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第4話

パーラークステリアの店長、

オーフェルとの邂逅を果たした俺、狙井蓮(ねらいれん)


握手を求められ、

まだプロらしい行為も迷惑行為もしてない筈なのに、

出禁を宣告されるのかとヒヤヒヤしてしまった。


「えーと。はじめまして。

狙井蓮っていいます、勇者じゃないです」


ここで断っても店長の機嫌を損ねてしまうので、

握手には応じた。

設定入れてもらえないと勝てないし仕方ない。


「うむ。いや、召喚の件はすまなかったね」


この店長は俺がここに呼ばれた事を知ってるのか。

ということは、

俺をここに呼んだのはパチ屋側なのか?


俺はプロとして、

パチンコ屋に入り浸り生計を立てている。

店側からすれば決していいものではないだろう。


そんな彼等が、俺を呼んだ理由とは一体?

しかしそれよりも、一番聞きたいことがある。


「あの、周年っていつなんですか?」


先程リーチェにも聞けなかった事を店長に聞いた。

さすがに店長なら自分の店の事は知ってるだろう。


「そうだったな、君の執念を晴らす為に、

君をここに呼んだのだ」


この反応、

もしかしたら周年日はまだなのかもしれない。


ホールは一階だけなのだろうか。

二階がスタッフの休憩室、

事務所になっている構造のようだ。


「君には、我が国の財政を立て直してほしいのだ」


財政。収支のことを言っているのだろうか?

俺が元の世界に帰る為の条件というやつだろう。

もちろん受けて立つとも。


「お安い御用ですけど、

どれくらい稼げばいいんですか?」


「む? そうだな……。

ざっと、一億クラウンくらいか」


日本円でいくらなんだろう。

メダル換算でどれくらいのこと言ってるんだ。


「いくらすか、それ」


「そ、そうか。

君の世界の通貨とは異なるのか……。うーん」


もしかして俺、簡単に帰れないのだろうか。

周年日だけ勝てば帰れると思っていたんだが?


ちょっと話が違うな。恨むぞあの声の主。


「そうだ。君にメイドを付けよう。

わからない事もあるだろうし、教えてもらうといい」


名案だとばかりに、店長はそう言った。

色々教えてくれるのはありがたいが。


「うーん。じゃあ、そうします?

あと、フロアマップをください」


「ふろあまっぷ? ……あぁ! 地図の事か!」


フロアマップ通じてないのか。

もしやこれが俗に言う、

パチンコ、スロットに興味ない店長ってやつ?


でも自分の店の事くらい、

少しは把握しといた方が良いんじゃないのか。


しかしこの感じだと、設定も適当に入れてそうだな。

ここのホールで勝つ必要があるなら、

当日は相当厳しいかもしれない。

設定狙いは一旦やめておくべきだろう。


「あ、あとここってパチンコとスロット、

それぞれ何台ずつあるんです?」


「ぱ、ぱち、んこ? すろっ、と?」


この店終わりだ。主任が設定弄ってるのかなこれ。

そうであってほしい。


なんで初耳です見たいな感じなの?

この店大丈夫? 外見だけ?


「え、設定とか誰が入れてるんです?」


客が聞くわけにはいかない質問だが、

さすがに聞かざるを得ない。


「せっ……なんだそれは」


さようなら、我がマイホ。

貯メダル全部下ろしたかったよ。


もしや、俺は騙されたのだろうか。

周年前にこの店の状況、

さすがに俺には打てない……。


「えぇ? 俺何のために呼ばれたの?」


そんなことを嘆いていると、

不意に後ろの扉が開く音が聞こえた。

乱暴に開かれ、つい反応してしまい振り向く。


すると、何とも可愛らしい女性だろうか。

青がかった長い髪を腰まで伸ばし、

派手なドレスを着こなす姿。


登場リーチ発生したとしたら、

結構期待できるのではと思える程の圧を放っていた。


「お父様!」


その声の主は、

店長の姿を確認してどすどすと近付いてくる。


何故か怒っているようだが、

今は大事な話をしているのに。

割り込みはやめて頂きたいのだが。


「召喚に失敗したとはどういうことですの!」


お嬢様みたいな喋り方でづけづけと入り込む。


「むっ、レグナか。客人の前だぞ、はしたない」


あと会話にいきなり割り込むな。

割り込んでいいのは保留変化だけだ。


青保留みたいな髪の色なんて言うつもりなかったが、言わせてもらう。

外見は可愛らしいのに、勿体無いと思った。


「客人?」


店長の言葉に反応し、

先程まで気にしないで歩いて来た道を、

辿るように振り返ってきた。


「……まさか、これが勇者?」


「こ、これっ! 何を言うかレグナ!」


いきなり人を見るや否や、

コレ呼ばわりされる始末であった。


この店の店員の接客はよさそうなのに、

この子のせいで店がダメになっていきそうだ。


しかし、この声には何故か聞き覚えがあるような。


「ワタクシが召喚した勇者がこれは、

納得いきませんわっ!」


幼い子供のように、地団駄を踏むレグナという女性。

人は見かけによらぬものとは、

よく言ったもんだと改めて思う。

ていうか、俺を召喚したって言ったか?


「え? まさか、声の主?」


「そ、そうなのだ勇者よ。

娘の無礼をどうか許して欲しい」


人を勝手に呼んでおいて、

いざ来てみればコレ呼ばわり。

許せる要素がどこにあるんだろうか?


「わかった。許すから俺を帰してくれない?

ゾロ目イベントだから閉店まで打ち切りたいんだよ」


まあ、狙い台で殺されたんですけどね。

もし帰れたらその直前までに戻れると思っていた。


直前がダメでもほら、

実は刺されたけど無事でしたとか。


「ふんっ、残念ですが、

貴方はもう戻れませんわよ。狙井蓮」


「え……? そんな、話と違うぞ嘘吐きが!」


レグナは腕を組み、

しらばっくれるようにして言い放った。

その言葉に、

どうしても納得のできない俺は反論したのだが。


「はぁ? そんな約束していませんもの。

大体貴方ね初めてお会いするのに、

礼儀がなっていないのではなくて?」


人をコレ呼ばわりする人に礼儀を説かれても……。

しかしくそぅ。戻れないのかよぉ。


「周年で勝てば帰らせるだろ普通……」


「貴方の普通がわかりませんけど?

貴方殺されたんですよね?」


まだわからないじゃん。

そこで確かに意識が途絶えたけど、

まだ死んでないかもしれないだろ。


勝手に人を呼んでおいて帰らせないだなんて、

俺はこれからどうしたらいいんだろうか。

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