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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第53話 囮になる

 ガイドさんと私は少し煌びやかな部屋に招かれた。そして紅茶やお菓子のおもてなしを受ける。ガイドさんはお菓子を運んでくるエルフの皆んなに尊敬の眼差しを向けられているけど、腰巾着Aとでも思われているのか、私は対照的に冷ややかな眼差しを向けられた。

 目の前にはエルフ長の'セーター'さん (腰くらいまではある長さの白髪で少し老けたお爺さん)が椅子に座っていて、その後ろ、私から見て左にセーラーさん、右にシェンデラさんが立っていた。



(セーター)「すみません……、あなた方を巻き込んでしまい……」


(ガイド)「なぜ人を攫っているんです?」


(セーター)「……、労働力の確保でございます……」


(ガイド)「労働力の確保?なぜそのような事を?」


(セーター)「近頃……、我が同胞たちが魔の手に狩られており、我らの同胞の数は激減……、故に我らだけでは生活が儘ならず……働き手を欲していたのです……」


(エイン)「?、街の人達へ相談すれば良かったのでは?何も攫う必要は……」


(セーター)「……、分かってはおるのです……、この地の人が何も悪くないという事も……、人そのものが変わったという事も……、しかし……最善の策を取るには……、あまりに傷が深く……」


(ガイド)「……、傷は……まだ癒えませんか?」


(セーター)「……、すみません……」


(ガイド)「いえ、謝る事ではありませんよ」



 ……、ものすごく空気が重い。私はどうしたら良いんだ?

 そう思いながらシェンデラさんを見ると、すごい冷たい瞳の視線をガイドさんの足元に落としていた。どこか、『期待していたのに裏切られた』と感じさせるような視線だった。



(セーラー)「……、ガイド様。私たちにとって貴方は大恩人。そんな貴方が勇者に負けた日の絶望は……忘れられません……勇者一行など、片手間に薙いでしまえるであろう貴方が負けたあの日……、私たちは……。……、なぜ負けたてしまわれたのですか……?」


(ガイド)「……、勇者インカは約束してくれたんです。当時、人間としては認められていなかった亜人種である貴方達を、人間として認めると。だから、勇者インカに託す事にしました」


(シェンデラ)「確証は……あったのか……?」


(ガイド)「ありません。でも、信じた。それだけです」


(セーラー)「……、しかしなぜ貴方が負ける必要があったのか。我々には理解出来ません……貴方が支配する世界は……、我々にとって……とても温かい世界だったんです……」


(ガイド)「……、魔王が支配する世界。それは誰からも疎まれる。それに今後私が必ず勝てるとも限らない……インカはね、エルフやドワーフ達を魔王討伐の立役者にすると言いました。そして……人としての地位を確立する……いつか私が負けた時、『魔王に与した亜人』として評価されるより……あの時、【勇者に与した人の味方】として評価された方が遥かに生きやすい方法だと……思ったまでです……」



 ……、小難しく言っているけど要は魔王であるガイドさんの味方つまりは魔族として生きるよりも、勇者の味方つまり人として生きる道を歩んで欲しかったのだろう。その方が今後の為になるから。



(ガイド)「それに勇者インカが約束を守らなかったら、殺しに来ていいよって言いましたしね。きちんと、信じられる根拠はあったんですよ」


(シェンデラ)「……、確かに約束はきちんと守られている。……、ありがとうございます。ガイド様……ご無礼をお許しください……」



 シェンデラさん達が座り込み頭を下げた。つまりは土下座だ。身体が小刻みに震えていて、雰囲気がとても申し訳なさそうにしているように感じた。それをガイドさんも分かっているようで「気にしてませんよ。それに此方も急に負けましたし……あいこです。あ、このお菓子美味しい!」と言っていた。



(エイン)「あ、それより魔の手って何?」


(ガイド)「それよりってあなた……、ですが私も気になります。何のことです?」


(セーター)「ガガオン……他の地ではガイボンと呼ばれる魔族です。小さな鬼人のような姿でとても強く恐ろしい……」


(エイン)「ガイボン……、実態は不明って聞いてたけど……」


 

 私はガイドさんに視線を送る。しかし、ガイドさんも少し難しい顔を返してきただけだった。



(セーター)「……、この都市の中でもこの地域にしか出没しない稀有な魔族……故に情報はここまでしか出回らんのです。それにここら一帯はエルフが多い……尚のこと……」


(エイン)「ふーん。なら形は分かるんですか?」


(セーター)「えぇ。先ほども言いましたが、小さな鬼人のような姿です。そして、何やら葉を縫い合わせた面をよく付けている」


(エイン)「好みとかは?どんな人を襲うとか」


(セーター)「若い者を襲います。年寄りは襲われず……我ら年寄りが……若い者の盾になれずに……不甲斐ない……」


(セーラー)「おじいちゃん。誰もに盾になって欲しいなんて思ってない。きちんと私たちが守るからさ」


(シェンデラ)「……、全くだ」


(エイン)「……、そのガイボンってエルフしか襲わないんですか?それとも人も襲う?」


(セーラー)「……?確か人も被害に遭うと聞いた事があるけど……」


(エイン)「ならさ、私が囮になります!そしてやっつけます!倒してしまえば……人間なんて攫わなくても良いでしょ?」


(セーター)「それはいけません……!これは我らの問題で……」


(ガイド)「……、巻き込んだのは其方ですけどね」


(セーター)「それは……別件で……」


(ガイド)「……、こう見えてこのエインは武器を持たせればそこにいるセーラーさんと同じ位には強いはずですし……私もいるので案外なんとかなりますよ、多分」



 多分、とか言っちゃったこの人。でも。



(エイン)「私は一応勇者様志望なんです。勇者様は……、困ってる人の為に命張るものでしょ?」


(セーター)「……、よろしいのですか?」


(エイン)「はい!お任せ下さい!!」



 私は、誇らしげに胸を張った。自分で言うのはなんだけど、とても誇らしい気分だったからだ。



(セーラー)「……私も出る。一緒に。私もこの村の狩人として役に立ちたいから」


(ガイド)「……、決まりですね。ではエインとセーラーさんが囮役という事で」



…………



(セーラー)「あ!こら!動かない!」


(エイン)「すみません!でもこれちょっと……キツい」


(セーラー)「それはごめんね!でももうちょいだから!」



 私はセーラーさんに服を着せられていた。赤いスカートに白いモコモコの長袖シャツ。なんでもガイボンはこの格好をした人間やエルフを良く襲うらしい。セーラーさんは既にこの服を身に纏っていて意外と似合っている。すごくかわいい。

 近くにいたガイドさんとシェンデラさんは私を見るばかりで、何も言ってこない。というか、ガイドさんは私の下着を見て目をギンギンに開いているから、そもそも声を出せる状況じゃなかったような気がする。



(セーラー)「うん!よく似合ってる!かわいい!」


(エイン)「えへへ、そうですか?まぁ、私はかわいいとよく言われるんです!」



 かわいいお姉さんに言われて少し嬉しくなりにやけてしまう。



(セーラー)「……、ほんとにごめんね。こんなことさせてしまって……」


(エイン)「?いえ!自分が言い出したことなので!」


(シェンデラ)「……、本当にいいのか?」


(エイン)「はい!!」


(シェンデラ)「……、死んだら元には戻らないんだぞ……?割り切れるか……、私たちのせいで自分が死んでも良いって思えるのか?……、貴方が……死んでしまう可能性は……大いにあるんだぞ……?私達なんかのために……貴方が命を賭ける必要なんて……!」



 人を攫った事を『生きる為には仕方ない』……と自分の中で割り切ってるけど……本当はしたくないという感じなのかな?その割には私たちに全力アタックしてきた気もするけど……まぁ、いいか。



(エイン)「……、自分の罪が重いと思うならその重さの分、次は皆んなに優しくしてあげたら良いよ。ガイボンを倒せば罪はもう重ねなくても良いんだしさ」


(シェンデラ)「……!、!!……すまない……!」


(セーラー)「……、あ、ちょっと待って。行く前に私の一張羅を〜」



 セーラーさんは何処か行き、そして数分後に戻ってきた。セーラーさんは赤い頭巾を被りドヤ顔をしている。



(セーラー)「どう?似合っちゃう感じ?」


(エイン)「あ、あ、赤ずきんちゃんだぁあああ!!!!」



 私は大声を出してしまった。興奮を抑えられない。絵本で見た赤ずきんちゃん。狼に食べられてしまったけど助かった赤ずきんちゃん。その赤ずきんちゃんに似ているのだ。私は絵本が好きだったし、リンダにも読んでいたから絵本には詳しい。そんな絵本の中でも有名な赤ずきんちゃん。似てる!似ていることに興奮してしまう。



(セーラー)「え?どうした?」


(エイン)「赤ずきんちゃん!!!」


(セーラー)「だからどうした?!」


(ガイド)「……、人の世界には赤ずきんを被った少女が主人公の物語があるんですよ。その主人公の事を、赤ずきんちゃんと呼びます」


(セーラー)「ふーん。そうなんだ。おもしろそ。その赤ずきんちゃん?も可愛いのかな?」


(エイン)「もちろんです!!!セーラーさんも激かわです!!!!」


(セーラー)「ちょ!寄るな寄るな!照れるぜ!まったくもう!」



 そんな感じで私たちが戯れているとパードンさんが入ってきた。一応着替え終わっているとはいえ、女の子の更衣室へ男性が入ってきたということに私は頭を悩ます。

 これはどうしたらいいんだ?



(セーラー)「ドンちゃん、あれ程入るなと言っただろうに」


(シェンデラ)「若い娘がいるんだぞ。貴様は配慮が足りん」


(パードン)「あ、悪いな。つい癖で……」



 ……とても軽い。



(シェンデラ)「ところでなんだ?準備出来たのか?」


(パードン)「あぁ。もうそろそろだ」


(エイン)「準備ってなに?」


(セーラー)「罠を張るんだ。円で囲んだ結界を。その中で私と君がガイボンを待つ。ガイボンが入って来たら結界を作動させて、私、君、ガイボンの3人、人で良いのかな?ガイボン……まぁ、兎に角この3人を閉じ込める。そこで君と私がガイボンを討つんだ。……、……たとえ討てなくてもガイボンの体力は消耗させられるはずだから結界を壊す力は残らない。きっとガイボンを閉じ込められる」


(エイン)「……、勝って万歳、負けても大丈夫って事だね。分かった!」


(シェンデラ)「……、最後にもう一度だけ……今の話で納得出来るか?やめても良いんだぞ?ガイボンを閉じ込められる可能性だって絶対じゃないんだ……」


(エイン)「シェンデラさん、私は……、私だけでやるって言ったんです。でもセーラーも一緒に来てくれるし……結界も張ってくれるなら至れり尽くせりですよ!」


(シェンデラ)「……!本当にすまない……!!ありがとう……!!!」



 シェンデラさんは私を強く抱きしめて頭を撫でた。



お疲れ様です。

洋梨です。


実はガイボンを倒すところまでは書いてます。

最近は風邪気味ですなのですなの。

シェンデラはちょっと情緒不安定です。

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