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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第1章 勇者様の基礎
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第6話 桃髪の王族

 次の日の朝、私は気持ちよく目覚めた。目覚めたはいいが、起きた直後に目の血走った女が私の目の前にいるのは心臓が悪いと思う。なので、



「うあああああ!!!!!」


「うお!!!」


 私は思いっきりガイドさんの腹を蹴り、吹っ飛ばした。ガイドさんはベッドから落ちて尻餅をつく。



「何してるんですか?!」


「やりますね。私に蹴りを入れるなんて……及第点です」


「……何してたんですか?」



 ガイドさんはお尻の汚れを叩きながら軽く立ち上がってきた。私はわざとではないけど確実に全力で蹴りを入れたはずなのに、何のダメージも入ってないみたいだ。なんだこの女。強すぎるんじゃないかな?



「いえ、どれほどのものなのかと」


「どれほど?」


「はい。寝込みを襲われても対応出来るかと」



 ……ぐっすり寝てた。なんの言い訳もない。



「分かってそうなのでいいですけどね。これから命を狙われる可能性もあります。危険には敏感になっていただかないと」


「危険って……、ガイドさんは危険ですか?」



 私はそう訊いた。ガイドさんが本当に危険な人物なら、私を助けたりなんかしない筈だ。それだったら危険を察知しないといけない点ではガイドは適任ではない可能性がある。


 ガイドさんは微笑みながら私の横に座った。



「あら?かわいいこと言いますね。元魔王だということはお忘れなく。まぁ、危害を加えるつもりはありませんよ」


「なら、危険を察知なんて」


「危害と危険は違いますよ?」


「???」



 何を言っているか分からない。危害と危険は違う。確かに、意味はきちんと違う。けど、ガイドさんそんな事言っているわけではないと思うけど。なんかちょっと回りくどい言い方するなこの人。



「ほら♡欲望のままにしたいとかありますし?」



 その一言で全てを悟った。あんなに目が血走っていた理由はそれが原因か!!本当にドスケベなんだから!!!!くたばれ!!



「……、本当に何もやってませんよね?」


「私は!!絶対に!!同意した人しかやらないと決めてます!!」


 あれ?なんか意外だ。意外と紳士?淑女?的なところあるんだ。それでもドスケベなんだから、まずそれを直せ。バーカ。



「まぁいいです。今日から仕事ですよね?」


「あ、そうですね。今日は皆さんの憧れ、"ギルド"に行きますよ」


「ギルド?」


 ギルドは勇者様伝記にも出てきた。至る所から依頼が寄せられ、それを解決する人たちが集っている場所だ。とはいえ、あくまで街の近くの依頼というだけで、国や大陸全体の依頼という話ではないらしい。どうやらそれは今も続いているらしく、よく父と妹が『ああいう命懸けの職業はすごいなぁ』と言っていた。

 つまり、私の中では何かすごいなぁという職業だという事しか分からない。



「あれ?知りませんか?」


「はい、あまり。名前やしている事はなんとなく知っていますが。具体的にとなると……」


「うん、まぁ、あそこはそういうとこですよ。それくらい分かっていれば十分です。支度して行きましょうか」


「はい」


……………


 私たちは支度をしてギルドまで来た。支度をしたと言っても、少しオシャレめな服を着て来ただけだ。街は発展しているから、このくらいしないと浮いているのだそう。確かに、村の時と鍛錬で服ボロボロだったし、買い替えの時期としては良かったかもしれない。



「ここがギルド!わぁ!すごい!!なんか!大きい!!」



 空間が広々としている。建物の上の方には大きな窓が何枚もあり、光が入ってきていてかなり明るい。それに食堂っぽいところや談笑している人たちもたくさんいる。楽しそうだ!



「受付してしまいましょうか」


「受付?」


「はい。まずはここで働くために名前を登録します」



 名前の登録。確か勇者様伝記には名前が売れる事で出来る仕事が増えていったって書いてあったっけ。なら、頑張らないとな。



 私はとりあえず受付まで来た。ガイドさんは来る途中に多分、綺麗な女性のところへフラフラと歩いて行ったから口説きに行ったんだと思う。仕方ないので置いてきた。

 

 受付はギルドの入り口すぐ左に構えていた。透明な窓が2つあり、それぞれ男の人と女の人が書類を整理している。どっちに話しかけたらいいのか、分からないのでとりあえず優しそうな女の人に話しかけた。横の男の人はなんか怖そう。なんか耳とんがってるし。それは女の人も一緒だけど。



「すみません、名前の登録したいんですけどどうしたらいいですか?」


「名前の登録?あぁ、冒険者登録ですねー」



女の人は書類の中をガサガサと探す。そしてしわくちゃの紙を出してきた。



「あったあった。これに記入お願いします」



 女の人はそのしわくちゃの紙とペンを渡してきた。

 これに書くの?本当に?こんなしわくちゃの紙に?まぁ、書けと言われたら書くだけだけど……



「はは、あはは……!!」



 何でか知らないけど、女の人が笑っている。その女の人を男の人が紙を丸めた棒で叩いた。



「アホか。困っとるやろ。すまんなぁ、こいつはイタズラ好きなんや。勘弁したってくれ」


「え?どういうことですか?」


「そんなしわくちゃの紙に書いて登録するわけないやろ?仮にも正式な書類やからな」


「はぁ……そうなんですね」


「??なんや?書類の類は初めてか?」


「はい、初めてです」


「あはは!そりゃ初めてじゃなきゃ!こんなの引っかからないでしょ?!'ミドル'も大概バカだよねぇー!はは!!」


「おまえなぁ……」



 男の人は困ったような顔で、女の人を見ていた。女の人はゲラゲラ笑って、私を見て、手招きをしている。



「ごめんごめん、これ正式書類ね。今時珍しいね。あなたみたいにめんこい子が冒険者になりたいだなんて」



 綺麗な紙が私に渡される。

 名前と生年月日はいるのか。それ以外は任意って書いてあるから書かなくていいかな。なんか適当な感じするなぁ。ちょっと不安になってきた。



「……珍しいんですか?冒険者ってなんかすごい仕事なんですよね?」



 私は名前も誕生日だけ書いて、その紙を女の人に渡した。女の人は「はーい」と言って受け取り、また書類の整理を始める。


「ふわっとしてる認識やな。何ちゅうか、いつ死んでもおかしない仕事やからな。比較的平和な昨今では無理になろうとも思わんのやろ」


「ふーん、なるほど。でも、私も成り行きです。なんか変なドスケベ女に勇者様になれって言われました。しかも強制ですよ」


「勇者様と……おっしゃいましたか?」



 受付の2人とは別のところから声が聞こえた。私のすぐ隣から聞こえる。いつの間にこんなに近くに人が……

 

 綺麗な桃髪(ももがみ)の女の子だ。吊り目で瞳が赤い。顔立ちはかなり整っていてかわいい。後ろには赤髪の男の人が2人いる。1人は背が高くて優しそうな人。もう1人は背はそこまで高くないし、若干目つきが他の2人よりもきつい人だ。目鼻立ちが似ているから多分、兄妹とかなのかな?瞳も同じように赤いし。でも、赤って珍しいな。



「あの……聞いておられますか?」


「え?あ、はい。言いました」


「あなたも勇者様を目指しているようですね。私も同じです」


「はぁ、なるほど」



 受付の男の人が頭を押さえてやれやれと言った感じで首を横に振っている。女の人はクスクス笑っていた。



「失礼しました。どうかお許しください。この者は最近街に出てきた田舎者らしく、『王族の皆様』方のご尊顔を知らないようで、とんだご無礼を。すぐに退かせますので。ほら、少し右に寄ってちょうだい」



 うわ。なんかものすごい丁寧になった。さっきの人と同一人物とは思えない。すごいこの人。さっきまで笑ってたのが嘘みたいだ。でも王族か。勇者様伝記に出てきた赤髪(あかがみ)の王族なのかな?だったら、白髪(しろがみ)の王族と青髪(あおがみ)の王族もいるのかな?見てみたいな。


 とりあえず私は用も終わったので言われた通り、そそくさとどこかに行こうとした。



「いや、良い。我々は冒険者としてきている。王族の立場は今は無くそう。どうぞ、先に用を済ましてくれ」



 背の高い赤髪の優しそうな人がそう言った。しかし、私の用は終わっている。



「すみません、私もう用は……」


「この者は今し方、冒険者登録をしたばかりでございます。尚のこと、二つ名を持つ偉大な先達に敬意を払うのは当然の義務。どうぞ、お先に済ませ下さい」



 女の人は人差し指を下に向け私に見えるようにして、宙をつついた。おそらく、ここにいなさいという合図だと感じる。なので、そこにいることにした。


 赤髪の人達は、用を済ませて何処かに去っていく。けど、桃髪の女の子はその場に残った。そして、私をずっと見ている。ずっとだ。ちょっと怖い。



「すみません、先ほどは急に話しかけてしまい。自己紹介がまだでしたね。私、'ルース・ノルヴァルタス'、冒険者でありこの国の王女です。どうぞ以後、お見知りおきを」



 ふんわりとした雰囲気でルースさんは話しかけてきた。優しい人などだと直感で分かる。それに、笑顔も優しさを含んでいた。ちょっとくすぐったい。



「……あ!こちらこそよろしくお願いします!名前はエイン・アリスと言います!"アルダン"という村の出身です!」


「……エイン様、少しお手合わせを願えますか?」



 ルースさんはそう言うと、鞘から剣を抜いた。さっきまでの優しい雰囲気はどこへやら。バチバチの闘志が迸っている。ど素人の私にすら分かるほど、それ程の圧力を感じた。

 でもなんで?嫌なんだけど……やらないとダメかな?


 助けを求めるように私は受付の2人に視線を送る。両方とも苦笑いで手を振っていた。オーケー、見捨てられた合図だ。後で文句言ってやろう。



「あの……、私はその、すごく弱くて……」


「いえ、先ほど冒険者登録を済ませた方が、勇者様になろうなど大それた事を言い放ったではありませんか。つまり、それほど腕に自信があると言う事」



 全然人の話聞かない。なんだこの人。かわいいからってなんでも許されると思うな!かわいいからって!!……クッソォ!



「……、いや、でもやっぱり……手合わせはちょっと……」


 

 この人見るからに強い。絶対不毛な時間になる。私がボコボコに瞬殺されて終わってしまうだけの結末になる。そんな未来しか見えない。



「ではこうしましょう。あなたの剣をかけて私と勝負、私が勝てば剣を頂きます。私が負ければあなたと王族とのコネクションを作りましょう」


「???嫌です。なんですかそれ、これはあげられません」



 私は剣を出来るだけ見せないように後ろへ隠す。いつもは腰に紐で括りつけているのだが、背負う形にした。これで隠れたはずだ。


「やはりその剣は聖剣ですか?」


「……聖剣?って何ですか?」


「かつての勇者様が使われていたとされる伝説の刀剣のことです。本物は古びてしまい刀剣の質を失いましたが、世界の何処かにその刀剣の製法が受け継がれており、今も新たな持ち主を待つ刀剣が存在しているという噂があります。それはその刀剣ではないでしょうか?」


「知りません。これは……大事な人にもらいました。理由は分からないけど……なんの才能もない、てんでダメな私なんかに期待してくれた人です。これが仮に汚いボロボロの朽ちた剣だとしても、渡すことはできません。お断りします」



 逃げたと思われたかまわない。臆病と罵られてもいい。勝負を受ける必要はない。王族のコネクションの意味もわからないし、どんな理由でもガイドさんがくれた剣を渡すわけにはいかない。



「すみません、少し戯れただけです。ですが、手合わせしたいのは本当ですので、それだけは考えてくれませんか?」


「本当に手合わせだけですか?」


「はい」


「それならまぁ、いいですよ」



 受付の2人がゲラゲラ笑い始めた。男の人の方なんて腹抱えて笑ってる。なんで?どういうこと?



「あっはっは!エインちゃん!!あなた!はめられたのよ!!あはは!!おっかしい!!」


「はめられた?」


「いや!わかってないんか?!最初手合わせなんかやりたくないって感じやったのに!最終的に手合わせくらいならいいよって言ったんやで!!」



 ……!!本当だ!!クソォ!!このかわいい子!!なかなか策士なのか!!



「言っとくけど!!あなたがアホなだけよ!!あはは!!」


「こんな簡単な手に引っかかるなんてな!!」



 この2人、後でしばきにこよ。



「……、言った事を変えるつもりはありません!どうぞお手合わせよろしくお願いします!」



 仮にボコボコにされたとして、何か得るものはきっとある筈。これを糧にするだけだ。



「では、参りましょうか。ついてきてください」



 ルースさんはスタスタとどこかに歩いて行ったので、私はそれについて行った。


お疲れ様です。

洋梨です。


ルースの前つまり王族の前で、受付2人がゲラゲラ笑ってたりするのには違和感あると思いますが、それなりの理由があったりします。それは今後ですね。


よろしくお願いします。

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