第60話 年相応
魔物使役者だ!やったぜ!、と言いたいところなのだけれど、さすがに小さい子に頼るというのも気が引けてしまうのも事実で。それが証拠にルースちゃんも難しい顔をして悩んでいた。
そんな私たちを押し退けてガイドさんが一言。
(ガイド)「ダメです」
と。
(少年)「え?な、なんでですか?」
ガイドさんもしゃがみ込んでから少年と話し始める。とても優しい目をしているようだった。
(ガイド)「本物の魔物使役者なら、ギルドから正式な手続きを受けて同行するべきです。それが『出来ない』という事は、貴方はまだ魔物使役者になれていないのではないですか?」
(少年)「……、はい……僕はまだ使役が出来ません……、一度も成功出来ないから……、ギルドにも団体にも登録してもらえなくて……、で、でも!僕!あなたみたいな呪術師になりたいんです!!」
ガイドさんを見てあなたみたいになりたいと言った。
正気か?
(ガイド)「まぁ!ふふ!」
喜んでる……
(エイン)「でもなんで?ガイドさんは魔物使役者じゃないよ?」
(少年)「見てました!女神の大木を消したところ!あれほどすごい魔法は見たことがありません!!」
まぁ、一応元魔王だし、魔法の凄まじさは身近な私たちが一番よく分かってる。幾度と見てきた魔法の威力や技術の高さ、それに加えたルースちゃんがこのまえ言ってた『ガイド様がどのような人であれあの魔法技術が有るだけで尊敬をせざるを得ない程の人物』との評価。魔法に疎い私でも分かる、ガイドさんの格の違い。
そうでなくても、その魔法技術の高さを目の当たりにした小さな呪術師。尊敬するのも無理はないか……
(少年)「ダメでしょうか?」
(エイン)「いいよ、いこっか」
(少年)「え?いいんですか!?」
(ルース・ガイド)「「エイン?!」」
ルースちゃんとガイドさんは私を持ち上げて少し遠くの壁まで持ってきた。壁を背に二人に詰められる私は少し、エロい。
あ、今のなし。
(ガイド)「あなた、何を言ってるんですか?あんな子どもを連れて行けるわけがないですよ?」
(ルース)「私もガイド様と同じ意見です」
(エイン)「危険なのは分かってるけど……、二人がいればそんなに危険な道のりでもないでしょ?」
(ガイド)「それはまぁ……」
(ルース)「……、否定はしません」
(エイン)「頂上の魔物からは私でも逃げ切れる程度だし、その時はどっちか抱っこすれば、逃げ切れるよ。後ろは私が守りながら逃げるから。それに、一度も成功してない技がその時急に出来るかとしれないしさ」
(ガイド)「……、どうします?」
(ルース)「でもやはり……」
(エイン)「ルースちゃん、少し無理してでも壁を壊したい時ってあるでしょ?」
(ルース)「それは……うーん……、うーん……夢を叶える過程を後押ししてあげるのも勇者様の務め……されど……それで危険な目に遭わせてしまうのは……」
(エイン)「……、ガイドさんガイドさん。ダメ?」
(ガイド)「……、……、まぁ良いかもしれません。護衛の依頼を今後受けるかもしれませんし、その練習として」
(ルース)「え?!ガイド様!?それとこれとは」
(エイン)「よし!じゃああの子を連れて出発!の前に、話さないとね」
そう言って私たちは少年の所へ戻る。大事な話をするために。
(少年)「あ、あの……やはりいけませんか?」
(エイン)「ううん、一緒にいこっか」
(少年)「あ!ありがとうございます!やった!」
(エイン)「でも少年君、確認したい事があるんだ」
(少年)「はい?」
(エイン)「少年君、死ぬ確率は低いけどないとは言えないというか、この桃髪の人と綺麗な大人のお姉さんがいなければ、間違いなく私と君はきっと山を越えられない。つまり、何かのはずみでこの二人と逸れた場合、死ぬ事になる。それは理解出来る?」
(ガイド)「綺麗な大人のお姉さん……!」
(ルース)「ガイド様……今は真剣な話を……」
少年は少し黙った後、強く目を見開いて一言。
(少年)「覚悟しています!!」
(エイン)「うん、ならお母さんお父さんに話さなきゃ。ご両親の許可が取れたら一緒にいこうね」
(少年)「あ、母や父はいません。今は一人で暮らしてます」
(エイン)「え?あ、あぁ、そうなんだ?ごめんね!」
(ガイド)「まぁ、どの道少年の身支度はまだでしょう。一度街の中へ戻りましょうか」
(ルース)「ですね」
そういうわけで一旦街の中へ戻り、私と少年は少年の身支度を少年の家で済ませ、ガイドさんとルースちゃんは少年について周囲への聞き込みをした。その結果、少年は約1年前にご両親を亡くしてしまった孤児らしく、今は街のギルドから食料の配給を貰っているようだった。一応、少年を連れて行くことをギルドに伝えてから、私たちは街を出発した。
……………
街を出てから山へ入るまでの道でふと少年に対して訊いていない事がある事を思い出す。
(エイン)「そう言えばお名前なんて言うの?」
(少年)「僕は、'ツキハ・ヨーゲン'といいます」
(エイン)「ふーん、じゃあツキ君だ。ちなみに私はエイン・アリス、この桃髪の子がルース・ノルヴァルタスさん、こっちの大人のお姉さんがガイド・ヴァンガードさん」
(ルース)「ツキハさん、以後お見知り置きを」
(ガイド)「ツキ君、よろしくお願いします」
(ツキハ)「よろしくお願いします!!」
それから私たちは山の中へ入る。山の道は険しいものの一番の手間である夥しい程の魔物の多さはガイドさんが出す威圧感により魔物が逃げてくれる。それでもガイドさんの威圧感に怯まない魔物はいるから、倒さなきゃいけない魔物はいるけれど、それでも片手で数えられる程度だった。
(ツキハ)「はぁ、はぁ、はぁ……」
(エイン)「休憩しよっか」
ツキ君がへとへとになり私たちはその辺に座り休憩をとる。ただの山登りでもやはりこの小さな子にはきつかったようだ。
(エイン)「はい、お水」
(ツキハ)「ありがとう……ございます……」
お水を渡してツキ君を休ませる。やはり連れてくるのはまずかったのかな?そんな疑心暗鬼になっているところにガイドさんがやって来る。
(ガイド)「エイン、ここら辺は少し安全ですし、色々実りもあるみたいです。なのでルースさんときのみでも取ってきてください。ツキ君は私が預かっておきますから」
(エイン)「はーい」
……………
(エイン)「ルースちゃーん!!!」
私は先にきのみを集めていたルースちゃんのところまで走ってきた。ルースちゃんは遠くから手を振って「ここでーす!」と大声をだして居場所を知らせてくれた。
(エイン)「おまたせ!きのみ収穫だ!腕がなるぜい!」
(ルース)「……、元気ですね」
(エイン)「ん?元気じゃないと山越えは出来ないからね!」
(ルース)「ふふ、そうですね!それじゃあ張り切って集めましょう!」
(エイン)「おぉ!」
その後、特に魔物などに襲われる事なくきのみを集めた。途中ルースちゃんとどれだけ大きいきのみが取れたか比べたり、いい感じの枝を見つけたか競ったりしていたら、かなり時間が経っていたみたいで、日がもう沈みかけていた。
そしてガイドさん達のところまで戻るとガイドさんはたいそう、ご立腹だった。私とルースちゃんは正座させられてお説教される。
(ガイド)「楽しい、ということを否定するつもりはありませんが……、限度があるのではありませんか?」
(エイン)「はい……」
(ルース)「仰るとおりです……」
(ガイド)「今後気をつけるように」
(エイン)「ごめんなさい……」
(ルース)「すみませんでした……」
(ガイド)「はい。今日のところは、ここらで野宿ですね。幸い食料はたくさんありますが寝床をどうしましょうか」
(エイン)「寝床、あ、そういえばここら辺洞窟あったよね?」
(ルース)「そういえばそうですね。少し登ったところにあったかと思います」
(ガイド)「ほう!ならそこまでいきましょうか!雨風しのげる場所がある事に越した事はありませんからね!」
(エイン)「はーい」
お疲れ様です。
洋梨です。
エインとルースの雑談はしょうもない事も話してますが、大事なこともしばしば話しています。




