ー『異常』の初日ー
田中 響(女性)+黒衣の人(性別不明)
「めんどくさい……」
私の朝の第一声は大体これから始まります。
当然です。ベッドから起き上がるのすら億劫です。
しかし起きなければ会社に遅刻して業績と印象が悪くなるのも事実です。
………意を決して起き上がります。
『…………………………………………………』
(………………は?)
何ですか?
誰ですか?
痴漢ですか?
不法侵入ですか?
いるんです。目の向こう側に『黒いローブ』に身を包んだ何かが。
「…え…ちょ…」
何なのかは分かりません。でも何か「何もないようであるような」そんな感覚。
相手から目が離せず、
けれど身体は動きます。
ゆっくり玄関に後ずさりながら。
「…え?…なに? な…に?」
一歩ずつ…ゆっくり…
玄関に着いた瞬間………
ダッシュ!!!
ダッシュです!!冗談じゃありません!!
朝起きたら侵入者がいて明日の新聞の三面記事に載るなんて御免です!!
寝巻き・紙ボサボサのまま近くのコンビニに事情を説明して警察を呼んでもらいました!
(スマホは部屋です。)
10分後に警察官2名がコンビニに到着しました。私、事情を説明。ちなみに会社にも説明してお休みもらいました。
今、アパートの部屋の前です。
警察お二方も私の様子を見て少し緊張した面持ちでドアを開けます。
警官の1人が「ここで待っていて下さい。」
と言ってくれたので待ちます…
そんなに広くはない1DKの部屋です。5分程して警官2名が戻りました。
結果は「異常ありません。」
おい、マジですか。
「入った形跡も出て行って形跡も見当たりませんでした。念の為、他の場所も調べましたが、特には…」
…いなくなった。少し気分はホッとしました。
警官お二方は「もしもまだ不安があるようなら定時巡回もできますが…」
……このあたりで妥協しておかないと「私が変な奴」と思われそうなんで「分かりました。よろしくお願いします。」と伝えて警官2名は帰りました。
「………」
部屋の前で立ちすくみます。はぁ…中入ろ…
まあ居ないならとりあえずはーーー
『………………………………』
部屋の隅に当たり前のように。
朝と同じ場所。同じ位置。同じ格好。
「……めっちゃいるじゃねえですか…」
いる。ただいる。当たり前のように。
まるで【当然】のように。
「……な、何なんですか?…ここには何もありませんよ?…お、お金だって…いえホント…マジで…」
『…………………………』
一切微動だにしない。
い っ さ い 微 動 だ に し な い
声も発さない。
あれ?これ…
人間じゃなくない?
「……あの…ひょっとして幽霊的な方ですか?」
私は確認します。
でもこの人(?)の反応は変わりません。
『………………』
無言・無造作・無表情
……無視です。
(殴ってみようかな?)
てか頭にローブを被っているので表情は分かりません。
でも何故でしょう。「敵意」とか「殺意」的なものは感じないように思います。朝はびっくりしましたが
あまり「恐怖感」がないのです。不思議です。
「………………………」
『………………………』
マージで微動だにしません。
このままでは埒が明かないので私から提案します。
「...ここ...私の部屋なんで...(家賃が安いから)住んでても良いですよね?」
『………………………………』
無言・無造作・無表情
また無視です。
(塩ぶっかけてみようかな。)
私は勝手に
「ど、同意したと受け取りますからね!」
ここから私達2人の奇妙な生活が始まりました。
日常の中の異常、異常の中の日常
そんな堅苦しい事は抜きにして、これからの2人(?)のライフを見守っていただけると幸いです。




