表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

テンプレに新鮮な反応を返してくれる無知無知女神の人間界初見実況

 暇神の皆さん、こんにちは!本日デビューしました、オーマイゴッド1期生の無知無知ちゃんでーす!


 記念すべき初企画!ダーツで選んだ人間を観察しながら、神託を与えて遊んでいくよ!


 あ、スパチャありがとう!


 って、ちょっと!まだ体が出来上がってない歳なのに、なんで限界まで修行してるの!?


 ストップ、ストップ!目を離した隙に貴族と決闘しようとしないで!?


 あーもー!ふーざーけーるーなー!


※この作品はハーメルン、カクヨムでも投稿されています。

 自慢ではないが、私は無知である。


 いや、基礎的な教養は人並みに身に付けているつもりだ。将来を見据えて、資格も学歴も積み上げている。


 では、何が問題かと言うと──私は人間ではなく女神なのだ。


 ……そうだね。人並みの教養とか全ッ然ッ!意味ないね。天界は全知全能の神がゴロゴロ転がってる魔境だからね。


 私のように真面目に勉強しただけの神は、余裕でお馬鹿キャラ扱いされる。


 更に、人間界について何も知らない事がバレると、思いっ切り笑われた。無知無知ちゃんとか言われた。舐めやがって。


 さて、最近になって、私は本格的に焦り始めている。


 まず大前提として、私達のような神には、ざっくり分けて2種類の出世ルートがある。


 1つ目、権能無双ルート。


 さっき言ってた全知全能の神とか、いわゆる才能ガチャ当たり組が主に進む道だね。


 強い権能を得られなかった私みたいな神には、どうやっても無理なルートである。無料リセマラ実装はよ。


 2つ目、信仰富豪ルート。


 天界では人間から集めた信仰が通貨として流通している。権能を使うのにも信仰が必要なので、大量の信仰を握っている神は最強だ。


 ……私は信仰の貯蓄がほとんどない。学生時代は勉学に励んでいたせいで、信仰を稼ぐアルバイトとかサークル活動とかやってなかったし。


 むしろ、大学時代に遊んでばかりいると碌な神になれないと思って、内心で小馬鹿にさえしていた。今なら分かる。馬鹿は私だ。


 と、ここまでが天界ヒエラルキーの基礎情報ね。テストには出ません。


 あ、ちなみに学校では教えてくれないよ。とにかく勉強しなさいって言われます。為になる教えだなぁ。メガネ叩き割るぞ。


 そんなわけで、私が焦ってる理由を少しは分かってくれたかな?今、私は変革を迫られているのだ。


 権能無双ルートが不可能な事は、学業に打ち込んで痛いほど理解した。私がここから神生逆転するには、信仰富豪ルートに賭けるしかない。


 しかし、人間から直接信仰を集めても、出遅れている私は先行組に追い付けない。


 だから、私がターゲットにするべきは、他の神。


 そこで、私は神々の嗜好を徹底的に分析し、一つの結論に辿り着いた。


 どうやら、権能や信仰を豊富に貯め込んでいる神ほど、存外暇を持て余しているらしい。


 全知全能などの権能の弊害だが、色んな事に飽きてしまっている神が多いようだ。


 まあ、全知全能同士の会話とか、目茶苦茶つまんないだろうから仕方ない。驚きなんて欠片もなさそう。


 このニーズをどうにか満たしてやれば、私でも信仰を稼げるかもしれない。


 そうなれば、もう無知無知ちゃんなんて呼ばせない!


 ん?無知無知ちゃん?


 ……。……!


 いやこれ……もしかして、イケるか……?


 私の脳裏に天啓の如く、1つの言葉が浮かんだ。


 ──無知無知女神の人間界初見実況、と。


 


 暇神の皆さん、こんにちは!本日デビューしました、オーマイゴッド1期生の無知無知ちゃんでーす!


 記念すべき初企画!ダーツで選んだ人間を観察しながら、神託を与えて遊んでいくよ!


 あ、スパチャありがとう!


 まずは、1人目!えいっ!


 おお、なんだか森に捨てられる寸前の男の子に当たったようです!これは、いきなり神託チャーンス!


 っと、その前に、子捨て野郎が何かほざいてるので聞いてみましょう!


 なになに……あっちゃー、魔術師の家系に生まれて魔力ゼロですか……。それはまた、過酷な運命ですねー。


 しかも、彼が産まれてから使用人の不調が相次いだり、壁に飾ってある家宝の剣が不気味に光ったりし始めた、と。


 で、全部コイツのせいだーって、忌み子扱いされて捨てられちゃったんですね。可哀想に。


 そんな貴方に、女神からの神託です!


 今回は特別大サービス!張り切って導いちゃいますよー!




 俺は自分が何歳かを知らない。


 誕生日を祝われた事もないし、物心付いた時には、既に誰も俺と会話してくれなかったからだ。


 笑えるだろ?もし前世なんてものがあるとしたら、俺はよっぽど悪い事をしたんだろうな。


 そう思わないとやってられない。俺に唯一誇れる事があるとしたら、最期の瞬間まで神を恨まなかった事くらいか。


 これまでの人生でただ一人、俺に優しくしてくれた教会のシスターが言っていた。


 神は貴方を見ています。真摯に祈り続ければきっと……。


「ははっ」


 分かってる。神は確かに実在するが、数十年前を境に、人間界への干渉は途絶えている。教会でシスターから学んだ。


 その事実に対しては、学派ごとに様々な解釈があるらしい。


 人類の発展を阻害しないように干渉を控えている説。より大きな奇跡を与える為に力を蓄えている説。


 だけど、俺は思う。神は人間に飽きたのではないか、と。


 お偉い神学者さん達は絶対に認めないだろうけどな。


「グルルゥ……!」


 モンスターの唸り声が木々の向こうから聞こえる。そういえば、魔力がゼロな代わりに、俺は昔から五感が鋭かった。


 まあ、聞こえたところでどうにもならないが。餓死一歩手前の体で森の奥に捨てられた時点で、末路は確定している。


 俺は静かに目を瞑り……。


『あーあー、聞こえますかー?』


「……ッ!?」


 何だ?脳内に直接響くような……女の人の声?


「誰……だ……!?」


『ああ、無理に声を出さなくて結構。知りませんか?神との対話は意思だけで行うのですよ』


 神……!まさか、本当に……?


『貴方の苦労をずっと見ていましたよ。本当によく頑張りましたね』


 この日、俺は。

 

『私は女神の……。あーもー、まどろっこしい!神ムーヴやめ!私は子供の未来を潰す親が、世界で2番目に大ッ嫌いなの!ちなみに、1番は大学時代の教授のメガネ爺!』


 産まれて初めて。


『私が安全な道を示すから、今すぐ森を抜け出して、ムカつく奴ら全員殴りに行くよ!オーケー!?』


 ──泣いた。



 

 って、ちょっと!まだ体が出来上がってない歳なのに、なんで限界まで修行してるの!?


 お爺ちゃんを助けたら、魔術学園の学園長で、入学を推薦されちゃったー!?


 あ、スパチャありがと……。ごめん、後でね!今、こっちが手ぇ話せないから!


 ストップ、ストップ!目を離した隙に貴族と決闘しようとしないで!?学園ってそういう場所じゃないからね!?


 生徒会長も煽るなー!審判は必要ですか?じゃねーよ!お前に最後の審判を下すぞ!


 実は莫大な魔力が体の奥に眠っていて、無意識に抑えていただけだったの!?おまっ、私の同情返せー!


 待って、待って!魔王討伐とか、そういう大事な事は事前に報連相してー!?


 貴方のパーティーメンバー、女性率高くない?刺されても知らないよ?


 えっ、実は魔王は良い奴だったの?マ?


 ま、まさか、シスターが全ての黒幕だったなんて……!孤児院を経営してるから良い人だと思ったのに……!


 あーもー!


 ふーざーけーるーなー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ