ー『異常』からの3ヶ月目ー
どうも、響です。普通のOLです。
現在午後16時で今日は会社はお休みでした。
冒頭での自己紹介はもういらないでしょう。
そこの部屋の隅で突っ立ってるのが同居人の人外
『スミスさん』です。
『…………………………………』
このクソ暑い中、あんな黒いローブを着ているとか信じられません。
ところでこの3ヶ月で色々あったので通称『スミスメモ』で軽くまとめてみました。
・多分、男性
・基本部屋の隅から動かない
・顔がどの角度からでも見えない
・1週間に1回は「座った状態でいる」
(多分休憩?)
・座っている時にお水かウィスキーを置いて
おくと翌日キレイになってテーブルに置いて
ある
・多分ウィスキーが好き
・最近はウィスキーがないと怒っているような気がする。(圧を感じる)
・実は「白 い 剣」と「短 剣」を持っている
・1回だけ物凄い速さで私を斬りにきた
(斬ったものは多分私の後ろにいた「何か」)
・動く時はメッチャ速い。⤴︎
・帰宅時、部屋鍵を会社に忘れた時に内側から
開けてくれた。
・会社の同僚達で宅飲みした際に、居心地が悪
くなったとき『剣』 で私を『隠してくれた』。
・月に『1度だけ』いない日がある。
・帰ってからよく見ると身体に『キズ』が幾つかあるようにみえた。←new
こんな感じです。特に「月に1度いない」は
先月もありました。ちゃんと約束通り「短剣」は床に刺してくれましたが…
問題は「傷」です。最初の1回は気付けませんでしたが、2回目帰ってきた時に「噛み傷」や「刃物」で斬られたような傷がありました。(一応かすり傷みたい)
なのでボトルスプレーに消毒液を入れて吹きかけました。
まったく。
何をしてるんでしょう。まさかホントに見かけ通り「死神」とかなんでしょうか。
「そこらへんどうですか?スミスさん」
『……………………………………………』
これだもん。いつまでも同じ反応だと飽きられますよ(?)
ピンポーン
「はーい」
来客です。
今日は前回のような嫌な感じではありません。数少ない大事な私の友人です。
「やっほい〜久しぶりに響ん家に到着〜」
〜鈴木春夏〜
いつもの軽いノリ。背は155cmくらいで髪も肩まであって薄い茶色が入った今どきのオシャレな女子です。
私みたいに地味な感じではないです。ええ。
「はいはい、とりあえず中にどうぞ。」
「うぃー!」
今日は私の部屋で女子会をすると約束していたのです。
彼女の提案はいつも急なんですが、癪に障るとか嫌な感じにならないので不思議です。
これが相性ってヤツなんでしょうか。
テーブルイスに座りながら春夏が
「てかさ、響ってプライベートでも敬語口調だよね。なんかしきたり?」
しきたりって何ですか。どこのお嬢ですか。
「別に良いじゃないですか。会話に支障はありません。」
彼女は顎に手を当てて考える素振り(可愛い)
「確かに…それが響だもんね。今更だったわ失敬失敬」
「分かればよろしい。」
…これなんですよね。多分。彼女は踏み込んでから『良いか悪いか』を判断する。少しでも「あ、やべ」って思ったら即座に距離を取る。
まあ今のやりとりには、そこまで深いのはないと思いますが。
「ウィスキーにする?それともウィスキー?」
飲み物を確認します。
「ウィスキーしかないじゃん。自分でチューハイ買ってきたよ。」
これは失礼をば。何せ「同居人」もウィスキーが好み故。
まあならばとりあえず
「「カンパーイ」」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
1時間後
春夏が何気に聞いてきます。
「響ってさ、今って恋愛とかまだ興味ない感じ?」
んー…どうなんでしょう…
「んむむ…良い人がいれば…って感じですかね」
「響らし過ぎてあくび出そう」
なんだてめぇ、やるのかてめぇ
「春夏は今はお付き合いしてる人いますよね?」
確か2ヶ月前に通話して聞きました。けっこう好青年だとか。
「ああー別れたー。」
早い!!この子が3ヶ月以上持ったことがあるの見た事がない!
「…どうしてそう続かないんですかねぇ…」
半ば呆れ気味に聞きます。
春夏からは
「いや良い人なんだよ?でも何つーか私の問題なのかなぁ?多分…相手は悪くないんだよ。…うん。」
…不思議な子です。普通こういう場合は他責にいきそうなんですが、彼女から「別れ話し」を聞く度に「多分向こうは悪くない」ってのが結論としてついてきます。
では彼女の何が問題なのか!
………………分かりません!
なんとなく触れてはいけない気がするのです。そして聞いて欲しい時は春夏の方から必ず言います。
……ん?
待てよ?
これって私から聞いてくるのを待ってる?
いや春夏に限って、そんなまどろっこしいことは…
何故かふいにスミスさんを見ます。
『………………………………………………』
変わらない光景。不動の同居人。けれど
この不気味で寡黙な人に私は何回も助けられた。
スミスさんは「必要な時」以外、動かない。
私、田中 響は「大事な人」の力になれるなら動けます。
踏み込んで良いかどうかは「踏み込んでから」考えます。目の前の親友が教えてくれたから。
「ねえ、春夏?」
少し『らしくない』自分に緊張します。
「にゃに〜?」
さっきのしおらしい態度はどこへやら。
でもこれも「彼女の特性」だと私は知っています。
とても優しい彼女。大学1年から変わらない姿勢。
「誰かと付き合って終わる度に、春夏は自分が悪いって言うけど、どうしてそう思うの?」
「……!」
春夏が意外そうな表情を見せます(可愛い)
そうですよね。『以前』の私なら多分聞きませんもん。
「……………いやぁ…実はさ……好きな人がいるんだよね。」
??少し分からないです。好きな人が出来たから別れたってこと?
「いつからいるんですか?」
すると春夏が少し気まずそうに
「だ、大学1年の時…から…?」
なんと、それは初めて聞きました。長い。
いや約6年!?
なるほど!つまり!
「大学1年の時から好きな人が忘れられず、忘れようと他の男性と何度お付き合いしても忘れられない哀しい青春の残骸ってことですね!?奥さん!(?)」
ズバリ!これです!
春夏が唸りました。まるでナイフで抉られるように苦しげです(可愛い)
「がァ…!ゴフ!せ、成長したね…響…あと容赦ないね…」
ふふん
伊達に人外と生活していません!
「さて」
指を鳴らします。これぞ女子会の醍醐味…のはず
「もう逃げられませんよ(?)」
「ひぃ!」
春夏の後悔とも何とも言えない表情。
……とりあえず座りましょう。
「では質問です。」
「はい…」
春夏の「もう逃げられない、観念した」表情。
「大学1年から好きと言っていますが、その方とは面識は?」
「あ、あります。」
「では友人の中の1人…という事ですね?」
「…そういうことです。」
ふむふむ、なるほど、さっぱり分かりませんが踏み込んでいきましょう。
「ズバリ!その方のどこが好きですか!?」
ドン!と音が鳴る感じがします。
「え、えぇ!?い、言わなきゃダメ?」
ふむ、普段は勝ち気なくせにこの困った表情。悪くないです。
「金は雄弁、銀も雄弁です(?)」
逃がしません。ふふ…春夏の珍しい一面が見れて少し楽しいと感じます。
「……そ、その人はさ、自分に自信がないんだ。」
ふむ
「初めて見て挨拶して最初は何も思わなかった。」
ふむふむ
「サークルとかでも一緒で…なんていうか頼られやすい?見た目もあいまって私はカッコいいなーって思ってたの」
ふむふむふむ
「でも本来その人は人間関係が苦手で、ホントは頼られたくなくて、きちんと『自分の世界』があって」
「どれも私が欲しかったものは、この人にとっては「重み」なんだって気付いたら…なんか目で追ってた」
ふむ、とりあえず可愛いです。続けて。
「私さぁ…あの時は実は大学デビューだったんだ。」
なんと意外です。
「だから人に好かれたくて、でも上手くいかなくって」
うん…うん…
「そのときその人が言ってくれたんだ。
『自分を大事にしてくれない人と無理にいる必要はないと思いますよ』って」
うん…うん…
「そ、そこからかなぁ〜、あー恋愛対象として好きなんだなーって思ったの…」
うんうん、不思議かな。春夏がその人のことを本気で好きなのが伝わった気がします。
「…春夏?」
ビクっと反応します。もはや小動物です。
「は、はい…」
「そんなに大好きな人がいるのなら、自分の気持ちを上書きしようとしたらいけません。」
「うん…」
「春夏はとても可愛いです。見た目も中身も。私が言っても説得力がありませんが。春夏は自分で思っているより…」
「そんな事ないよ…むしろ」
むしろ?
「あ!あわわ!ちょ、ちょっとトイレ!!」
春夏、顔真っ赤ですな?お酒は強いはずですが。
あとなんか涙ぐんでるような、まるで一世一代の告白したあとのような…
よし、トイレから戻ったら、ここは親友として彼女を抱きしめーー
ゴン!っと頭に衝撃が…
ス…スミスさん…
まーじで痛い!何これ!?
国語辞典?
なんかご丁寧に何枚か付箋が貼ってあるよ!
なんじゃあ!今更なにを学べと!
『彼女』『勇気』『称える』『伝心』『想い』『同性』
ほ???
………………ん???
春夏から出たその『好きな人の特徴』
彼女の振る舞い。
何よりー『自分を大事にしてくれない人と無理にいる必要はないと思いますよ』ー
これ……わたし…誰が言ったか心当たりが……
………え??
春夏が好きな人………
わたし???
まさかの展開になりました。




