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金のランタン

13.捕まえられてきたもの

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/16



亡き黒虎毛のペッパーに




うちに住みついている猫たちは、以前私が馬車道の隅で仔猫の頃に拾ってきた黒虎毛の雌猫以外は、私が食事の残り物をやっているうちに、我が家に居ついてしまった野良猫たちだった。

猫たちは我が家をねぐらとして、うちの裏庭の先に広がる野原と、その先に鬱蒼とした影を落としているウールユーバの森を、彼女等の縄張り、及び“猟場”としているようだった。

ウールユーバの森は古い大きな森で、その奥には“森の精霊”だかが棲んでいると言われていて、木こりや狩人以外の者は、めったにその奥深くに入っては行かないのだった。

が、その“精霊”かどうかはわからないが、ウールユーバの森や、野原や、時にはうちの庭先の花の周りで、白く輝く小さなものがフワフワと宙に舞っているのを、私は幾度か見かけた事があった。

そしてその白いものが舞っていたところを見に行ってみると、“フェアリー・サークル”と呼ばれている、あの草花の茎を押し倒して作られた、見事な渦巻き模様を地面に見つける事があった。

しかし“精霊”が棲んでいようと、ホタルとはまた違った妙なものが舞っていようと、猫たちはおかまいなく、毎日、ウールユーバの森や、気に入りの草むらの中で飛び跳ね、大蜘蛛やらネズミやらといったものを捕まえて来ては、得意満面の様子で、その獲物を私にも見せてくれるのだった。


しかしあの日、とうとう黒虎毛の猫は、今までの獲物とはちょっとちがったものを“捕まえて”きてしまった。

それは――なんと、ウールユーバの森の“妖精”だった。

その日は朝からどういうわけか、あの白く輝く妙なものがうちの近くを飛び交っていた。

私はその正体を確かめようと何度かそれに近づいてもみたが、私がちょっと近づくと、それはふいとどこかへと隠れてしまうのだった。

そしてその夕方、私が井戸の水を汲んでいると、夕陽に染まった草むらの中から、黒虎毛がまたも何かをくわえて帰って来たので、私は黒虎毛が捕って来たものが鳥の雛などだったら可哀相だなと思いながら、私の足元へとやって来た彼女の口元の物を見つめた。と、すると、

「やい、放せよっ!」

その“獲物”はなんと、黒虎毛の牙の間でわめいた。

「放せってばっ!羽や服がお前のヨダレで台無しになるだろっっ!!」

「!」

それに私は目を見開け、黒虎毛がくわえているものを見つめた。

見れば――それは、緑のとんがり帽子とぼんぼりのついた服といった姿の、虹色に輝く半透明の昆虫のものに似た羽を背中に持った、絵本の中の絵そのままの、“妖精”だった。

それに私は慌てて黒虎毛の口の中から、その小さな姿をしたものを取り上げようとした。

と、黒虎毛は素直に私のてのひらの上に、それをぽいと放り出した。

「この馬鹿っ!」

牙の間で命が危ぶまれていた立場だったにもかかわらず、それはキイキイ声で黒虎毛に罵声を浴びせた。

「何でも自分の食い物だと思いやがってっ!この悪食めっ!!」

妖精はこれまた小さなげんこを黒虎毛の鼻先で振りかざし、少しばかり曲がってしまった羽の先をつんつんと引っ張ってのばした。そして、

「ねえっ!」

妖精は私の方を振り返り、同じようにわめいた。

「おたく、猫どもにちゃんとエサやってよねっ!!」

「はぁ」

その剣幕に私は、妖精などというものを目にしている驚きをすっかり忘れて思わず謝った。

「す、すんません……」

「あーっ、もうっ、びっくりしたつっ!!」

妖精はなおもキイキイ声で怒りながら、ブーンという羽虫の様な音をたてて私のてのひらの上から飛び上がった。

「ちょっとあの木の上で休ませてもらうからねっ!猫どもを近づけないでよっ!!」

そして、庭の隅の樫の木の上へと飛んで行き、姿は枝々の緑の間に消えて見えなくなった。

「……」

光の粉をあたりにまき散らしながら飛んで行くその姿を、あらためてこれは夢ではないのだろうかと思いながら、私はしばらくの間、見上げていた


その夜。

さて、そろそろ寝ようかとしていた頃、部屋の窓がコツコツと鳴った。

はじめ私は、それは風の音かとでも思ったが、窓はまたもコツコツと鳴ったため、私は窓の前へと立った。

と、そこには

あの妖精がいた。

「ねえっ、開けてよっ!」

窓ガラスの向こうで、妖精は言った。

私はその小さな姿に我が目を疑いながら、窓を開けた。

「ごめんよ、ちょっとお邪魔するよっ!」

目を見張っている私をよそに、妖精は窓枠の上をちょこちょこと歩いて私の目の前に立ち、それから緑の半ズボンのポケットをごそごそと探ると何かを取り出して、それを私に差し出した。

「これ、首にかけてっ!」

妖精は言った。それは、虹色に光る小さな半透明の石に、蜘蛛の糸の様な、何とも細い銀の糸を通した首飾り、だった。

「……」

私はそれを手に取りながら見つめた。

「ねえ、早くかけてっ!」

その私に、妖精は急かす様に言った。

「ど……どうして?」

私は妖精と首飾りを交互に見ながらたずねた。

「魔除けなんだよ、それっ!」

「魔除け?」

「そっ。とっても強力な魔除け。小鬼(インプ)除けだよっ!」

「小鬼除け?」

「そっ。早く首にかけてっ、早くっ。災難かぶりたくないだろっ?!」

「さ、災難?」

私には何が何だかわからなかった。

「そっ。ねえ、早くかけてっ。怖がる事ないから。別に困った事にはならないから。かけないと困った事になるからっ!!」

「…………」

私は首飾りを見つめた。

「早くっ。この家守りたいだろ。猫も守りたいだろ?!もうじき小鬼たちが来るよっ!」

妖精はさらに焦っているように言った。

しかし妖精などというのもは、たいがいは人間のためにはならない様な悪さをするものだと私は思っていたため、その首飾りをするのを私はためらった。これでイボガエルなんぞにされてしまうのかもしれない、などと思いながら。すると、

「それでイボガエルなんかになったりしないよっ!」

その私の思った事が妖精にはわかるのか、妖精はキイキイ声でわめいた。

「もうっ、信用してくれないんだからっ!言わせてもらうけどねっ、妖精は人間なんかよりも、ずっと正直で、親切で、嘘なんかつかないんだからねっ!ねえっ、ホントに早くしてよっ!あいつらが来る前に魔法陣を完璧にしとかないといけないんだからっ!でないとあいつら、イーユーの花を台無しにしちゃうんだからっ!!」

「イーユーの花?」

私はまたもたずねた。

「そっ。おたくの庭に咲いてる花。夜になると、月に向かって満開になるあの白い花っ」

「夜に咲く白い花って……ああ、あの、春から夏の夜に、いい香りをさせて咲く白い花?」

私は花の名前は知らなかったが、妖精が言っているらしき花の事は思い当たった。

「うん。それそれ!」

妖精は言った。

「俺たちあの花がとっても好きだから、小鬼どもに台無しにされたくないんだよっ。でも台無しにされるのは、イーユーの花だけじゃないよ。あいつらが通っていったところはね、みーんな草木が枯れちゃうんだからっ。あいつらの瘴気でっ!ねえっ、早くそれ、首にかけてよっ!!」

「ふうん……」

妖精の必死の様子に、その言葉をまだ少し疑いながらも、私は自分の小指の爪半分ほどのその虹色の石を見つめ……そして首にかけた。

すると妖精は、その私の胸に下がった石に向かってなにやらゴニョゴニョと呪文を唱え、印を切った。と、それに虹色の石は――

ピシン、という小さな音をたてると青白く輝きだし、私の胸元から、ふわりと宙に浮き上がった。

「!」

細い銀の糸に繋がれたまま、私の首の高さにまで浮き上がった石を見つめ、私は目を丸くした。

「大丈夫だよっ!」

その私に、妖精は言った。

「これで魔法陣完成っ!ああ、よかった。じゃあねっ!!」

そして妖精はほっとした様子で、窓枠の上から飛び立ってゆこうとした。

「ちょっと待った」

と、その妖精の羽を、私は指先でつまんだ。トンボや蝶の羽をつまむ様に。

「わっ、ちょっとっっ!痛いよ、何するのさっ?!」

それに妖精は悲鳴をあげ、私を振り向いて、またもキイキイ声でわめいた。

「小鬼だの魔法陣だの、私にもわかるように、もうちょっと説明してほしいな。言うとおりに首飾りかけて協力したんだから」

私は言った。すると妖精は、何やら困った様子でモゴモゴと言った。

「そ、そういうことはぁ……あんまり人間に知られちゃいけないしぃ、言ってもいけない事なんだよおっ!」

「って言ったって、もうおおかた自分で言っちまってるよ?……何さ?小鬼がここに来るとかなんとかって?」

「だ、だからぁ……ねえっ、ちょっとっ、放してよっ。羽が駄目になっちゃうだろっ!」

「ちゃんと説明しろっ!」

「……わかったよっ。わかったからさっ!!」

妖精は私に羽をつままれた格好のまま、手足をばたばたとさせて、悔しそうに言った。

そこで私は念のために窓を閉めてから、妖精を窓枠の上へと下ろしてやった。

「疑り深いんだなあ。これだから人間って……」

閉じられた窓と私を見上げながら、妖精はぶつぶつと言った。

「で、これでどうするつもりなのさ?」

その妖精に、私は私の目の前にまだ浮かんでいる石を、指先で軽くつついて言った。私が触れると、石は白い光の粉を小さく飛ばして、宙にゆうらりと揺れた。

「だ、だからぁ」

妖精は何やら言葉を考えながら言った。

「それで小鬼どもがこの家のあたりを通らないようにしたんだ。……今晩、ウールユーバの森の隣にある、ウワァフ·フフウの森の真ん中にある沼で、ここいらにいる小鬼どもの宴会があるんだ」

「フフウの森で?」

「うん」

妖精はうなずいた。

「で、ウールユーバの森の小鬼たちが、ウワァフ·フフウの森へ行くのに、ちょうどここらが通り道になっちゃうんだ。さっきも言ったけど、小鬼って、ホントの魔物に比べたら、そんなにたいした力も持ってないんだけど、でも、あいつらもそこそこの瘴気を放ってるからね……だから小鬼どもがたくさん通ったりしたところは、その瘴気で草木がやられちゃうんだ。虫や鳥や他の動物も、しばらくはそのあたりには近づかないんだぜっ。

俺たち、ここのイーユーの花もだけど、他にも気に入ってる花や木がここらにいくつかあるからさぁ……だからそこいらに小鬼を近づけたくなくってさ。それで魔法陣を張ったわけっ。

ここからはよくわからないけど、この家を中心にして六ヶ所、それと同じ魔封じの石を地面に埋めて、魔法陣を作ったんだ。今日一日かけてさっ。で、魔法陣を作った後、おたくにその首飾りを渡そうかどうか迷ってたら、おたくのあのドラ猫に捕まっちゃったんだよっ!」

「へえ」

それに私はくすくすと笑った。

「笑いごっちゃないよっっ!」

だがその私に、妖精は怒ってわめいた。

「まぁったく、おたくのあのドラ猫には、今までにも何度か捕まっちゃってて、そのたんびにいい迷惑してんだからねっっ!今日だって、あのまんま帰っちゃおうかと思ってたんだぜっ。

でも、魔法陣を張っただけじゃあ、もひとつ力が弱いみたいでさ。だからわざわざ、ホントは人間の前には姿を現しちゃいけないのに、こうして最後の仕上げに来てやったんだよっ!」

「最後の仕上げ?」

「うん」

妖精はうなずいた。

「魔法陣はただ作るだけじゃなくってね、土地を守ったりする術をかける時は、護符や魔除けを持った、その土地の主が魔法陣の真ん中にいると一番強力な力が発揮できるんだよ。それで、わざわざその魔除けをおたくに渡しに来たんだよっ!」

私は今一度、宙に浮かぶ虹色の石を見つめた。

「ふうん……」

「さあっ、これでみーんな、正直に話したぜっ。信じるか信じないかはおたくの勝手だけどっ。……でさぁ、最後にもひとつ言っとくけどぉ、だから今晩の夜中、その小鬼どもがこの家の近くをわらわら通って行くんだけどね……珍しがって、それを見ようとしたりしちゃ、駄目だよ?」

妖精は言った。

「……何で?」

私はたずねた。

「あったりまえだよぉっ!」

妖精は小さな足を踏み鳴らし、憤然として言った。

「そんな事して小鬼どもに見つかったら、どんな目に遭わされるか、わかんないぜっ。あいつらの背丈は人間の半分もないけど、もし小鬼どもに捕まったら、あいつらに頭からバリバリ喰われちゃうかもよっ?!で、そのまんまゾンビになって、化け物どもの仲間入りになっちゃうかも!それでもいいってのなら、覗き見すりゃあいいけどっ!」

「……」

何ともぞっとさせられる話だ……?私はそれに、思わず身震いした。

「その魔除けはあげるからねっ」

妖精は言った。

「とぉってもいいお守りになるよっ。だから俺がおたくにお邪魔した事、他の人間に言わないでよねっ。だって森に大勢で物見遊山で人間たちに押しかけてこられたら、俺たち、とってもメーワクだもんっ!……大事にしてよねっ、それっ!じゃあねっ!!」

と、そう言うと、妖精はブーン、と羽音をたてて飛び立ち、私の周りをくるりと一周すると、そのまま……窓ガラスをすい、と通り抜け、外へと出て行ってしまった。

窓を閉めたところで、出て行こうと思えば、出て行けたのだ?

暗闇の中に遠ざかってゆく、小さな白い光を見送りながら、私は苦笑した。


そしてその夜中……

妖精には見るなと言われたが、やはり好奇心の方が勝ってしまい、私は窓辺に椅子を持ってきて腰かけ、明かりを消すと、カーテンの影からしばらくのあいだ、ウールユーバの森の方を眺めていた。

しかし、結局はいつの間にかうとうととしてしまい、寝入ってしまった。

だがそれからどれくらい経ったものか……体が冷えきってしまったのか、私はふと寒さに目を覚ました。

あの妖精からもらった首飾りの虹色の石は……暗い部屋の中で、いっそう白い光を放ちながら、まだ宙に浮かんでいた。

私はそれを、なんとも不思議な事もあるものだな、と見つめながら思い、そしてその半分寝ぼけたままの頭で、ぼんやりとウールユーバの森の方を眺めた。するとそこには……

あの、小さな白い光が、森と、野原と、そして私の家の庭先を、せわしなく飛び交っていた。

それも、今までに見た事のないほどのたくさんの数で、青白い月の光に照らされた暗がりの中を。

「…………」

私は夢見心地がまだ抜けきっていない中で、これは本当の事なのだろうかと、我が目を疑った。と、その時、

ガサガサと、庭の向こうの薮が揺れた。

「……?」

私はそれにぎくりとして、何かの気配がする薮を見つめた。

小鬼……?

まさか。

うちの猫たちか、ネズミか何かだろう??

そう思いながも、私はそろそろと窓際から離れようとした。

すると、その薮の中から、

ギャーッ!という何かの声が響いた。

うちの猫の声……?いや、あんな……あんな気味の悪い声が、猫やネズミの声であるはずが……そして、

「あっ、そっちへ行くなってばっ!」

と、またも別の声が聞こえた。私には、それが、あの妖精の声の様に思えた。と、そう思っていると、薮の中の気配は、更に悲鳴をあげながらこちらへと……私が覗いている窓際の方へとやって来た。

「……!」

私はあわてて、窓枠の下へと身を隠そうとした。が、その時、それは薮の中からうちの庭先へと飛びだし、その瞬間……

その、小さな子供ぐらいの姿をした黒い影の周りにバチリと稲妻の様な青い光が走り、黒い影は物凄くもおぞましい悲鳴をあげた。

そして黒い影の周りに青い光が閃くと同時に、私が首にかけている石も一瞬強烈な白い輝きを放ち、その二つの光に照らされて、私はそれの姿を見ることが出来た。

それは……その黒い姿をしたそれというのは――

それから後の事を、私は覚えていない。


そして次に目を覚ますと……

すでに朝になっていた。

そして私はべッドの上にいた。ちゃんと掛け布団もかけて。

「…………」

あれは……あのタべの事は、夢だったのだろうか??

私は思った。

青い光に照らされて見た、あの、おぞましい黒い姿をしたもの……

そして私は自分の胸元に目を落とした。

あの妖精のもらった首飾りは――

ちゃんとあった。私の胸元に。

とはいっても、石はもう宙には浮いておらず、白い光も放ってはいなかったが。

しかしそれは、たしかに夕べあの妖精にもらった、細い銀の糸に繋がれた、半透明の虹色の石だった。

「…………」

あれは……

あの妖精も、あの恐ろしい姿のものも、どうやら本当の事だったらしい?

私は思った。

それから私は朝食もとらずに外に出て、タベあの恐ろしい姿のものが飛び出してきた庭先や、あの妖精が言っていた“イーユーの花”の元を見に行ってみた。

しかし、あの恐ろしい姿のものが飛び出してきた薮の中や庭先には、草木が黒く焦げてしまったところや、黄色く変色してしまったところなどを見つけることが出来たが、その他には、何も見つける事は出来なかった。

だが、次に“イーユーの花”の根元を見てみると……

土の中に、何かキラリと光るものがあった。

「……?」

私はその根元の土を、手で払いのけた。

そこには

赤や緑の色ガラスの破片や、さざれ石や、金ボタンや、貝殼や、何枚かの金貨と銀貨などが埋められていた。

私はそれらを眺めながら、くすくすと笑った。

そう、これらは……あの妖精たちの“宝物”なのだろう。たぶん。

あの妖精は、この花の根元に自分たちが埋めた宝物の事を、私には言わなかったが。

あの妖精たちは、自分たちのお気に入りの草木を台無しにされたくないだけではなく、この宝物も、小鬼に盗られたくなかったのだろう。それで……

私は再び笑った。そして私は、家の中を探して、妖精たちが気に入りそうなガラス玉やおはじきや、安物の白珊瑚のかけらや、それから奮発して銀貨を一枚、彼等の宝物に加えておいた。

あの妖精がどれだけ私に本当の事を話したのかはわからないが――あの恐ろしい姿のもの、“小鬼”と何かやっかいな事になったのは確かなのだろう。

それで魔法陣のためだか何だかわからないが、何かの理由で、私もあの首飾りをかけなければ、妖精たちには都合の悪い事があって、あの妖精は私のところに来たのだろう。

『とおってもいいお守りになるよっ』

あの妖精は言っていた。

どうだかなあ。

しかし少なくとも、あの恐ろしい姿のものからは、守ってくれたようだったが。

と、そのイーユーの花の前にいる私に、黒虎毛がいつの間にか擦り寄ってきて、私の膝に頭をこすりつけ、ゴロゴロと喉を鳴らした。


私はその黒虎毛をなでながら、今度また猫たちにあの妖精が捕まえられてきたら、首飾りのお礼を言わないといけないな、と私は思った。




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