ファーストワールド
俺が死んで、産まれ直して、はや十年。俺は転生したことに、ようやく気づいた。
「いぃぃよっしゃあぁー!」
初めの、家族への申し訳なさはどこへやら、ラノベや漫画のような展開に興奮していた。
この世界には特殊能力というものがある。実を言うと、初めの世界でも特殊能力は存在していた。
この世界と、初めの世界との違いはさほどない。違うのは、能力を持った者、能力者の数の違いだ。
初めの世界は能力者はまったく見かけなかった。テレビに出ているのをたまに見る程度だった。
この世界では、能力者が当たり前に存在している。街を歩けば、すぐに見つかる。
さて、そんな世界なわけだが、俺は転生者。つまりどういうことか、わかるだろう?
ここは病院。能力を所持しているかを検査する場所だ。いまは検査結果を待っている状態だ。
わくわくしながら、ただただ待つ。そして、運命の時。
「うーん。能力。無いね」
「ガーーン」
落胆した。こういうのは、超ツエェー能力が手に入るか、使える雑魚能力が手に入るものじゃないの?やはり、創作は創作か。
「無いかあ」
「そっかあ」
両親はさほど気にしていないようだ。そして、医者も。
これでは、無能力からの成り上がりも期待できない。
まあ、普通に生きるか。どうやら、無能力が迫害されることはないようだし。
病院を出て、ちょっとした広場に来た。自販機でぶどうジュースを買って、ベンチに座る。
癖で、ぶどうジュースの入ったペットボトルをくるくると回す。なんだか、バーに行くような大人みたいな気持ちになる。実際は炭酸でもないジュースで、俺はコーヒーも飲めない子供だ。
「遅い」
真夜中、静かな広場に、声が響く。同時に、一人の女が地面に叩きつけられた。
ヒュンという音と共にフードを被った不思議な人が降ってきて、綺麗に着地した。
「くっ。こんな、ところで…」
「…もう終わりか?」
何やら、大切な会話をしているようだ。俺はジュースを一気に飲みきり、立ち上がる。静かに、彼らと反対の方向に逃げるように歩き出す。
「邪魔者がいたか」
俺の脚が吹き飛んだ。痛みを感じるまもなく。
「…さて。邪魔者もいなくなった。話をしようか」
俺はもう死んだ、という扱いらしい。確かに血は出ている。これが死ぬ量なんだろう。
「神に従い、何も考えずに行動するのはやめろ」
「何を…!」
「『門』」
「…!?何故それを」
なんだこれ。すごい主人公っぽい会話してる。良いなぁ。死んだならせめてこういうのを体験したかった。
視界がぼやけて、時間がゆっくりに感じる。二回目だが、わかった。死だ。
また、死ぬ。転生に、二回目はあるのだろうか。恐ろしくなってきた。年齢は、通算二十七歳。まだ、足りない。もっと生きても、良いはずだ。
また、起きたいなあ。