第6話
パチンコ、スロットという、
遊びの概念が存在しない世界に来た俺、狙井蓮。
パチンコ屋がないなら作ればいいじゃないと、
偉人も泣いて恨んでそうな、
そんな名台詞を考えた俺は経営者になる事に。
「質問なんですけど、
魔法で工作みたいな事ってできる?」
まずこの世界について何も知らない俺は、
魔法について聞いてみる。
死者を召喚する事ができるんだし、
何か出来そうとは思えるが。
「ふんっ、ワタクシを誰だと思っているんですの?」
「召喚に失敗したなんちゃって魔法使い」
少なからず、
俺の中でレグナの第一印象はそんな感じなのだが。
少々本音で話し過ぎてしまったようだ。
本気で怒ってそうな目付きでこちらを睨んできた。
「……まあ、図かなにかあれば作れそうか」
「何を作る気なのだ? 勇者よ」
いい加減その呼び方やめて欲しいな。偽物店長め。
だがしかし、
オーフェルの真剣な眼差しが、
その事を言う気力すら削がれてしまう。
しかし台に関しては問題なく事が進みそうだ。
それなら、後の問題は店舗を構える場所だろう。
「店を建てたいんだけど、王様」
こればかりは、国の王に頼るしかない。
建物を建てるにはそれなりに資金が必要となる。
魔法の世界ではどうなのかわからないが、
まあそれでも国王に聞くのが、
一番手っ取り早いし確実だろう。
「建物、か。うーむ」
オーフェルのこの反応を見る限り、
やはりこの土地でも必要なのは資金なのだろう。
仮に魔法一つで建物を建てられるなら、
ここまで悩む必要もないはずだ。
しかもそれなりに大きい店舗がほしいからな。
パチンコ店で大事なのが立地。これに尽きるだろう。
いいところに店を建てる事ができれば、
電車通勤をする社会人の帰宅時間を誘惑できる。
社会人はその甘い香りに釣られて足を運ぶのだ。
それだけ立地という条件は、
かなり重要な経営策略の一つといえるだろう。
この世界に社会があればの話なんだけどね。
「わかった。勇者に委ねよう」
そこまで言われると弱いんですけど。
この人狙ってやってるのかな。
しかし許しを得た事に変わりはないので、
土地に関してもクリアしたようなものだろう。
後何か必要なものは、スタッフか?
しかしここはパチンコという概念がない世界。
そんな世界の中、ここにいる人達に教育するのは、
少し億劫だし、割と時間がかかりそうだな。
パチンコ店における接客は、かなり重要だ。
教育が杜撰だと顧客は次第に離れていってしまう。
店が設定を入れても、
常連という存在がいないと成り立たない。
設定に飛び付くのはプロだけだ。
プロしかいないような店は潰れていってしまう。
しかし、
だからといってプロがいないような店も危険である。
この店は設定を入れる店として認識させないと、
仕事終わりのサラリーマン達は食い付かない。
店側としては、
顧客に気持ちよく負けて頂くという理念を持つ。
この気持ち良くというのが、
特に店員の接客態度が重要となるのだ。
「そうだなあ。最初だし、
総設置台数は三百台くらいがいいかな」
パチンコ店第一号としては理想の台数だろう。
規模的にいえば中型店舗くらいの規模感はある。
まずこの規模で成功させて、
次第に大きくさせていこう。
「そうせっち、台数?」
「あー。三百台似たような物を作ってもらうだけだよ」
聞き慣れない単語だったのだろう。無理もないが、
レグナは首を傾げていた。
わかりやすいように説明しているつもりでも、
実際何も知らない状態で、
一から教えていくのは骨が折れるなこれ。
「……よく分かりませんが、分かりましたわ!」
分かってないって事が分かったって事?
それ言っちゃうとアホの子みたいになるけどいいのか。
自信満々に答えるもんだから何も言い返せない。
「ま、まあ。今日はこれくらいで。
明日から色々と作業に取り掛かろう」
今日はもう色々な事が起こり過ぎて疲れた。
体感一万回転くらい回したんじゃないかな。
明日店を用意してもらうとして、
場所の下見もしておきたいな。
いや、下見の前に俺ここの住民の生活を見てみたい。
竜狩りを娯楽としている野蛮族が、
一体どんな生活送っているのか。
それを調査するのも今後の課題になるだろう。
「おぉ、そうか。
では寝室へ案内しよう。レグナ、案内しなさい」
「ワタクシがですか……? わかりましたわ」
メイドに頼めばよくない?
俺この人といるの嫌なんだが。
なんか刺されそうなんだもん。あれ結構痛かったぞ。
「メイドの仕事を奪うのか……」
「っ、ま、まぁ。ワタクシがご案内しますわ!
ついてらっしゃいな」
そんな変なこと言ったつもりないのに、
メイドという単語に反応し、レグナは声を荒げた。
俺は彼女に言われるがまま、王座の間を後にする。
玉座を出て右側に進んでいくと、
そのまま寝室に辿り着く。
この部屋って国王の寝室とかじゃないか?
というかなんか、結構狭いですね。
「あっ、お帰りなさいませレグナ様」
その部屋には先客がいたようだ。
メイド服を着た金髪ツインテールの美少女。
この人最初に出会ったリーチェだ。
「勇者様も! お話は終わったんですね!」
「う、うん」
なぜかは分からないが、
リーチェと話す時は言葉が詰まってしまう。
いい加減慣れてくれ、俺。がんばろうな。
「ここが貴方の寝室ですわ」
あ、ここ俺の部屋なんだ。だから小さいのかな。
もっと待遇良く扱ってくれてもよくないか?
布団だって敷布団だし。
普通デカいベッドがあるもんじゃないの?
「ていうか、なんで布団四つも敷かれてるの?」
「? なんでって。
ここは私達の寝室でもあるんですよ?」
俺の疑問に真っ先に答えたのはリーチェだった。
いやまってくれ、なんて言ってたっけ。
隣のレグナを見ても、
目を逸らして合わせようとすらしない。
「……だから隠し通せる訳ないのに」
レグナは小声でそんな事を言っていた。
ため息も若干混じっていた気もするが。
さて、どういうことなんだ。
布団が四枚ということは。
俺、リーチェ、レグナ……後一人は?
まさかと思うがオーフェル?
嫌だななんで俺おっさんと相部屋なんだよ。
「よくお聞きなさないな?
ワタクシ達にはお金がないんですわよ?」
まさかの経済状況のようだった。
国がこれって。もう破綻してるようなもんだろ……。