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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第54話 魔の手の幼体

 私とセーラーさんは森の中の少し開けた空間にきた。開けたと言ってもさほど大きくはなく、おおよそ半径おおよそ15メートル程度の円形の吹き抜けで、いわゆるギャップと言われている場所だ。

 私たちはそのギャップで座り込み、談笑を始める。



(セーラー)「エインちゃんは……、好きな人とかいるの?」


(エイン)「好きな人?うーん、リンダって妹がいるんですけど、その子が可愛くて可愛くて」


(セーラー)「え?そうじゃなくて恋バナ恋バナ!あはは!」


(エイン)「あ、そういうやつ?なるほど。うーん、でも、そういう話はあんまり……、でもまぁ、今はいるとすれば……ルースちゃんって子かなぁ、なんて」


(セーラー)「ルースちゃん?女の子?」


(エイン)「はい」


(セーラー)「そっか。私はねー、いなーい」


(エイン)「あ!ズルイ!!」


(セーラー)「ずるくな〜い!」



 そういうキャッキャウフフな感じで話していると急に何かの足音が聞こえ始めた。私たちは一旦口を閉じて足音に耳を傾けた。

 草木を踏みつける軽い足取り、しかしそれでいて重く響く足音。周辺の魔力の濃さもどんどん濃くなっていく。そして、その正体が姿を現す。落ち葉を繋ぎ合わせたお面に服、頭から生えた2本の小さな角。私よりも小さくて、先に聞いていた話より少し小さく見えるが概ねその通りの特徴。ガイボンだ。



(ガイボン)「カカカカカカカカカ!!!」



 甲高い声を小刻みにあげ周囲へ声を響き渡らせる。それに共鳴するように草木がガサガサと揺れ動いた。



(セーラー)「!締めろ!!」



 セーラーさんの掛け声と共に結界が発動する。ガイボンはそれに驚いて慌てて逃げようとしたが結界にぶつかり転がった。しかし、すぐさま立ち上がり私たちの方を見て、「キキキキキキ!!!」と声を出し、威嚇してきた。



(セーラー)「エインちゃん、相手は確実に殺しに来る……!私たちもその気でやらないといけないよ……!」



 セーラーさんが双剣を構える。



(エイン)「了解です!!」



 私も剣を構えた。



………

※戦闘シーンにつき、第3者目線で書きます。



 ガイボンはエインとセーラーに向かい、両の手を上げながら「キキキキキ」という声を出して威嚇した。しかし、当のエイン達は驚くどころか、剣を構えて応戦する態勢に入る。威嚇の効かない彼女たちに対し、ガイボンは「バウ!」という声と共に息を一度だけ吐いた。その息が地面を抉りながら、エイン達の方向へもの凄い速さで移動する。エイン達は横に移動して避け、その息は結界に当たる。しかし、結界にはヒビ一つ入らない。



(エイン)(……?)


(セーラー)(あ、危なかったぁ……)



 避けるは避けた程度だったが、避けられた事に変わりはない。この事実が嫌だったのか、ガイボンは地団駄を踏み始める。それと同時に地面が揺れ、木々がざわめき始めた。



(セーラー)「!まずい!!エインちゃん!ガイボンから目を離さないで!!」


(エイン)「?はい!!」



 ガイボンの地団駄が終わった瞬間、ガイボンがエインの方に飛び出しエインに蹴りを入れる。その蹴りをエインは何とか剣の背でガードしたがそのまま吹っ飛ばされた。



(セーラー)(……!反応した?!)


(ガイボン)「ガルガ!!」



 ガイボンがセーラーに向かい、猛攻を仕掛ける。セーラーはそれを巧く捌いている。



(セーラー)「花剣技はなけんぎ遊蝶ゆうちょう……!」


(ガイボン)「ガルルル……!」


 

 花剣技はなけんぎ遊蝶ゆうちょうとは、セーラーが使用する剣術の技の一つ。相手の攻撃を止めるのではなく、流す事により威力を分散させ、自身は回転する事により攻撃のダメージを最小限に抑える技。攻撃にも転用可能。


 しかし、セーラーとってはガイボンの攻撃を流すだけで精一杯な上に、攻撃に転じたくてもその隙がガイボンには見られない。



(エイン)「一本斬バッサリ!」



 セーラーとガイボンが攻防を続ける中、突如としてエインはガイボンの後ろから思いっきり斬りかかった。ガイボンは飛び上がり攻撃をかわすが、あまりに突然のことで少しパニックになりその場を飛び跳ねる。



(セーラー)「エインちゃん、さっきの大丈夫?」


(エイン)「何とかです!」


(セーラー)「よかった!」



 セーラーとエインは背中合わせになる。飛び跳ねているガイボンが何処から来てもいいように互いに背中を預けた。



(ガイボン)「ガルラルラァ!!!」


(エイン)「鳶玉とびだま檸檬れもん!!!」



 ガイボンが上から吐き出した息の空気玉をエインは螺旋を描く風の斬撃をぶつける事で防いだ。



(ガイボン)「ガビョ!!!」



(セーラー)(エインちゃん、この子……すごい……!)



 セーラーが感心したのは上から降ってきた空気玉を技で弾いた事。セーラーには到底真似出来ない威力のぶつかり合いだったのだ。しかし、何も高い威力の技のぶつけ合いだけが戦いでは無い。セーラーは双剣を手に、またガイボンと向かい合う。



(セーラー)「エインちゃん、サポートお願い!!」



 そう言ってセーラーはガイボンに向かい飛び出す。



(セーラー)「花剣技・宵桜(よいざくら)!!!」



 セーラーが右手を前、左手を後ろにして、駒のように回転しながらガイボンに斬りかかる。ガイボンはその攻撃を横に避けた。しかし、そのガイボンの動きに合わせてセーラーもガイボンの方へ跳ねながら移動する。


 そんな攻撃と避けを何度か繰り返した後、突如としてガイボンはセーラを殴り飛ばした。しかし、さながら刃物のついた駒を素手で触るようなもの。当然、ガイボンの腕は剣により傷がつけられ、肉を抉られた。初めこそ、何やら危なそうなものから逃げ続けていたガイボンも、遂には手を出した。


 しかし、その理由はセーラーの技が大した事ないように見えたわけでも、セーラーの技を見切ったわけでも無い。


 ガイボンにとって不快だったのはエインだった。セーラーにサポートしてと言われてからエインはガイボンの後ろにピタリと張り付いていた。右に逃げても左に逃げても、後ろに前に、どれだけ逃げても、何処までも行ってもガイボンの背にはエインの気配が感じられた。どれだけ逃げても、どれだけ動いても、少し頭を動かせば視界には手の先、足の先が見え、背中には気配を感ずる。これ以上に不快な事はないほどの、嫌悪感をガイボンは感じていた。


 だから、そんな事をするエインに対処する為に目の前のセーラーの危険な動きをたとえ腕を犠牲にしても止める事にしたのだ。



(セーラー)「いつつ……」



 セーラーは地面に転がり剣を落としてしまった。



(ガイボン)「ガルガ!!!」



 ガイボンはエインに向かって雄叫びをあげて揺れ始める。ただただ大声を出して揺れているようにしか見えない。



(エイン)(やっぱりおかしい……、勇者様伝記にもルースちゃんの言い分的にもガイボンは歌を残す……つまりは人の言葉を話せるはず。それなのにずっと鳴き声しか発さない……それに……話を聞いた限りでは……もっと強いはずなのに……つまり目の前にいるのはガイボンじゃない?)



(セーラー)「うぅ!!!なに?!!この音!!!」



 セーラーが突然耳を塞ぎ地面に伏せ始めた。ガイボンはずっと雄叫びを上げているが、同じ声しか発していない。



(エイン)「セーラーさん?!どうしたんですか!?」


 

 セーラーの元へ駆け寄り、肩に手を置くエイン。



(セーラー)「痛いぃ……!!割れるぅ……!!!うぁああ!!!」



 セーラーは耳を塞いだまま口が開き始め涎が地面に流れ始めた。しかし、口を拭う事や口を閉じる事に意識が向かないくらいに、今この瞬間は耳を守る事に精一杯になるほかない程、耳に対しての異常な何かをセーラーは感じていた。



(エイン)「セーラーさん?!」



 逆にエインは何も感じていない。だから自分の手をセーラーの手に重ねて二重にして耳を塞ぐ。



(セーラー)「…うぅああ……!!!」



 それでもセーラーには聞こえる何かがセーラーを苦しめ続ける。



(エイン)「ガイボン!!」


(ガイボン)「ガリヤ!!!」



 エインはガイボンに斬りかかるが、寸での所でガイボンは避けた。その瞬間雄叫びは止まる。



(エイン)(セーラーさんは?!)



 セーラーの方を慌てて見るエイン。しかし、セーラーは依然として何かに苦しみ続けている。



(エイン)(雄叫びじゃない?!)


(セーラー)「た、たす……け……てぇ……エ……エインちゃ……」


(エイン)「セーラーさん!!」



 エインは慌ててセーラーの元へ駆け寄った。だからとて、エインにできる事は何も無い。



(セーラー)「た……た……す……け……ぁ……あがぁ……!!」



 涎、鼻水、涙、その他諸々、苦しむ事によって出る水という水が全ての穴から噴出される。しかしエインになす術なし。



(エイン)(このままじゃセーラーさんが!!一体どうすれば?!)


(ガイボン)「ガボン!!!」



 ガイボンはエインに殴りかかるがエインはそれを避ける。その時、なるべくセーラーから離れるように遠くへジャンプした。ガイボンはそれを軽く追った後に、立ち止まる。



(ガイボン)「キキキキキ!!!」



 ガイボンはエインに対して威嚇する。



(エイン)「相手してる暇ないから……!」



 エインはガイボンに向かい斬りかかろうとする。


 その刹那、結界が突如として破壊された。そして中にガイドが入ってくる。しかも上から降ってきた。そしてガイボンを踏みつけにして戦闘不能にした。



(エイン)「ガイドさん?!なんで!?」


(ガイド)「話は後です!!大きな魔力を持つものがこの付近に現れました!!あなた達だけでは対処不可能です!!!なので逃げます!!!」


(エイン)「え?!あ!セーラーさん!!!」


(セーラー)「やらぁ……や……らぁ……、やめ……へぇ……」


(ガイド)「……!絶音サイレンス!!!」



 ガイドを中心として半径約3メートルの円形の範囲から音が消えた。正確に言えば、中と外の音が分離されたのだ。だから、中から声を出さない限り中で音を聞く事はできない。



(セーラー)「ひゃぁ……はぁ……おぇ……」



 セーラーは息が上がっているものの、徐々に落ち着いていく。そのセーラーの背中をエインは軽くさすっていた。



(エイン)「?一体何が起こってるんですか?」


(ガイド)「……、今私が倒したあれはおそらく、ガイボンの幼体です」


(エイン)「幼体……?え、じゃあ……」


(ガイド)「はい。必ず親が居るはずです。おそらくその親がこの魔力の持ち主……まさかここまでとは……その親がエルフには聞こえる何かを発しているのでしょう。……、貴方達だけでは手に負えるような力ではありません。近づいて来てはいますがまだ逃げられる距離です」


(エイン)「……、ガイドさんは?」


(ガイド)「?」


(エイン)「ガイドさんでも勝てないの?」


(ガイド)「……、私なら勝てますが……」


(エイン)「……」


(ガイド)「……、仕方ありませんね……実戦経験をなるべく積んで欲しかったのですが……見る事で学べる事もあるでしょうし。エイン、絶音は簡易な技ですが……出来ますか?」


(エイン)「本で読んだ事あるから多分……」


(ガイド)「では、セーラーさんは任せます」


(エイン)「絶音!!!」


(ガイド)「……、さすがですね」



 ガイドはエインの技が綺麗に発動した事を確認した後、自分の技を解いた。そして聞こえてくる歪な歌。



(ガイボン親)「あなたに花をあげましょう、さてさて今日は幾人か」



 ガイド達の目の前に、子ガイボンより1.5倍ほど大きい見た目そっくりの魔族が現れた。


お疲れ様です。

洋梨です。


セーラーさんとエインはレベル的には同じくらいですね。

技巧派とパワー型と言った感じです。



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