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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第56話  魔物使役者のいない理由

※エイン目線に戻ります



 私たちは、というかガイドさんがガイボンを倒した後、セーラーさん達の村に戻った。村は大いに盛り上がり、そしてガイボンのことで感謝もされたが、私は何処か気が晴れないでいる気分だった。



(エイン)「ガイドさん……その……言わないでくださいね!」


(ガイド)「何をです?」



 私とガイドさんは宴会から抜け出して、風の当たる岩の上で涼みながら飲み物を飲んでいた。私はジュースで、ガイドさんはお酒。



(エイン)「だからその!……も、もら……した……こと……です……」


(ガイド)「あぁ!あれですか?気にする必要ありませんよ。別に珍しい事でもありませんからね」


(エイン)「そ、そうなの?」


(ガイド)「あの状態は魔王だった時にビリカや他の幹部の子達、バールノノン、ミートルビア、という子達も怖がっていましたから」


(エイン)「……、その人達も……」


(ガイド)「いえ、漏らしてはいません」


(エイン)「?!」


(ガイド)「そんなことより」


(エイン)「そんなこと?!」


(ガイド)「暫くはここの地域も安全でしょう。ただ、人手が圧倒的に足りない。人攫いを始めた理由は解決出来ていませんね」


(エイン)「……!うん」



 確かにそうだ。喫緊の問題はそれだ。私が漏らした事は正直どうにもならない。どうにもならない事をクヨクヨしていても仕方がない。けれど、この問題は解決する方法があるはずだ。



(セーラー)「おぉーい!いたいたー!」


(エイン)「セーラーさん?」



 少し遠くから私たちを見つけたセーラーさんは少し小走りで近づいた後、岩をよじ登ってきた。怪我をしているし大変そうだったので、手を貸そうとしたけど、『大丈夫、頑張る』と言って、私の手を借りようとはしなかった。



(セーラー)「ふぅ……いいとこでしょここ。ね?」


(エイン)「え?あ、はい!」


(ガイド)「傷の具合は良いんですか?」


(セーラー)「はい!おかげさまです!ガイド様には400年近くは前のあの時と今回、感謝してもしきれぬほどの大恩が出来ました。心より深く感謝申し上げます!」



 セーラーさんはガイドさんに向かって深々とお辞儀をした。かなり長い間お辞儀をしていたから相当な感謝をしていると思う。



(セーラー)「エインちゃんも、ありがと」



 今度は私に対して深々とお辞儀してきた。正直ちょっと照れるけど、私は何もしていない。だから、これは受け取れない。



(エイン)「……、私は何もしてません……だからそれは受け取れな」



 私が、その言葉を言い切る前にセーラーさんは私の口を両手でそっと塞いできた。瞳が妙に煌びやかで少し儚げだった事を鮮明に覚えている。私が黙った事を確認してから、セーラーさんは私の手を握ってきた。



(セーラー)「エインちゃん、エインちゃんが私の耳を手で塞いでくれた時、本当にすごく嬉しかった。1回目の時も2回目の時も……、すっごく安心出来た。だから、エインちゃん、この気持ちはちゃんと受け取って欲しい。ありがとう!」


(エイン)「い、いやぁ……えへへ……そんな……そこまで言うなら……その……受け取ります!どういたしまして!」


(ガイド)「……、いいニヤケ面ですね」


(エイン)「……!ちょ、ちょっと待って……!」



 私はそんな事を言われてしまって必死に顔を戻そうとするが、どうにも戻らない。どうしたってニヤけてしまうのだ。それほど嬉しかった。



(ガイド)「……、いいんですよ。そうやってニヤけて」


(エイン)「え?」


(ガイド)「あ、すみません。私の言い方が良くありませんでしたね。……、含みの無い嬉しそうな笑顔というものは、相手の事も嬉しくさせます。この人に頼ってよかったんだ、ありがとうと言っても良いんだ、この人は自分の事で喜んでくれるんだ、……そういう風にね」


(エイン)「……、ガイドさん」


(ガイド)「だからこそ、助けてもらった人は次もまたあなたを頼るようになる。あなたのした事がきっと誰かの感謝に変わる。……今はただ感謝された事を喜んでください」



 ガイドさんはどこか遠くを見つめるような目をしていた。意外にも綺麗な瞳で、私は言葉を詰まらせてしまう。



(セーラー)「……!そうそう!エインちゃん!ほんとにありがとう!勇者様を目指してるって言ってたね!これからは私も応援するから!頑張って!!」


(エイン)「え?あ!はい!!頑張ります!!」


(セーラー)「ガイド様も本当にありがとうございました!!」


(ガイド)「ふふ、どういたしまして」



………



 それから宴が終わるまで私とガイドさんはずっと岩の上にいた。時々、シェンデラさんやパードンさんがやってきてお話をしたり、エルフの村のことについて聞いたりして時間を費やした。とても楽しい時間で、ついつい夜遅くまで話し込んでしまった。


 その翌朝、私はガイドさんに叩き起こされた。陽が昇ってからそんなに経ってないはず。そんな気がするくらいの日差しだった。



(ガイド)「エイン、起きなさい」


(エイン)「……、なーに?……もう起きなきゃダメ……?」


(ガイド)「……、忘れている事がありませんか?」


(エイン)「……?」


(ガイド)「……はぁ、仕方ありませんね。……、エルフの皆さんを助ける為に頑張ってましたし……」


(エイン)「……?……あ!!囚われの人!!!」


(ガイド)「はい」


(エイン)「……あ、でも……、セーラーさん達は悪い人じゃないし……後でも……」


(ガイド)「コラ!」


(エイン)「はい!」


(ガイド)「全く……、シェンデラさん達があの人を攫ってきたのは事実。現状あの人達にとって、シェンデラさんの周りの人々は等しく【恐怖の対象】ですよ。誤解でもないですし……」


(エイン)「……、だったらやる事は一つだね」



………



(シェンデラ)「本当にすまなかった……!この通りだ……!」



 私たちは囚われ人たちに対して頭を下げる。この場には私、シェンデラさん、パードンさん、ギリルさんがいた。



(パードン)「申し訳なかった……!!」


(ギリル)「すまない……!悪い事をした!!」


(エイン)「すみませんでした!!」



(連れ去られた人1)「えっと……、すみません。エイン様は何故そちらに?捕まっていたのでは?」


(エイン)「それは……」



 私は事の顛末をあらかた説明した。連れ去られた事、シェンデラさん達とファイトした事、ガイボンの事。そして、何故この人たちが攫われてしまったか、その理由も。

 理由を聞いて攫われた人たちはざわざわとしていた。ざわざわとした中から一つだけ声が跳ねる。



(連れ去られた人2)「許します」



 シェンデラたちは勢いよく顔を上げた。



(連れ去られた人3)「そうだのう。一応飯も頂けたし……エインさんが嘘ついているようには見えないしのう」


(連れ去られた人1)「……、ガイボンに襲われなかっただけ救いだったのでしょう。皆生きている事に変わりはないですから」


(シェンデラ)「よ、良いのですか?私たちは身勝手にも……」


(連れ去られた人1)「構いません。ただこれからは、困った時はお互い様と助け合える様になれればとお願いしたか存じます」


(パードン)「こ、こちらこそお願いしたく存じます!どうぞお願いいたします!そして!ありがとうございます……!!」


(ギリル)「ざいます!!!」



 正直許してもらえるとは思ってなかったから私は唖然とした。激昂していても状況的にはおかしくないはずなのに、激昂するどころか何処か穏やかに見える。



(ガイド)「終わりました?」


(エイン)「ガイドさん、うん。終わったみたい」



 ガイドさんが部屋に入ってきて皆の前に立つ。



(ガイド)「皆様、お一つだけお伺いしたい事があるのですがよろしいですか?」


(連れ去られた人2)「なんでしょう?」


(ガイド)「なぜ、魔物使役者ビーストテイマーがいないのですか?」


(連れ去られた人1)「それは……魔物使役者ビーストテイマーは皆出払っておりまして……同行を頼めなかったのです。届け物があるのですが……期日が迫っておりましてな」


(ガイド)「……、自然都市グリーナインの山越えは過酷だと聞いています。あまり賢い選択には見えませんね」



 ズバッと言うなこの人。あまり遠慮というものを知らないのかもしれない。まぁ、ガイドさんらしいと言えばらしい?よく分かんないけど。



(連れ去られた人2)「我らの命よりも大切なものなのです。一刻も早く届けなければ……」


(エイン)「……?そう言えば何処に届けるんですか?人のいる街と言えば自然都市では大きな街一つだけですよね?ギルドはちょっと離れてるけど住むところじゃないし……」


(連れ去られた人1)「街は一つですが農村が各地にちらほらありましてな。とある村にいる'ナズナ'様というお方にお渡ししなければならんのです」


(エイン)「ふーん」


(ガイド)「ふーんって……、でしたら尚の事、魔物使役者ビーストテイマーが帰ってくるまで待った方が良いと思うのですが……、その命より大事な物も消失する可能性があるのですから……」


(連れ去られた人1)「その通りなのですが……、途中帰ってきている魔物使役者ビーストテイマーと合流出来るという期待もあり……」



 暴挙に出たんだ。なるほど。



(連れ去られた人2)「そうだ、エイン様。これも何かの縁、我らの代わりにナズナ様に届けて下さりませんか?折り入ってお頼み申します」


(エイン)「え?いいんですか?それほど大事な物を赤の他人に預けてしまって」


(連れ去られた人2)「エイン様になら」



 皆の視線が私の方に集まる。皆同じ目をしていて、私に大層な期待をしているみたいだ。だったら、期待に応えようじゃないか。



(エイン)「……、分かりました。依頼お受けいたします。しかし、一度皆様を街まで送り届けます。その後で、という条件ならですが」


(連れ去られた人2)「おぉ……!我らの安全まで……!どうかお願いいたします!」

お疲れ様です。

洋梨です。


宴の前に解放しろ

と思いました。

それはさておき、エルフと人は仲がすこぶる悪いです。仲が悪いというよりはエルフが人を一方的に嫌っています。ただ、自然都市の人は害悪では無いという理解はしています。あくまでも自然都市の人のみです。

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