素敵な紳士たち
ミネラルショーでの出会いから一週間後…
安藤さんと一緒にチポとポチを連れてついにひろちゃんが我が家にやって来た
わんわん♪ わんわん
「か、か、可愛い~♪ 二人ともぬいぐるみさんみたい~」
二匹のヨークシャテリアの愛らしさに私は初対面でメロメロになってしまった
「嬉しいね。二匹じゃなく二人って言ってくれるんだ。僕たち兄弟もそうなんだよ」
「うん。私ね、好きな子達はそう呼んじゃう。仲良しの鳩さんや猫さんもそうなの」
「チカたんがいい人でよかったなぁ。ポチ、チポ♪」
くう~ん…
座っている私のお膝に乗ってスリスリしてくる
なんて可愛いんだろう
「まるで喋っているみたい。絶対に言葉を理解してるよね」
「うん、この子達、ちゃんと言葉を理解するんだよ。二人ともほんとの兄弟みたいに仲がいいんだ」
「へ? ってことは…他人なの?」
「うん、最初はポチだけだったんだけどね、留守番してると寂しそうで…ジョン万次郎は老犬だからあまりポチの遊び相手にならないし…
思いきってSNSでヨークシャテリアの里子になりたいって募集したら優しいご夫婦が居てね…」
「うん うん」
「ポチの写真を見てうちにそっくりな子がいますからって写真送ってくれてさ、見たら双子みたいにそっくりで…
これはもう運命だなって思って速攻会いに行ってチポを見てピキーンときたんだよね。
お金は結構ですよってご夫婦が言ってくれたんだけどさ、こんないい子をお迎え出来るんだから申し訳なくてきちんとお金を払ってその日のうちに連れて帰ったら…」
「ポチちゃんはどんな反応したの?」
「それがさ、お互いに会った瞬間に駆け寄ると嬉しそうにペロペロしあって即、仲良くなったんだよ」
「それからはお留守番の時はポチとチポがジョン万次郎を挟んで守っているような感じでね…年で痴呆が始まってあんなに懐いていた僕らを噛むようになってショックでさ…
そのジョン万次郎がこの子達が来てから嘘みたいに大人しくなって気付けば三人で仲良くなってて僕らのことも思い出してくれたようでさ、噛まなくなったんだよ。
この子達のおかげでボケが治ったのには感動したよ」
本人たちを前に心温まるエピソードを聞いて感動してしまった
「ポチちゃんにチポちゃん、天使じゃない! なんて優しくてお利口さんなの」
わん♪わんわん♪
二人してくるくる回りながら尻尾をフリフリ
「褒められて喜んでる。チカたんのこと好きみたいだよ」
「ほんとに? すっごく嬉しい。チカたんだよ~二人とも仲良くしてね」
ワンワン♪
二人を抱っこしながらほっこりしていると…
「あの…俺も仲間に入れて下さい(笑)」と安藤さん
「そーよ、もうわんちゃんに夢中でアンの存在忘れてるんだから」とマミに笑われる
「それにしても…玄関で接吻の絵画にお出迎えされるとは…俺も好きでね…」と嬉しそうな安藤さん
「それマミの趣味なの。クリムトや竹久夢二、マリーローランサン好きなんだよね~」
「この女性が崖の上にいながら男性にすべて預けきっている従順な表情がなんとも切ないのよ」
「そうそう。マミに感化されて私もすっかり接吻のファンになっちゃったの」
「ところで背後に男性自身があるって知ってた?」
真顔で聞くひろちゃんを見つめながらコクコク頷く私達
「この男性を見ていると私、オセロとデズデモーナを連想してしまうの。悦びと絶望、生と死の狭間にありながら愛し合う二人の美しさにため息が出る…」
「確かに似てる(笑) ロマンティストだね。チカたんは」
「クリムトはエロスに拘っていたのよね」とマミ
「金細工師の父を持つだけあって金の使い方が見事だよな」と安藤さん
私達はクリムト論を語り合いながら手作りのクッキーやケーキをお供にティータイム
なんて楽しいんだろう! 安藤さんが次から次へと興味ある話題を振ってくれる
天使と悪魔、妖精、宝石の伝説、私の好きなVampire、世界最古の恋愛小説トリスタンとイゾルデ、騎士道についてなどあまりにも濃く楽しい内容が面白過ぎて時間の経つのを忘れて聞き入ってしまう
「安藤さんって博学なんですね!」
「あは、マニアックなだけだよ」
優しそうに笑う安藤さんは本当に大人だなぁ
前世の前世はパパってマミが言ってたけど本当かもしれない
「くっくっく…」
あ、ひろちゃんに心読まれた
「面白い子だね。きみ」
「そうかな。あんまり言われないけど…」
「いや、チカちゃんは面白いよ」
「でしょ~。この子自覚ないのよね(笑)」
和気あいあいの楽しい時間
ずっと続けばいいなぁと思っていたら夜の7時
「あ、夕飯、食べていくでしょ?」
「アンの好きなカレー、作ったのよ。チカ得意のフライもいろいろね~」
「そうそう。何を隠そうマミはカレーのお姫様なのよ~」
「カレーか!! 嬉しいよマミちゃん」
「マジ? 手料理嬉しいな」
素直に喜んでくれるひろちゃんと安藤さんにこちらまで心がポカポカしてくる
「では支度をはじめるのでお二人とも暫しお待ちを…」
私とマミは頷き合うとお腹を鳴らして待っている二人の紳士を置いてキッチンへと向かった
※




