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第7話

俺、狙井蓮(ねらいれん)。美少女二人とおっさんと眠ることに。


「なに、皆んなここで生活してるの?」


信じ難い現実に、

俺は目をパチクリとさせるしかなかった。

実際ベース俺死んでるから、

現実かどうかなんて実際わからないけど。


「そうですが、なにか? 大体ワタクシ達の、

国の財政状況はお話しましたわよね?」


してたっけ? あんまり覚えてないな。

一億稼いでこい、

パチンコ店ってなんですかくらいしか言ってなくね。


「一億稼いでとしか言われてないよ。

大丈夫かよこの国」


国の維持って大変なんだなと、

死んで改めて実感する俺なのであった。


竜狩りしてる暇ないんじゃないかこれ。

娯楽以前の問題だろ。


「稼いでこいと言ってるから財政困難なのでは?」


なるほど確かに一理ある。

いやあってたまるか。限度ってもんがあるだろう。


「あの、もしや勇者様は個室がほしいのですか?」


「んなっ! なんて贅沢な!」


リーチェの後に続いて、レグナは変に怒りを見せる。

確かに個室欲しいは贅沢かもしれない。

死んで改めて両親の凄さを実感する俺なのであった。


だがさすがに俺がここにいるわけにはいかないだろ。

オーフェルは家族だろうし、

レグナと寝るのはまあ、いいとして。


ん? いやまてよ。

てかオーフェルって今までリーチェとも寝てたの?


よしまずは警察を作ろう。

いや、しかしだ。

警察作るとパチンコ店作るの面倒になってしまう。

ちくしょう。犯罪者を見逃してしまった。


「個室とかじゃなくて、俺がここで寝る訳には……」


引き気味に言うと、なぜか二人は首を傾げる。


「な、何か問題が……?」


「相変わらず何を言っているのか理解に苦しみますわ」


リーチェもレグナも、当たり前のようにしている。

これはあれか。

俺の倫理観がここでは通用しないんだな。


「……あのメイド達解雇していい家住めばよくね?」


酷な話ではあるが、それしかないだろう。

ていうかメイド達は給料支払われてるのか?

かなり心配になってきた。

今それ俺の世界じゃ大問題になるよ。


「心配には及びませんわよ?

あのメイドは魔法で用意したものなので」


「なーんだそれならよかった」


どうやら、

給料未払いのメイドは最初からいなかったようだ。

それを聞いて俺は安心してしまった。


「なんでよ? なんで魔法で用意したの?」


「勇者を迎える為に見栄を張ったんですの」


俺の問いに、レグナは誇らしげに答えた。

そんな誇れるところじゃない。

下手すりゃ詐欺罪に問われるぞ。


え、これ詐欺に問えないかな。

オーフェル俺にメイド付けるって言ってなかった?


「パラクステリア王国に仕えるメイドは、

私だけですっ! 勇者様!」


リーチェは小さな胸に手を当て自信満々に言い放った。

可愛いけど今はそれどころじゃない。


「どうしたのだ勇者よ。入り口に突っ立って」


突然背後からおっさんの声が聞こえてきた。


「うわぁっ!」


普段からふいに鳴り響くガコンッ、

という音すら慣れているというのに、

今日に関しては自分でも驚く程声を出してしまった。


「オーフェル様! おかえりなさいませっ」


「うむ。ただいま」


生活感溢れる仲睦まじい風景だが、

方やメイド、そしてもう一人はこの国の王である。


今日はこの人数で一晩明かすってことなのか。

明日から帰る方法全力で探そうかな。


「ところで勇者よ。立ち話もなんだ、座りなさい」


オーフェルは部屋の真ん中に置いてある、

茶色の丸いテーブルの座布団に腰を下ろした。

なんだろう、コレジャナイ感半端ない。


「えーっと、色々聞きたいことが増えてしまった」


促されるまま、

俺はオーフェルの向かい側になるように腰を下ろす。


「リーチェよ。

これ冷蔵庫に冷やしておいてくれるか?」


「かしこまりました!」


オーフェルはコンビニで買ってきたような感じで、

袋をリーチェに渡す。


俺も稼働終わりに、

コンビニの袋から冷蔵庫に補充するんだけど。


この異様な生活感、

どこか懐かしくもあるが頭が混乱してきた。


「お父様が隠すから、説明が面倒なんですけど?」


レグナは入り口から近くの座布団に腰を下ろした。


「むぅ。やはりそうか。それは悪い事をしたなぁ」


「ほんとだよ……」


まず何から聞き出せばいいんだろう。


「あの、この城って下の階はなにがあるの?」


「下の階?

あぁ、あれも魔法で用意したものですわよ?」


どういうことだよ。

なんで俺の質問に当たり前の事みたいに、

レグナは答えられるんだ。


「あれは国民に安心してもらう為の見栄ですわね」


続けてレグナがとんでもない発言をした。

そんなに見栄張って悲しくならないのだろうか。


「民にはこの城への侵入を禁じておるからな。

見つかる事はないぞ」


オーフェルも当たり前のように言った。

そうか、なるほど。

だからここに入る時リーチェは上空から入ったのか。

妙なところで納得してしまったけど、魔法って凄いな。


「……あの、明日の土地の件って大丈夫……?」


一番気になるのはやはりそれだった。

許可を一度得ているとはいえ、

見栄張り家族に付き合わされたんだ、

不安にもなってくるのが必然だろう。


「それは、大丈夫だ。失敗はできないがな」


オーフェルは目を細めながら、

リーチェに用意してもらった茶を啜りながら答える。


さらっと釘を刺された気もしたけど。

しかしまあ、建物がどうにかなるなら大丈夫だろう。


魔法もなんだかんだ凄そうだし、

パチンコ店としては、

まずまずいいスタートを切れそうだ。


「それならよかった。とりあえず

明日は国を見て周ろうと思ってるけどいいかな」


あとはやっぱり、生活を見る事だろう。

城がこれだけ財政困難なら、

国民はどんな生活してるのかな。


「でしたら、

明日はワタクシが案内してさしあげますわ」


「え、嫌だけど」


レグナの誘いに秒で返した俺は、

怒られたが気にしない。


一緒に来てもらうならリーチェがいいんだけどな。

メイド付けるって言ってましたよね?


「私が同行したいのは山々なんですが……。

明日は別の用事があるんです。すみません勇者様」


それなら仕方がないだろう。

という事は明日一人かあ。

道に迷わないようにしないと。


「……貴方、飛べますの?」


「ここから落ちたら俺って死ぬかな」


なんとなく想像は付いていたんだ。

入り口が二階にある時点で、

飛べないとダメじゃねって。


でもほら、俺死んでるからさ。

なんかもうさ。

これしきのことでは無傷で済むかもしれないじゃん。


レグナが疑問をぶつけてこなければよかったのに。


「死ぬと思いますわ」


どうやらそう上手くはいかないらしい。

もう俺に羽つけてくれた方が嬉しいんですけど。

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