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第1時間目 『暗殺者の話』

一番最初に思い出すのが『暗殺者の話』だ。

この話は、確か、ある国で起きた無差別殺人の犯人が、実は雇われた『暗殺者』であったというニュースが流れた日の翌日の『雑談の時間』の話だったと記憶している。




…『皆さん…やはり暗殺者は怖いですか?』…


良光は意外にも明るい声で生徒達に問い掛けた。

「もちろんです」

「怖いです」

「恐ろしいです」生徒達から恐怖や不快を表す言葉が次々と飛び出してくる。無理も無い、『暗殺者があなたを狙っている』と言われたら外を歩くことも、夜眠ることも出来そうにない。そして、私なら暗殺者に殺される前に不安で死んでしまうであろう。

「ところが…我々は常に暗殺者に狙われているのです。」

良光は先程とは変わって、やや強い口調でそう言った。どうせ…『病気が暗殺者です。』とか言うのであろう。


「先生、その暗殺者は私達だけを狙っているのですか?」

生徒の一人がおそるおそる聞く。まあ、『あなた達は暗殺者に狙われている』などと言われた後だ、無理も無い。

「いいえ…暗殺者は全存在を狙っています。」

おいおい、話が飛躍しすぎだろう。全存在を狙える暗殺者がいるわけが無い。しかし、ここで私の『病気が暗殺者』という説はハズレだと証明された。病気は動物や植物は狙えるが、全存在というからには岩石などの生きていない物も入るのであろう。しかし…そうなると暗殺者の正体が尚一層謎になる。


「先生、その暗殺者は一人ですか?」

「いいえ、暗殺者は二人います。」

二人で全存在を狙うとは、凄い度胸のある暗殺者だ…。さあて、そろそろ質問をするか…


「先生、その暗殺者の名前を教えて下さい。」

良光は一呼吸置いてから、こう答えた。

「一人目の暗殺者の名前はtime…つまり『時』です。」

なるほど、『時の流れは全てを押し流す』とはよく言ったものだ、だが、そうなると一人で十分なのでは…?


「そして、二人目がfate…つまり『運命』です。『時』は『運命』に暗殺をする時刻を伝える役目、『運命』は『時』の伝えた時刻通りに存在を消す役目を持っています。」

良光は更に一呼吸おいて話を続ける。

「もちろん、全存在を狙っているわけですから、暗殺者自身も暗殺の対象です。」

おいおい、話がおかしな方向に進んでいるぞ。

「『時』も『運命』も、それを感じる存在がいるから存在出来るのであり、感じることの出来る存在が全て消えた時…それが二人の最期なのです。」

「おや、3分を過ぎてしまいましたか、そろそろ授業に戻りましょうか。」


そう言ってから、良光は教卓の教科書を開いた。

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