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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第57話 実のところ、快挙な話

 私とガイドさんはシェンデラさんたちに連れ去られた人たちを無事に街まで送り届けた後、命より大事にしている『赤い耳飾り』を預かった。その耳飾りを無くさないように布で包んで、鞄にしまう。その耳飾りをナズナ様に渡せば任務完了だ。

 ナズナ様とはとてもおばあちゃんな人だそうだけど、この地で唯一【ネイチャルエデンの寵愛を受けた者】として、皆から慕われているらしい。


 耳飾りを受け取った後、ビリカさんの様子を見に診療所まで来た。ルースちゃんもビリカさんのそばにいるだろうし、都合が良かった。


 ビリカさんのいる部屋から何やら音が聞こえるので私たちは耳を澄ましながら扉の隙間を覗く。



(ビリカ)「ピンクちゃん!!集中!!」


(ルース)「は!はい!!」



 ルースちゃんは座禅をしていた。そんなルースちゃんの肩にビリカさんが手を置いて、色々言っている。部屋には2人しかいなくてどことなく、『いけない空間』の様な気がしていた。



(ビリカ)「そう……、頭は冷静に……心はエロく……沸々と燃え上がるように……、燃え上がって燃え上がって……、そしてまたエロく……、けれど頭は冷やして冷静なままで……」


(ルース)「ふ!ふぅん……!」


(ビリカ)「集中!!乱されない!!」


(ルース)「はいぃ……!」



 いけない空間だった。確定。



(エイン)「私たち何見せられてるの?」


(ガイド)「さぁ?でも、覗いてるのはこちらですけどね?あはは」


 

 ガイドさんはケラケラと笑った。



(ビリカ)「そこ!!誰かいる!!……ガイド様!!!『ホントに』帰ってきた!!!」



 ビリカさんが急に扉を開けたかと思えば、ガイドさんと目が合ったようでガイドさんに釘付けになっている。

 もしかしたら、私のことは見えていないかもしれないやつだこれ。



(ガイド)「……、そうですね。ただいま」



 ガイドさんはそう言った後、ビリカさんの頭を撫でた。とても優しそうに撫でる手をビリカさんは満面の笑みで受け取っている。



(ガイド)「ところで何してるんです?」


(ビリカ)「ピンクちゃんがガイド様と勇者ちゃんが帰ってくるまで暇だーってことで、透明化を教えてたの。勇者ちゃんもおかえり」


(エイン)「あ、ただいまです」



 気づいてくれてた。ちょっと嬉しい。



(ルース)「ん、ふぅ……、エイン!ガイド様!おかえりなさい!ご無事でなによりです!!!」


(エイン)「うん。ただいま!『ガイボンの話』は後でするとして、ちゃんとあの人たちも大丈夫だから安心して。それよりもとりあえずこれ見て」



 そう言って、私は徐に赤い耳飾りを取り出してルースちゃんに見せた。ルースちゃんは不思議そうに「落とし物ですか?」と訊いてきた。



(エイン)「ううん、預かり物。これをナズナ様って人に届けなきゃなんだ。ルースちゃんも行く?」


(ルース)「もちろん」


(エイン)「よし決まり!場所は聞いてあるんだ。地図も貰ったよ」


(ルース)「……、エイン、お疲れではないですか?一先ずはお休みになった方が良いと思いますが……」


(エイン)「そうしたいけど……急ぎだし……ねぇ、ガイドさんは休んだ方……」



 私とルースちゃんがガイドさんに視線を送って見ると、ガイドさんは何やらビリカさんと掴み合いをしていた。ビリカさんは開かれた本をガイドさんにグイグイと見せつけようとして、それをガイドさんはビリカさんの腕を戻して跳ね返していた。顔も背けて本を見ないようにしている。

 あれ?意外……、ガイドさん本好きなのに。



(ビリカ)「だから!【アレ】が未来都市エレクトリアに来てから400年近く経った今じゃ!!母娘とかの親子ものは主流なんだって!!」


(ガイド)「そんな筈ありません!!そんな特殊なもの!!」


(ビリカ)「いいじゃん一回くらい!やってみようよ!これ!」


(ガイド)「ダメです!!」



 会話の内容、概ね、察し。

 何してるのこのスケベ。このスケベが!

 そしてこの二人の押し問答は結構続いた。



(エイン)「ルースちゃん、ルースちゃんはあんな感じになっちゃダメだよ?」


(ルース)「え!?……、私そこまで……」



 ルースちゃんは何故かちょっとへこんだ。へこんでいるので背中をポンポンと叩くも、まだちょっとしょげている。そうこうしている間も、ガイドさんとビリカさんの戦いは決着を見せなかった。なので



(エイン)「……今日はもう休む。ルースちゃん、帰ろ」


(ルース)「はい」



……………



(エイン)「あふぅ……」



 私とルースちゃんは宿に帰ってきてからお風呂に入る。汗も流してさっぱりして、湯船に浸かり疲れがお湯に溶けていく。



(ルース)「それで……、『ガイボンの話』の事なんですけれど」


(エイン)「あぁ、そうそう。そうだね。んー、でもまずは街の人たちからなんだけど、実は街の人たちはガイボンじゃなくてエルフの人たちに連れ去られてたんだ。理由は労働力の確保だって」


(ルース)「え、エルフがそんな事を?……、余程……切羽詰まっていたんでしょうか?」


(エイン)「らしいよ。それこそガイボンに襲われ続けてエルフの数が減っちゃって……こりゃダメだ、村が回らんって感じで人を攫ってた」


(ルース)「……、でもやはりそんな事をしては……いけませんよね」


(エイン)「だね。でも謝ったら許してくれたからこの話はもうおしまい。それで攫われてた人たちから預かったのがあの赤い耳飾りなの」


(ルース)「へぇ。あ、そういえば魔物使役者ビーストテイマーはやはりその方達の中にはいらっしゃらなかったので?」


(エイン)「うん。あの耳飾りを早く届けたかったらしい。だから無茶したんだって」


(ルース)「なるほど。羹に懲りて膾を吹くくらいになって頂ければ良いのですが……、ちなみにエルフの方々はどのように……」


(エイン)「んー、ガイボンも倒したし……これ以上数は減らないから一先ずは街の人と少しずつ協力して暮らすようにする感じかな?」


(ルース)「……、あの聞き間違いでないと良いのですが」


(エイン)「ん?」


(ルース)「ガイボンを倒した、と仰いました?」


(エイン)「え?うん。あ、倒したのはガイドさんだよ」


(ルース)「そ、それでもすごいです!!過去数百年!!一度も明確な情報は得られなかったあのガイボンを!!わぁ……!!!すごい……!!!」



 ルースちゃんは目をキラキラと輝かせていた。ルースちゃんの憧れる勇者様は魔物や魔族を倒し、皆を助けて皆を導き、そして勇気を与える人。前半の魔物や魔族を倒すはついでのものなんだろうけど、かつての勇者様でも倒せていないガイボンを倒せた事にこういった反応を見せるのも無理はないのだろう。



(ルース)「それから!エルフの方々は街の人と協力すると!!はぁ……!!エルフの方々は未だ人嫌いの方が多く、友好を築く事は難しいはずなんですよ!!アレッタやミドルは別ですが!……私も会った事のあるエルフの皆様には白い目を向けられる回数も多く……快挙ですね!!エイン!!」


(エイン)「いやぁ……、ほとんどガイドさんだし……、私はあんまり何も……、全くじゃないけど……、でもなぁ……!にひ!」



 めちゃくちゃ褒めてくれたのでさすがに照れた。とは思うものの、私もエルフには白い目で見られていた。それ程までにエルフと人との間の溝は深い。少しはその溝を埋める手助けが出来たのだろうか。そうなら嬉しい。


(ルース)「わ、私も負けていられませんね!頑張らないと!」


(エイン)「……にひ!」



明けましておめでとうございます。

洋梨です。


アレの話は次には出て来ます。

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