調子は、その顔を見ると成功したってことだな」

剛は僕に向かいそんなことを言った。

成功か、一応無事なのは確かだ。


「わしが手術したんじゃからあたりまえじゃろうが!」

老人は元気よくそういうと、

「さすが先生だ」

剛がおだてる。

そんな会話を聞きながら僕はベットから下りて言った。

「それで次はどうしたらいいんですか剛さん?」


剛はうむ、と頷き言った。

「お前、名前はどうする?」


名前か、何でもいい気もするが一応無いと不便なものだし決めておくか。

そう考えていると老人が手を上げて言った。


(せい)() なんてどうじゃ?今のお前にぴったりじゃろう」

青夜か、まぁ何でもよかったしそれでいいか。


「はい、では今日から青夜で宜しくお願いします」

僕は剛にそういって挨拶をした。


「ああ、」

剛はそれでいいのか?と言わんばかりの顔だ。

だが今の僕としては名前に何の価値も感じられない。

むしろこのぐらいがちょうどいい。


「名前も決まったことだし、正式にFFIメンバーに入ってもらいたいのだが、色々手順があってな。これから京都に向かってもらう。」


「京都ですか?」

俺がそういうと、剛が「そうだ」と返事をした。

京都か、何故京都に行くのかはわからないがメンバーに入るにはそうする必要があるみたいだしとにかく了解しとこう。


老人に礼を言いぼろっちい部屋から出ると老人の家の前に車が止まっていた。

剛に言われるがままに車に乗り、京都に向かった。

運転手まで付いているとはなかなか豪華なものだ。


車内で剛はFFIに入る手順を説明してくれた。

FFIに入るにはまず、アイズ能力者である証明が必要で、それを見極めるために京都まで行かなければいけないらしい。

証明だけではなくヴァルツと戦う実力もそこで付ける必要があるみたいだ。

正式にFFIメンバーに入るのには少なくとも半年はかかるらしい。

まるで車の免許を取りに行くみたいだ。


説明を聞きながら早くも京都に着いた。

だいたい一時間と言ったところか。


「着いたぞここだ」

車から降り、剛に言われ外を見るとそこには大きな建築物が立っていた。


「なんですかここ?」

こんなに目立つ場所にFFIの施設を造ってもいいのかと剛に聞くと。

この大きな建物の地下にFFIの本拠地があるらしい。

ヴァルツにも見つからないように出来ているとか何とか言われたが詳しいくは教えてくれなかった。


大きな門に門番が二人、黒い服を着こなしたボディーガードの様な見た目だ。

ここが京都のどこなのかまったく知らないが、どうせ教えては、くれないだろうし気にはしない。


門番二人に剛がカードの様なものを見せている。

そうすると門番がピシ!と敬礼した。

剛がついて来いと指でジェスチャーをした。

僕は門番二人に頭を下げ、剛についていく。


すると大きなエレベータが目の前に、どうやらこれで地下まで行くみたいだ。

エレベータに二人で乗ると剛が苦笑いをしながら言った


「青夜、お前がこれから会うのは天皇様なのだが言葉には気おつけろよ」

「はい、」

まさか天皇にいきなり合うとは思わなかったが、僕でも敬語ぐらいはできる。

なぜそんな苦笑いをして話すんだろう。


「いやなんというか、まぁ、お前なら大丈夫か」

剛が何か言おうとして口を閉じた。

何を言おうとしたのかは分からないが、とくに気にもしない。


エレベータが止まった。

結構長い時間かかっていたということはかなり深いようだな。


エレベーターのドアが開くとそこには地下帝国のような光景が広がっていた。


「何ですかここは?」

僕は剛に説明を求めると剛が説明してくれた。


どうやらここはもう一つの京都、地上とほとんど変わらない作りになっているらしい。

スーパーやコンビニまである。

違うところと言えば目の前に大きな城が建っていることぐらいだ。


どうやらその城に天皇がいるみたいだ。


剛がタクシーを呼ぶ。

タクシーまであるのか、何でもありだなここは。

タクシーに乗り、城の前まで移動することになった。


車内でここの人たちについて剛が説明してくれた。

どうやらここの人たちは家族のだれか、もしくは自分自身がアイズ能力者に突然なってしまった時、保護を受ける施設のようだ。

FFIと言うのも仕事の一つらしくて戦闘に向いていないものは地下の京都で暮らすことになる。


だから地上と変わらず人も店も家もあるんだな。

そう僕は一人で納得した。


城に着くと剛がまたもやカードの様なものを運転手に見せた。

僕は気になり剛に言った。


「さっきから剛さんが人に見せているカードは何なんですか?」

剛がこれか?とカードに指を射して言った。

「これは、フェイスカードといってFFIのメンバーである証明みたいなもんだ。さっきも言ったと思うけどFFIのメンバーに入るには照明が必要なんだ、それがこれってわけだ。これ一枚あれば飲食や交通機関とかも裏京都では無料になるんだよ。」


まるでハ○ターライセンスみたいだな、と感心しながら剛の話を聞いた。


城の前にはまた門番が立っていた。

剛は門番にカードを見せた。

すると今度は門番が中まで案内してくれるようだ。


門番についていく僕と剛、ずいぶんと大きな城だな、まさかこんなものを地下に造るとは、

天皇はさぞかし大胆な方なのだろう。


城の中に入るといくつも部屋があった。

僕は剛にあの部屋だと言われ一人で行くことになった。

何かの決まりなのだろうか?

剛は門番と外で待っていると言っているが少し不安だな。


部屋に入ると扉の前にはいかつい大男と紫の髪をした長身の男が立っていた。

部屋の中央まで大男に言われ行く。

そうすると目の前の大きな壁が横にスライドして開いた。


そこにはドヤ顔で豪華なイスに座る少女がいた。

見た目は黒いフリフリのドレスにショートカットより少し長めの黒髪で年はだいたい12歳と言ったところか、そんな少女が足を組んでドンと、座っていた。


僕は一応敬語を使い少女に言った。

「すみません、天皇様にお会いできると聞いていたのですが?」

そういうと、少女が椅子から勢いよく立ちあがり僕に指を射して言い放った。


「よが天皇じゃ!無礼な奴め!」

そう言われ動揺を隠せない。

僕の知っている天皇はもっとご高齢の方でニュースとかにちょくちょく話題が出てくる方だ。

第一僕の知っている天皇は男だ、こんなちんちくりんな小娘ではない。


腰に手を当てて少女は言った。

「まあいい、それでお前がゴリラの言っていた新しいアイズ覚醒者か?」

ゴリラ?と、一瞬考えたがすぐにそれが剛だと理解した。

なので僕は頷いた。


「名は?」

少女は顎を突き出し見下してるようにそう言った。

「青夜です。」

「ほう、青夜か良い名じゃ」


すると、少女の眼が一変する。

少女の右目が紫色に光だし瞳に十字架のマークが浮かび上がった。


「アイズ!?」

僕は思わずそう言った。

少女がさっきから僕に向けていた眼とは違い鋭い眼差しを向けた。

「今からよが、おぬしの力を見極める、アイズを発動しよ」

少女は虫を見るかのような眼で僕を見て言った。


ふと、思い出した。

あれは漣がヴァルツと戦う前にした眼だ。

本気でやるみたいだ。

「いいんですね、」

「よいぞ!死なぬように手加減ぐらいはしてやろう」


偉そうに少女はそう言った。

かなり自信があるみたいだ。


きっとこれもFFI に入る為の試験か何かのだろう、なら全力でやらないといけない。

だけどもし殺してしまったら…いや…そんなことを考えていたらヴァルツとなんか戦えない。

少女をヴァルツと思って、本気で、殺す!


僕の左目が赤紫に光りだした。

身体が軽くなっていくのがわかる。

五感すべてが研ぎ澄まされていくような感じだ。


アイズを発動させて少女を睨んだ。

少女の眼は変わらない、余裕な表情だ。。

「左目か、なかなか良い目をしておるな。最所からFFI希望と言うことはそこそこ戦える自身でもあるのかのう?」


僕は一言返した。

「ええ、」

その言葉と共に僕は瞬時に少女との間合いを詰める。だいたい距離にしたら10mぐらいだ。

少女の横腹に目掛けて右こぶしを撃つ。

すると、そのこぶしは空を撃ち、少女はいつの間にか僕の後ろに立っていた。


ニヤニヤした顔で少女は「そんなものか、」と笑う。

僕は体をひねり左足で回し蹴りを少女に放つ、だがそれもまた空を蹴る。


「なかなか身体能力が高いみたいじゃがそんなものでは、よに一発も当らんな。」

と指を横に振りながらチッチッと言われた。


これだけの速度で攻撃しているのに当らない!?

一体どういうことだ。扉の前にいる二人も余裕な表情を浮かべてやがる。

僕では相手にならないということか。

それでもあのニヤケ顔に一発ぐらい叩き入れてやりたい。


「どうした、もう終わりか?」

ニヤニヤとした表情で少女はそう言ってきた。


「終わり?そんなわけないじゃないですか、凄いのをお見舞いしてやりますよ」

僕はそう言いヴァルツの三人を殺した時のことをイメージした。


視界に入った相手を圧縮し、殺す!


僕はこの時どうかしていたんだろう。


左目に力をため込むようなイメージをして少女に眼を向けると部屋全体に亀裂のような罅が入り地響きが鳴った。

左目から血が流れていたが気にもせず力をため続けた。


すると僕の左目の視界が真っ暗になった。

気づけば僕は地面に倒れていた。

どうやら扉の前にいた長身の男が一瞬で僕との距離を詰めて、左目を抑えそのまま頭を床に撃ちつけたみたいだ。


「城を壊されては困る、そういう技は控えてくれ」

僕はそいつの言葉を最後気を失った。


****


気づけば僕は白い通路を歩いていた。

「またここか」

僕はそんな言葉を口に出した。

すると見覚えのある男が急に表れた。


「ずいぶんとあっけなくやられたみたいだな」

男はシニカルに笑っていた。


何故だろう。

この男を僕は知っているはずなのに名前がどうしても出てこない。

いっそのこと本人に聞いてみるか。


「お前は誰なんだ?」

男はそう言われると腕を組み首をかしげ、言った。

「そこからか、別に今知る必要はない。だけどいずれ俺のことが必要になる。その時にでも教えてやるよ。」


よくわからない。

こいつの言っている意味が。


「おっと、そろそろ時間だ。」

男がそういうと意識が薄れていく。


*******


またあの夢か。

目覚めるとそこはベットの上だった。

最近ベットの上にいることが多い気がするな。


「目覚めたようね」

声の先を見るとそこには黒髪の少女がいた。

漣だ。


「ずいぶんと変わったわね」

そう言われるとそうかもしれないがいまいちしっくりこない。

変わったと言えば顔も名前も変わったからな。

夢に出てきた男はそのことを言っていたのだろうか。

そんなことを考えつつも僕は漣に返事をする。

「おかげさまで、それでここは?」

僕は漣に聞いた。


「裏京都城の医務室よ。あなたが天皇様との遊びに向きになるから部屋が壊れちゃって、それで私が直しに来たのよ」

漣は不機嫌にそう言った。


遊びって何のことだろう?

大きな部屋に呼ばれて、そこで自分のことを天皇とか言ってる少女と戦って最終的に長身の男にやられたんだ。


「また説明しないとダメそうね」

僕は漣の説明を聞く。


どうやら本当にあの少女は天皇だったみたいだ。

だが天皇と言えど地下世界の天皇らしい。

日本の各地にアイズ被害者をかくまう施設があり、それを裏世界とよぶらしい。

それの代表者があの少女、天皇様だそうだ。

名は、輝夜(かぐや)というらしい。


それであの戦いはFFI試験ともまったく関係のないもので、輝夜が暇つぶしに剛に頼んで相手をさせてもらったそうだ。

こっちとしてはいい迷惑だ、本気で殺しかけてしまった。

まぁ、結局遊ばれただけだったけどね。

力の制御も出来ていないのにあんなことはするもんじゃないな。


「だいたいわかったよ、ありがとう」

僕は漣にお礼をいうと、漣が言った。


「一応一通りあなたの存在をこの世から計しておいたわ、葬式もされたようだし。学校では結構人気者だったわよ、あなた。本当に死んだのか?とか、マジかよあいつヤベぇとかね」

「あはは・・・」

正直苦笑いしかできない。

教科書に載る科学者も生きている間はたいして有名ではなかったと聞いていたがそんな感じなのかな。

父さんの話が出てこないのは漣なりに気を使ってくれてのものだろう。

僕も知りたいとは思わないし。


「あともう一つ、FFIとして認められたようよあなた。」

漣はそう言ってカードを差し出す。

それを受け取り見てみると、名前が書かれていた。


№184 青夜

G184


これがFFIメンバーの証。

でもメンバーに入るには少なくとも半年はかかるって言われたんだけどな。


僕が不思議そうな顔をしていると、漣は呆れた声で言った。

「なんか、天皇様があなたを気に入ったらしくて、そくメンバーにしたみたいよ、無茶苦茶な人よまったく。」


僕としては遊ばれただけで半年もかかる試験をパスできたんだから喜ばしいことだ。

漣が説明してくれたが№の下に書かれているのはFFIメンバーの中での序列らしい。

今の僕は最下位みたいだ。

それもそうだろうな、全部パスしてパスゲットしっちゃってるような奴だしな。

再発行はできないらしいから大事にしよう。


「あと、約束してたし私の能力教えてあげるわ」

漣が自慢げに言った。

正直知りたいと思う。

自分の力もいまいちわかっていないし、アイズ能力とはどういったものなのか少しは分るかもしれない。


「私の能力は逆再生よ」

そういわれ僕の頭に?マークが浮かんだ。

逆再生?どういう意味だろう。

詳しく聞いてみると凄い能力だった。


生物、無機物、時の流れ、何であろうと24時間以内だったら好きな時間まで戻せるらしい。

アイズはこんなチートくさい能力ばっかなのだろうか。

だがそれでここに呼ばれた理由がわかった。


だがもちろん弱点もあるみたいだ。

一日に使えるのは3回が限度らしい。

それをとってもチートと言えよう。


僕もこれこれから自分の能力が何なのかを調べないといけない。

やることはたくさんだ。


こうして僕のFFIとしての生活が始まった。





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