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勇者様ってなんですか!?  作者: 洋梨
第2章 自然都市と守護者の宴
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第52話 あなたは私たちの恩人です

 私はガイドさんに抑えられて身動きが取れないでいる。今にも飛び出していこうとする私を止めているみたいだ。



(ギリル)「おいおいおいおい!なわけねぇだろぅが!」


(連れ去られた人1)「本当でございます!確かに声が聞こえました!私ら同様連れてこられたとも!!」


(連れ去られた人2)「どうか!どうかご慈悲を!」


(ギリル)「おまえ達が言っているのは、拘束され連れてこられた人がその拘束を解き……あまつさえ我らの目を盗みこの場から逃げたという事だ!そんな話があるかよ……!嘘ついてんな?!」


(連れ去られた人1)「嘘ではございませぬ!どうか!どうか信じてくだされ!!」



 声はかなり震えているが、必死さは伝わる。結果を知っている私は当然だが、おそらく相手の方も嘘では無いと分かるほどだと私は思う。



(ギリル)「……、嘘をついているようには聞こえねぇな。ふーむ……だとすると……相手はかなりの手練か。部屋にいるようには感じねぇし……どうやって逃げた?」



 皆を脅していた者は何処へ行き、気配が消えた。気配が消えた為、ガイドさんは透明化の魔法を解いて話しかけてきた。



(ガイド)「……エイン、あなただけなら力尽くてもこの場から逃げ切ることが出来る程度の相手です。しかし、ここに居る人々の事を考えると……安易に動くのは良くありませんよ?」


(エイン)「……、私は簡単に背後を取られたよ?ガイドさんはわざとかも知れないけど……」


(ガイド)「隠密に長けている人物だっただけです。正面からなら引けを取る事はありません」



(エイン)「……、過大評価し過ぎ……!」



 とは言っても、そこまで評価してくれているとは思っていなかったので内心少しは嬉しいものだ。

 少し嬉しがっているところに、さっきの人が戻ってきた。



(ギリル)「……、なんだぁ?おまえら?もしかしておまえらが」


(ガイド)「バン!」



 ガイドさんがギリルと呼ばれていた人に向かって拳を出した。直接当たる距離では到底無かったにも関わらず、ギリルという人が吹っ飛び、扉付近で倒れた。壁に激突した音が扉の鈴に伝わり大きな音が響く。



(エイン)「ガイドさん?!何してるの?!」


(ガイド)「殺してませんよ。眠ってもらっただけです」


(エイン)「いや!そうかもだけど!今の音で!!」


(シェンデラ)「何事だ!!?」


(パードン)「……こいつぁ……、おまえらの仕業か?」


(エイン)「ほらキタァああ!!おっきな音出すから!!」


(ガイド)「……あなたの声も大概ですよ?」


(シェンデラ)「我が同胞をよくも!その罪、死で贖え!!」



 こっちに向かっていきなり大きな剣を振りかぶりながらシェンデラと呼ばれた人が襲いかかってきた。しかし、あまりに大振りかつ分かりやすい剣筋だったので、私たちは軽くかわした。かわした後、隙をついて元の位置まで私が蹴り飛ばした。



(シェンデラ)「……おのれ!!!」


(パードン)「力貸すぞ!!シェンデラ!!」



 目の前にいる2人は臨戦態勢に入る。1人は大剣で、もう1人はトゲトゲのハンマーを持っていた。私もつられて構えをとった。剣は没収されているので素手ではあるのだけれど、ルースちゃんとの特訓のお陰である程度の心得はある。しかし、武器と素手、どちらが有利かは一目瞭然。

 正直少しまずい。



(ガイド)「……、待ちなさい。1つだけこちらから提案があるのですが……要求を呑むつもりはありませんか?もし受け入れてくれるのであれば……今回はあなた方を咎めないであげます」


(シェンデラ)「たわけ者が!!!そんな話を我らが望むとでも思うか!!!」


(パードン)「落ち着けシャンデラ。冷静さを欠くな。……、随分な勇ましい発言のようだが……、貴様らに勝機など何一つとしてない!要求は呑まん!!」


(ガイド)「勝機?あなた方を相手取るのに片手もあれば十分ですが?」



 なんで煽ってるの?この人。バカなんじゃないかな?いや、バカだったな。そうだった。



(シェンデラ)「……!ぬかせ!!!」



 シェンデラと言われた人がガイドさんに向かい飛び出す。大剣を振るうが、ガイドさんに掠りもしない。



(パードン)「よそ見とは!!恥を知れ!!!」


(エイン)「うわ!!!」



 私に向けて振り下ろされたトゲトゲハンマーをギリギリかわしながら、私は相手と距離を取る。ハンマーが当たった床は抉られて威力の高さが窺える。ただ、私もそれだけ怖気付くほど弱いつもりはない。向かい合って構えをとる。



(パードン)「……、よく避けた。見事だ」


(エイン)「……、ふしゅー……」



 私は息を抜いた後、相手に急接近して手の甲で相手の顎を弾いた。相手の動きは一瞬止まるものの、すぐにハンマーを斜めに振り抜いてきた。私はそれを避けて鳩尾に拳を入れ、顎に膝蹴りを入れた後、入り口付近まで蹴り飛ばした。

 ガイドさんの言うとおり、私でもどうにかなりそうだ。

 ただ……


(パードン)「……、なめていたのはこちらの方か……」



 私の攻撃に全く応えていないような立ち上がりをしてくる。正直言って、ちょっとショックだ。



(エイン)「すぅぅ……、ん!!!」


 

 私はまっすぐに進み相手の腹に拳を入れる。しかし、殴った腹は異様に硬く、さほどのダメージは期待出来そうにない。



(パードン)「来るとわかれば備えは可能だ!!」



 相手がなぜか武器を捨てた後に構えをとった。つまり、ここから先は肉弾戦だ。腕はならないし、少し怖いけどやるしか無い。



(パードン)「行くぞ……!!!」



 相手の猛攻が始まった。私はやっとこさ、嵐のような攻撃を捌き直撃は回避出来るものの、反撃に出る時間を与えてくれない。このままだとジリ貧だ。どうにかしないと。



(パードン)「!もらった!!」


(エイン)「ぐぁ!!!」



 隙をつかれて鳩尾に蹴りを入れられた。その後、顎を肘でかちあげられ、身体が起き上がったところで首の後ろから踵落としをいられてしまった。



(エイン)「……っ!!ひゅっ……!」



 まるで動けない。動かそうにも身体が動いてくれない。



(ガイド)「あら?まぁ、エインは肉弾戦はそこまで得意ではないですもんね。それでも負けるとは思いませんでしたが……見誤りました」



 そう言いながらガイドさんは私のところまで軽くとっとっとっといった感じで走ってきた。慌ててパードンと呼ばれた人がガイドさんを止めに入るが、一瞬で壁まで吹っ飛ばされる。



(ガイド)「……、温情に……感謝なさい……」



 ひどくドスの効いた声のような気がした。

 私のそばに来て私の首に手を当てるガイドさん。何かを探るように指が首をなぞっている。


(ガイド)「……、これは……折れてはいませんが……相当なダメージですね……しばらくは動けないでしょう。とりあえず治癒しますね」



 ガイドさんから放たれた温かい空気が私を包み込む。その空気が私の身体を軽くして、傷を癒していく。



(シェンデラ)「き、さま……!!勝負から……!!逃げるな……!!!」


(ガイド)「?、私の勝ちなので勝負は終わりですね」


(シェンデラ)「ふざけるな!!!!あんな!!あんな事しておいて!!!!」



 何したんだろ?



(ガイド)「あら!意外と乙女な方だったので?」


(シェンデラ)「貴様!!!!私を舐め腐るなよ!!!胸を揉まれて!!!取り乱すほど!!やわな鍛え方はしていないんだ!!!」


(ガイド)「……、本当ですか?」


(シェンデラ)「取り乱してないって言ってるだろ!!!!」


(ガイド)「んもう……」



 この人、戦いの最中に相手の胸揉んだの?というか、あの人女の人だったんだ。さすがに私が相手をしてた人は男の人だと思うけど。



(ガイド)「……、ところで……、今実力を示した通り、あなた方では私には勝てません。要求は呑まれますか?」


(シェンデラ)「……しゅぅ……、呑まない。貴様を殺すだけだ!!」



 ガイドさんに向けて大剣を向ける。持つ腕はプルプルと震えていて、見るからに辛そうだ。


(ガイド)「……、んー……仕方ありませんね」



 ガイドさんが服を叩きながら立ち上がり、油断してるにも程があるだろうというくらいの伸びをした。その伸びの最中、ガイドさんに向かって大剣が振り下ろされる。

 ガイドさんが含み笑いをしたかと思った瞬間、ガイドさんが大剣を殴って粉々にした。



(シェンデラ)「んな?!」


(ガイド)「はっ!モミ!!モミモミ!」


 ガイドさんは相手の後ろに回り、その後ろから胸に手を伸ばして、揉みしだく。

 何やってるの?!この人!!ほんと変態!!!



(シェンデラ)「貴様ぁあああ!!!だから今は勝負してるって言ってるだろ!!!」


(ガイド)「そんな事は言ってません」



 食い違いが起きてる。

 私がガイドさんと相手のやり取りを呆れながら見ていると、扉の先から足音が聞こえた。私は即座に構えを取る。だけど、少し億劫だ。素手だけでは私に勝機なんて殆どない。


 扉の先からの眩い光に当てられて素顔は見えないシルエットだけの人物が現れる。



(シルエット)「おーい、ギー、ドンちゃん、シェンちゃー、生きてますかー?」


(シェンデラ)「'セーラー'!」



 シェンデラと言われた人はセーラーと読んだ人のところまで、ジャンプして戻った。その風圧によりガイドさんの髪が激しく揺れる。しかし当の本人は特に気にしていないようだ。



(シェンデラ)「セーラー、貴様は最後の手だ。今貴様を失うわけにはいかない。逃げてくれ」


(セーラー)「……、その言い方だと私があの人たちには勝てないみたいだね?」


(シェンデラ)「……、すまないが、勝てるとは思えない」


(ガイド)「あら!意外と冷静!」



 ガイドさんは嬉しそうに手を叩いた。緊張感なんかひとつもない。



(セーラー)「……、でもそうじゃないんだ。ガイド、と聞こえたと言っている人がいてね。確かめにきた。その人が【ガイド・ヴァンガード】であるのならば、彼女は私たちの恩人だ」


(シェンデラ)「……!だが……」


(セーラー)「シェンデラ、攻撃を仕掛けたのは私たちだよ。反撃されている事は私たちが悪い」


(シェンデラ)「……、ガイド・ヴァンガード……、なのか……貴様は……」



 ガイド・ヴァンガードという単語が出てから、急におとなしくなった。ガイドさんの本名はガイド・ヴァンガード、間違いなくその人ではあると思う。この状況での同姓同名は考えにくい。



(ガイド)「元魔王のガイドなら、私のことで間違いありません」



 そう言った瞬間、目の前にいた2人はガイドさんを前に膝をついた。



(セーラー)「会いとうございました……!ガイド様!」


(シェンデラ)「……、申し訳ありません……心より謝罪いたします……我々の非をどうかお許しください……」



 私はガイドさんに視線を送る。ガイドさんはニコリと笑った後に少し考えた後、何かを閃いたような動きをしてから口を開く。



(ガイド)「とりあえず話を聞きましょう、宜しいですか?」


(セーラー)「勿論です!どうぞこちらに!!」


お疲れ様です。

洋梨です。


猫の毛がふわふわな時期になってきました。

(だいぶ前からなっとるやろがい)


もしかしたらガイドさんは元魔王では無い(身分詐称等で)と思っていた人もいるかもしれませんが、本物の元魔王です。

今は役割が違いますね。

一応、エイン自叙伝風なのでトゲトゲハンマーと書いてますが、モーニングスターのことです。

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