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ロードオブファンタジー ~男の娘ともふもふの冒険譚~  作者: もふの字
第1章 世界に羽ばたく黒い鳥 編
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第4話 頼れるパートナー


 ――異世界、中立国家アヴァロン、首都ラフレシア郊外。



 取り合えず、もふちゃんと一緒に現状で出来る事を確認し合う。


RoF(ロフ)と同じ異世界って事は、スキルとかアイテムも使えるのかな?」


「たぶん使えるのだっ。われもバブルシールドさん、使えるのでっ!」


 妖精さんが移動や防御に良く使用する魔法のような科学、(バブル)(シールド)

 それが現実に使用できるとなれば確かに、スキルが使用できてもおかしくない。

 という訳で早速、試しに補助スキルを使用してみよう。


韋駄天(いだてん)


 そう宣言したものの特に変化は見られない。

 やはり使えないのかと落胆しかけた時、もふちゃんからアドバイスが。


「スキル発動時の演出をイメージしてみてねっ! たぶんねっ、こっちの世界では音声とイメージが、発動のトリガーなのだっ」


「スキルをイメージするのか……やってみるね! ――【韋駄天】」


 言われた通りにスキルの演出をイメージし、再び宣言。

 するとボクの背中、右肩甲骨の辺りから黒い片翼が出現した。

 ゲームとは違い、発動したいスキルをイメージする必要がある模様。


 理由は良く分からないが、RoFでは戦闘エリアでしかスキルを使えなかった。

 しかしこっちの世界では戦闘エリアでなくともスキルが使用できる様子。

 推測するに、これは誤発動を防ぐ安全対策のようなものなのだろう。


 スキルの発動を確認したもふちゃんが喜びの声を上げる。


「成功ねっ! こっちでもスキルは使えるのだっ」


「よしよし……スキルが使えるなら身を守る事はできそうだね!」


 ゲームと同じ世界と言うなら間違いなくモンスターも出現するだろう。

 ここは明らかにフィールドエリア。ならモンスターが出現すると思われる。

 移動する前に一通りスキルを試して不測の事態に備えたい。


(戦闘するなら、ゲーム内と同じ要領で動けるようになっておきたいな)


 RoFとは違い一度死んだらもう生き返れない。

 大怪我を負っても同じ事。そうならないようにまずは練習あるのみだ。


 ――という訳で、もふちゃんには泡盾を二重に発動して貰う。


 一つ目の泡盾で、傷付けないようもふちゃんをガード。

 二つ目の泡盾で、スキルで周辺を破壊してしまわないように守って貰う。


「準備できたのだっ」


「もふちゃんありがと! 助かったよ!」


 即席の練習場が完成した事で改めて、攻撃スキルや補助スキルを中心にいつもの要領で模擬戦闘を開始した――




   ▼ ▼ ▼




「――【十字閃(じゅうじせん)】――」


 主要な補助スキルを一通り使用した上での攻撃スキル。

 赤黒く逆十字に輝く死の光を十字に飛ばし、泡盾がそれを打ち消した。


(よし……まずはこんなところかな)


 防御スキルや一部の攻撃スキルなど、全ての性能を確認できた訳では無い。

 実際に攻撃してくる相手が居ないと影装(シャドウ)騎士(ナイト)の防御スキルは(ほとん)ど意味が無い。

 なので今は攻撃スキルと補助スキルの性能確認に努めていた。


(動いた感じ、ステータスもRoFの頃と同じなのかな? これだけ動いても息一つ切れてないし、まるで疲れた感じがしない)


 結果から言ってどのスキルもゲームの頃と遜色無い。同一と言って良い。

 おまけに身体能力もゲームの頃と同じである様子。何とも不思議な感じだ。


 練習を終えたボクに対し、もふちゃんから声が掛かる。


「次はね、アイテムの確認をしたいのだっ」


「良いよー。でも、もふちゃんはアイテムを持ってるの?」


「うむっ! マスターの所持品限定で、われらのお家から転送できるのだっ」


 そう言ってもふちゃんが見上げた先、そこにあるのは人工的な浮遊島。

 浮島の正式名称は“妖精族の聖域”と呼ばれる場所で、妖精さんの居住区域だ。


 RoFでは最初にプレイヤーが訪れる場所であり、そこでパートナーとなる妖精さんと出会い、それから妖精さんの指示に従ってチュートリアルを熟すとストーリーが進み、地上に降りる事が可能になっていた。


 もふちゃんと一緒に聖域を眺めつつ、もふちゃんへ疑問を呈す。


「RoFで持ってたボクのアイテムが聖域にあるの?」


「うむー。この世界の“マザー”がね、マスターの所持してた消耗品だけ生産してくれたのだっ」


 妖精さんが言うマザーというのは、妖精族の長のような存在の事だ。

 妖精さんは皆、マザーの言葉を絶対の物として認識している。

 なのでマザーの意思に反する事を妖精さん達は決して行わない。

 例えそれがマスターである人物の指示であったとしてもだ。


 ――ボクに対して、もふちゃんは自身の周囲からホログラムを出現させる。


 出現したホログラムはRoFで良く見たインフォメーション表示と同じ。

 どうやらもふちゃんはRoFのインターフェース画面を再現できるらしい。

 そして目の前に映るのは、ゲーム内で良く見た所持品画面(インベントリ)だった。


「これは……インベントリ……?」


「うむっ。これが現在、マスターが所持してるアイテムの全てなのだっ」


 インベントリの中身を確認すれば、そこには回復アイテムや強化アイテムが並んでいた。しかし今装備している物以外の武器や防具、そして高価なアイテムはインベントリに入っておらず、お金(シード)も入っていなかった。


S(シード)や換金できそうなアイテムは入ってないかー」


「勝手にお金は作れないので、分かってねっ」


 もふちゃんの言う通り、いきなり高価なアイテムや巨額の資金が現れたらこの国の経済事情が狂ってしまう。なのでマザーは高価なアイテムや装備品、そしてS(シード)を生産しなかったのだと推測した。


 一応、倉庫画面の方も確認して見る。

 するとファッションアイテムだけは倉庫内に存在していた。

 高額な売値は付かないと判断された物だけ許可されたらしい。


(回復アイテムがあるのは有り難いな。……でも蘇生系のアイテムは無いみたい。現実には存在しないのか、あるいは高額過ぎて生産されなかったのか……)


 その疑問を解消する為、もふちゃんに聞いて見る。


「蘇生系のアイテムはこの世界にも存在するの?」


「こっちの世界にはないよって、マザーが言ってたのだっ」


 死者を(よみがえ)らせる何てアイテムは存在しない模様。

 言われて見れば納得だが、個人的には困ってしまう。


影装(シャドウ)騎士(ナイト)は紙耐久だから、蘇生系のアイテムが無いとなると、かなり立ち回りを考えないと危ないな……)


 ゲームのような大胆な立ち回りや戦い方はやめた方が良いだろう。

 この世界のモンスターがRoFと同じ動きをするとは限らない。

 そう考えると身の安全を最優先にした戦い方が得策だ。


 あるいは思い切って戦闘職(ジョブ)を変えてみるという選択肢もある。

 そう考えた時、もふちゃんから追加で注意事項の連絡が。


「あとね、こっちの世界ではジョブチェンジが出来ないのだっ」


「えっ!? それはどうして……?」


「こっちの世界ではね、生まれつきの遺伝子によってジョブの適性が決まってるのだっ。なので、遺伝子を変えない限りジョブチェンジさん、できないのだっ」


「そんな仕組みが……それは当然、ボクにも当てはまると?」


「うむー。マスターの遺伝子では、影装(シャドウ)騎士(ナイト)が適正なのだっ」


「そんな適性欲しく無かったよ……」


 紙耐久で一撃貰えば即死か瀕死の戦闘職。

 そんな(はかな)いジョブが適正というのは何とも切ない。

 やって行ける自信はあるが、紙耐久というのはどうにも心許無い。


(一番やり込んだのがこのジョブだし。不慣れなジョブで戦闘するよりかは良いと思っておこう。……でも、もうソロでボスに挑むような真似は出来ないな)


 RoFでは数えきれない程のボスモンスターをソロ討伐して来た。

 しかし一度も戦闘不能にならず討伐できるかと言われたら自信が無い。


 パターンを読み切れる程、戦い慣れた相手なら可能だろう。とは言え全てのボスのパターンを正確に把握している訳では無いので、安全にソロ攻略できる相手は限定される。おまけに現実では動きが変わる可能性も無視できない。


 ――そう考えていたボクの顔に不安が現れていたのか、ボクを元気付けるように、もふちゃんは胸を張って応援してくれた。


「マスタっ! われらが付いてるのだっ。われがマスターのサポートするので任せてねっ! 危ない時はバブルシールドで、守っちゃうのだっ」


「ありがとう。嬉しいよっ! 頼りにしてるからねー」


「えへへー」


 胸を張って仰け反るもふちゃんが可愛くて、思わず抱きしめた。

 抱きしめたまま優しく撫でると、もふちゃんは(くすぐ)ったそうに笑う。

 そんな柔らかくて可愛らしい姿が愛しくて顔が(ほころ)ぶ。


「それじゃ、出発しよう! 今日中にはラフレシアに着きたいね」


「徒歩で1時間くらいの距離なので、焦らずに進んでねっ!」


 もふちゃんのお陰で英気を養い、見知らぬ花園を後にする。

 これから起こる出来事を想像して、期待と不安が入り混じる。

 でも頼れるパートナーと一緒なら、乗り越えられると信じている。


 そう心に誓い、目的地を目指すのだった――


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