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21話 気付かない二人

静かな朝。

森の奥に柔らかな光が差し込み、鳥の声と小川の音が混ざり合う。


皆がまだ寝ぼけたように準備をしている中。

ジンとフローナだけが少し離れた場所で向かい合っていた。


理由はシンプル。

今日のルートを確認するためだったのだが・・・。

周囲から見るとどう見てもいい雰囲気だった。



「フローナ、昨日の戦いの傷はどうだ」


ジンはいつも通りの声で尋ねる。


「え?あっ、うん! もう全然平気だよ!」


フローナは両手をばたばた振って笑って見せる。


ジンはその姿をじっと見て、ほんの少しだけ視線が柔らかくなる。


(かわいい・・・)


と、胸の奥で思うがもちろん口には出さない。


「あまり無茶をするな」

「だってジン君が後ろ守ってくれてるから・・・つい」

「・・・それは、信頼してくれているという意味か?」


「う、うん、信頼してるよ」


途端に互いの顔が赤くなる。




少し離れた草むらで、チェル・ラナ・ノエル・サラ・ひまわりがこそこそと観察していた。


「ねぇ、あれはもう確定じゃない?」


ラナが腕を組む。


「いやぁ〜、あれは両片思いの匂いしかしないですねぇ」


ノエルがにやにや。


「二人とも不器用すぎますわ」


サラが笑いをこらえている。


チェルは頬をかきながら言った。


「でも、ジンもフローナも言わないよなー。

絶対想い合ってるのに」


「ジンは鈍感、というより責任感強すぎて自分の気持ち後回しにしそうだしね」


ラナがため息をつく。


ひまわり「愛してるのに言えないの〜?」

チェル「色々あるんだよきっと」

ひまわり「人間ってたいへん!」



フローナが地図を広げる。

ジンは後ろから覗き込むようにしてその肩に少し触れた。


その瞬間、フローナの心臓が跳ねた。


(ジ、ジン君が近い!!)


ジンは逆に、触れてしまった自分の手を素早く離し、

無言で咳払いする。


(だめだ、落ち着け、武人らしく・・・)


と心で必死に言い聞かせながら、顔がほんのり赤い。


「こ、ここの分岐は南と北に分かれるな」

「う、うん。えっ、ジンくんはどっちがいい?」


「フローナが行きたい方でいい」

「えっ!?な、なんで私?」

「フローナの笑顔が見られる方が・・・」


ジンはそこで言葉を止めてしまった。

自分で言いそうになった言葉に驚いたのだ。


フローナは顔を真っ赤にして固まる。


二人の間に、静かで甘い空気が広がった。



草むらの中。


「今の聞いたー?」


チェルが小声で言う。


「聞いた聞いた!!」


「これ以上は野暮かもしれないですわね」


サラが微笑む。


ラナが短く言った。


「こういうのは二人でゆっくり進むのが一番よ」


チェルは頷く。


「いつか、ちゃんと伝えられる日がくるといいな」


「フローナちゃん、頑張れ〜」


ノエルが草の影でガッツポーズをした。



ジンは深呼吸し、フローナをまっすぐ見つめた。


「今日も、頼りにしている」

「う、うんっ、ジン君も気をつけてね」


その一言が、どちらの胸にも暖かく響いた。


まだ恋人ではない。

でも、お互いだけが気づいていない想いは確かに二人を繋いでいる。


その距離が縮まるのは、

あと少しの勇気が生まれた時だろう。


そしてその日が来るまで、仲間たちはそっと見守るつもりだった。


両片思いの物語、静かに進行中。

 

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