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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第61話 失敗してから全力疾走


 洞窟についた後、私とルースちゃん、そしてツキ君は洞窟内を少し綺麗にして、その間にガイドさんは魔物よけの結界を張っていた。



(エイン)「掃除はこんなものかな?ご飯にしよ!」


(ルース)「はい。とは言っても果物が有り余るほどありますから……」


(エイン)「デザート……にしては多すぎるね。料理に入れる?」


(ルース)「お願い出来ますか?」


(エイン)「任せんしゃい!ツキ君、ツキ君は苦手なきのみとかある?」


(ツキハ)「いえ!なんでも食べられます!」


(エイン)「よっしゃ!じゃあちょっと待っててね」


(ツキハ)「はい!……あ、いえ!お手伝いできる事があれば何か!」


(エイン)「んー、じゃあ、ルースちゃんと遊んであげて」


(ツキハ)「わかりました!ルースさん!遊びましょう!」


(ルース)「ふふ、はい!」




 私は持ってきた食材ときのみをこれまた持ってきていた鍋(料理器具はこれとナイフとおたまだけ)に全部入れて、幾つかのきのみを潰しながら、水を染み出させ、その水で食材をグツグツと煮込む。


 きのみや食材から出る水が十二分にあり、新しい水は追加せずにグツグツとする事数分、いい感じに柔らかくなってきた。味を見をして、少し味が濃かったので少しだけ水を足す。そこからまたグツグツ煮込み、食べ頃になった頃にもう一度味見。



(エイン)「うん、いい感じ」


(ガイド)「わー、いい匂い」


(エイン)「ガイドさん、お疲れさま」



 ガイドさんが肩を重そうに回しながらこちらへ近づいてきた。やはり大変だったらしく、目を細くしてもはやこちらを睨んでるんじゃないかなと思うくらいに、顔つきが険しい。



(エイン)「もう食べられるけど、ちょっと味見する?」


(ガイド)「え!?良いんですか?!」


(エイン)「ちょっとだけだよ?はい」



 あーん、と大きな口を開ける顔はとても嬉しそうで年相応にはちょっと見えないけど、でも、機嫌が悪いわけではないようで安心した。



(ガイド)「……!、美味しいです!!少し甘めな感じが疲れた身体に沁み渡ります……、あ、でも所々に酸味が顔を覗かせて甘すぎる事がないような絶妙な味わいです!」


(エイン)「よし!じゃあみんなで食べよう!」



 ルースちゃんとツキくんを呼び、皆んなで鍋を囲む。そこから皆んなでワイワイ話しながらご飯を食べた後、各々自由な行動を取ることにした。


 私とルースちゃんは王家一閃などの技の練度を上げる為に身体をゆっくりと動かして、基本的なイメージを再度確認しながら身体に技の染み込ませる鍛錬をした。


 それをツキ君は物珍しそうに目を輝かせながら見ていて、見られている私としては少しくすぐったかった。ツキ君はどうやら強くなれるのならどんなことでも、という感じらしくてなんでも吸収しようとする心構えのようで、私たちの真似をする。


 ガイドさんはというと、暇つぶしに持ってきていたという本を読んでまったりと寛いでいた。



 鍛錬も一通り終わり、少し肩の力を抜いた。その瞬間に剣を手から滑り落としてしまった。



(エイン)「……あ!ごめんね!」


(ルース)「……、失礼しますね」


(エイン)「んぃ!」



 突如ルースちゃんが私のおでこに手を当てる。少しひんやりしていて気持ちが良い。



(ルース)「少々熱いですね……風邪でしょうか?」


(エイン)「そうかな?」


(ガイド)「んー、魔力の残存は感じられませんし……ビリカの腕は確かなので……、ゆっくり休む時間が足りなかったですかね?……、汗拭いて今日は早くおやすみなさい。見張りも今日は良いですから。少し魔法もかけてあげますから」


(ルース)「ですね。今日はゆっくり眠ってもらえればと」


(エイン)「……、ごめんね。ありがとう」



 その後、私は言われるがまますぐに眠りについた。



 翌朝起きると皆、身支度をしていた。ルースちゃんだけは既に支度を終えていたらしく、日課のストレッチをしている。


 だからなのか、のっそりと起きる私をルースちゃんだけが気づいた。



(ルース)「エイン!おはようございます!」


(エイン)「おはよう。ルースちゃんは元気だねぇ……んー!」

 


 私は伸びをして身体をほぐす。少し固まっていた身体の血の流れがゆとりを持って流れていくような気分だ。

 

 その伸びの時に出した声にガイドさんとツキくんも気づいて此方へ寄ってきた。



(ツキハ)「おはようございます!エインさん!」


(ガイド)「おはようございます、エイン」


(エイン)「うん、おはよう。んにぇ」



 ガイドさんが徐に頬へ手を伸ばして来たかと思えば、急に頭をぐりぐりと捻られる。でも別に首の骨が折れるとか首がもげるとかそんな感じじゃなくて、マッサージのような感覚だった。



(ガイド)「うん。よし!しっかり治っていますね!」


(エイン)「うん、ありがとう」


(ツキハ)「よかったです!!エインさん!!」



 うわ。びっくりした。


 急にツキ君が大きな声を出したので私は驚いた。ツキ君の目はやる気に満ちていて、メラメラと燃える闘志が見えるほどに。



(エイン)「ツキ君、元気だね?」


(ルース)「ふふ、今日は使役(テイム)をしてもらう予定ですからね」


(エイン)「あぁ、なるほど」


(ツキハ)「頑張ります!!」


(エイン)「うん、頑張って!私も用意しなきゃな」



 用意もすぐに終わりすぐに出発した。


 この日はルースちゃんが先頭で、次いでツキ君、そして私、ガイドさんの順に進んでいた。ツキ君はずっとフンス!といった感じで気合が入っていて、頼もしい限りだ。



(ガイド)「エイン、疲れていませんか?」


(エイン)「うん、大丈夫」


(ガイド)「なら良いです」


(エイン)「ん、ありがと。……ツキ君さ、気合十分だね」


(ガイド)「ですね。今日は彼に頑張ってもらいましょう」



 今日は少し魔物の様子も見えたが、やはりガイドさんが放つオーラのおかげで魔物たちは近づいてこない。悠々と頂上にいる主の所まで来れてしまった。此方からは相手の事が目に見えて分かる距離でおそらく縄張りにも入っている。しかし相手から見ればおそらく死角、ガイドさんのオーラも縄張りに入る前に切っている。それでもなお気配を察知されたのかこちらを警戒しているようだった。



(エイン)「ツキ君!頑張って!!」


(ツキハ)「は!はい!!」



 目に見えて分かるツキ君の緊張。こちらまで緊張してしまう。もうちょっと心の準備に時間をかけても良かった気がする。


 そう思いながらツキ君を見守っていると、ツキ君は両手を前に出して呪文を唱え始めた。



(ツキハ)「我、力を求む者なり。汝に命ずる。我が矛、あるいは盾となり、戦場へいざゆかん」



 言い終えた瞬間、ツキ君の手から何かが飛び出てくるように見えた。何か気になり魔力を辿ると、魔力そのものだった。つまり、魔力が可視化されるほどに凝縮されて放たれているのだ。あまりの事に、私は言葉を失う。


 そんな魔力が山々蛇を包み込んだ。



(ガイド)「へぇ、流石に魔物使役者(ビーストテイマー)です。魔力はきちんと練ることが出来ているみたいですね」


(エイン)「ガイドさんは出来るの?」



 驚きもせずにあまりにしれっと言うものだから、ちょっとだけ気になった。



(ガイド)「あれですか?流石にあれは真似られません。魔物使役者(ビーストテイマー)とそれ以外では魔力操作の巧みさが違うんです」


(エイン)「巧みさ?上手いってこと?」



 それならガイドさんにも出来そうだけどな。



(ガイド)「一言で言えばそうですが……、彼らは生まれたその日から魔力の操作を身体に刻み込まれるんですよ。とは言え赤子にやってもらうわけではありません。大人が赤子に魔力を流し、赤子の魔力を操るんです。その操られた魔力の流れが身体に染み込み、己が力となるといった具合にね」


(エイン)「ふーん」



 小難しく言っているけれど、赤ちゃんの時から魔力操作を叩き込まれてるのか。無意識でも高度な魔力操作が出来るように。そんな人が意識を持って魔力操作を行えば……か。



(ガイド)「さて、そろそろ終わりそうですね。エイン、走る準備しなさい」


(エイン)「走る準備?」


(ガイド)「えぇ。今回は失敗です。逃げますよ!!ルースさん!先頭お願いします!!」


(ルース)「承知しました!!」



 そう言ってルースちゃんは道沿いを走っていく。そのルースちゃんをガイドさんがツキ君を担いで後を追う。いきなり担がれた反応でツキ君はちょっとえずいてしまったけど、もうそれは仕方がない。私はと言うと、3人の後を追い、山々蛇と距離を測りながら山々蛇から逃げていた。


 しかし前に見た時より、明らかに機嫌が悪そうに見える山の主。最初は測れていた距離も測る余裕がなくなるほどに、逃げることに全力を注がなければすぐに追いつかれる。それくらいの速さと凄まじい威圧感を持ちながら追ってきていた。前いく3人はすぐに姿が見えなくなったけど。そんな事を考えている余裕もなかった。



(エイン)「うぉおあああああ!!!!!!!」



 逃げる事に全力を注ぎ、どのくらいの時間が経ったのかも分からないけど、山々蛇の縄張りから出る事が出来たみたいで山々蛇は巣に戻っていたようだ。


 私は追ってこなくなった事を確認してから山の下にある休憩用の小屋へ辿り着く。幸いにも魔物は殆ど出てこなかったけど辿り着く頃にはヘロヘロで、足もガクガクと震えていた。



(エイン)「つ、ついたぁ……」



 結界の中に入った途端、急に力が抜けてその場で寝転んでしまう。あ、このまま寝ちゃいそう……



(ガイド)「エイン……、一旦汗を流してきなさい」


(エイン)「ガイドさぁん……疲れたぁ……」


(ガイド)「もう……、結界内ですし少しなら大丈夫でしょうか。エイン、何かあれば大きな声出して下さいね」


(エイン)「うんン……」



 空を見ながらうとうとする。めっちゃ疲れた。何より久しぶりにこれ失敗したら確実に死ぬなっていう状況になって、精神への負荷が半端じゃなかった。

 え?オークやガイボンの時は死ぬ可能性はなかったのかって?いやあったよ、かなりあったけどね。違うじゃん、なんかこうさ、……、私誰に話してんだろ。



(ガイド)「エイン……、少し痩せました?」


(エイン)「あはは……この短期間で……?」 



 ガイドさんがタオルを持って戻ってきた。そしてそのタオルは湿っている。



(ガイド)「ほら、身体起こして」


(エイン)「ん、自分でやる。ついでに汗ながしてくるね」


(ガイド)「んもぅ……そうするなら初めからそうしなさい」


(エイン)「あた!何も叩く事ないよね?!」



 急に頭を叩かれてびっくりしたのもあるけど、普通に割りかし痛かったので私は少し怒ってしまう。



(ガイド)「ほら早く行ってきなさい。ご飯はもう作り始めてますから」


(エイン)「はーい……」

お疲れ様です。

洋梨です。


お久しぶりでございます。多分、またお久しぶりになるやもしれませんが。

自然都市辺については、少々書きたいキャラが増えてしまい、またネイチャルエデンの過去も臨場感を出すための文字稼ぎをしているので、もしかしらぎょっとするような感じなものが見せられたら良いなと思います。

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